エアダスター
安藤州
読み切り
耳に雑音がまとわりつく。今日は一段と気に障る。使い慣れた一本道なだけに、うるさいのがわかってしまう。
日頃の無理が出てきたようで、いつもより道が長く感じる。いつもの調子だったら自分を頼りにしてきたのだから応えてやらないと、などと考えるが今はあのお願いは引き受けいほうがよかったなとか、いっそのことズル休みしてしまおうかと邪な考えばかりが浮かぶ。
そんな事ばかり考えていたからか、誰かに肩を叩かれてもすぐには気づけなかった。
どうやらハンカチをポケットから落としていたらしい。私がハンカチを受け取ると、彼は約束に遅れるとかなんとか言って、慌てたように走っていった。
いつまでも視界に残る彼を眺める。そういえば、最近は思いっきり運動した覚えがない。酸欠で思考が鈍くなる感覚もしばらく感じていない。もしかしたら今考えている邪な考えも捨てていけるかもしれない。であれば、やる価値はある。幸い、人も車も信号もほとんどない一本道だ。何かあっても、耳にまとわりつく雑音で気づけないだろう。
私は深く息を吸って、一歩踏み込んだ。
エアダスター 安藤州 @bo-kansya
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