『述懐』
『美弥狩司衆 狩戦目録』より
~
そののち、美弥狩司衆、左厳一門、隣国狩士連、秀峰狩司衆近衛組による緊急連合、夜戦に突入。
篝火の元、幾度もの飢神の襲来に応戦。
夜半、続けざまに伝鳥の報。
美弥、仁帰、加古葉国境周辺守護狩士一団と、美弥離脱組が合流。
隣国の守護下に入る。
そのまま国境守護は美弥へ進行。
美弥に押し寄せる飢神の背後を取り、その数を分散させながら前進。
途上、隣国主力狩司衆が合流。
引き寄せ役の後退組と、進軍組に分かれ、飢神を散逸に尽力。
その時点で、美弥への飢神の強襲七度。
夜明け前、隣国援軍の働きにより、飢神の壁が薄まる兆し。
そして八度目の波が過ぎて、
~
*
男は城の一番外の壁に背を預けて
すでに全身疲労困憊。
起き上がる気力すら湧きそうに思えなかった。
しかし、あと少しすれば交代が戻ってくる。
休息に入る組に代わって、男は城下の狩場に向かわねばならぬ。
全てはこの国を沈めぬため。
生きて生きて生き延びて、そして、
明日に手をかけるため。
不意に、男は顔を上げた。
そして視線の先に、夜が覆う空を見る。
――――いや、
色が少しおかしい。
男はなぜおかしいのかをぼやける頭で思考し、無意識に振り返っていた。
背後には壁。
いや、その向こうだ。
空が白けている。
男はゆっくりと立ち上がり、物見の穴から東を見た。
空が。
山向こうの空が、明るい。
あれは、
「……朝だ、」
掠れた声が、呟いた。
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