第7話 悲しみと出会う少女
「笑っていれば何でもできる! いくぞ! 1! 2! 3! アハッ!」
真理亜はおバカキャラ。
いや、前向きに明るく元気に生きているだけだった。
それをおバカと言わないでほしい。
「全然、お友達ができない!?」
いじめとスマホ。
他人に対する無関心。
本当に現代社会は、お友達を作るのが難しい時代だった。
「こうなったら私の予知のタイキック能力で未来を覗いてみよう。」
目を閉じて真理亜は超能力の予知能力を使う。
「・・・・・・わざとサイキックをタイキックと言い間違えても、突っ込んでくれるお友達がいない・・・・・・一人ぼっちは寂しいな。」
真理亜は教室で孤独を感じていた。
そして、寂しさに襲われる。
寂しい気持ちは黒い塊を誕生させる。
「あなたは誰?」
「私はあなた。」
予知の世界で真理亜は黒い自分と出会う。
「私?」
「そう、あなた。」
「ちょっと待ってよ!? 私は黒くないわよ!?」
「そっちかい!? あなた! ツッコム所がズレてるわよ。」
思わず黒い真理亜はツッコミを入れる。
「アハッ!」
照れ隠しも笑って誤魔化す真理亜。
「私は悲しみ。」
「悲しみ?」
「私はあなた自身の悲しみ。真理亜サドネスよ。」
「ごめん! 英語を入れないで! 頭が痛くなるから!」
「もう少し英語も勉強してよね。」
「アハッ!」
真理亜の悲しみは、真理亜でしかなかった。
「私の悲しみ?」
「クラスメイトは悲しみに飲み込まれている。」
「あ! だからクラスメイトに黒い塊が見えるのね!」
「大正解! よくできました!」
「アハッ!」
褒められた時も元気に笑う真理亜。
「生徒や親や教師、中学校や小学校の集団生活の中で、みんな心に傷を負っているの。そして私の様な悲しみを自ら生み出してしまった。悲しみに支配された心は、いじめや暴力で他人を攻撃したり、勉強やスマホ、引きこもりといった自分だけの世界、ボッチの世界をそうぞうしてしまうの。」
「なんて恐ろしいの!? 悲しみの世界!?」
初めて真理亜は悲しみという存在を知った。それは悲しみの恐ろしさについてもだった。
「真理亜ちゃん、あなたのクラスメイトたちを悲しみに飲み込まれてしまう前に助けてあげて。みんなの悲しみを振り払ってあげて。」
「私が!? 私なんかにできるかしら!?」
「大丈夫。真理亜ちゃんならできるわ。だって真理亜ちゃんは孤独に勝てる唯一の存在だから。」
「分かったわ! 私がみんなの悲しみを蹴り飛ばしてみせる!」
真理亜は自信が覆われていた悲しみに打ち勝った。
「ああ!? 私の悲しみが消えていく!?」
真理亜サドネスの存在がスケスケしていく。
「私はあなた自身の弱さ。悲しくなったら、また会えるから。バイバイ。またね。アハッ!」
「いろいろ教えてくれてありがとう! もう一人の私!」
真理亜の予知は終わった。
つづく。
おまけ
予知
「タイキックって、星戦争のフォースのように光る剣が出てきて、仮面を着けた悪者と戦ったり、竜玉の気のように集中してアルファ破のようなエネルギーの集合体を打ち込んだり、戦士機動みたいにニュータイプ能力で巨大ロボットを操ったり、そっちの方向の物語になると思っていたんだけど?」
姉の真理亜は当初の予想を呟く。意外に日常モノで収まっていることに疑問を感じていた。
「アメリカン・ヒーローは最後の手段よ。平和な日本では日常モノで売れるんだから。何も悪者と戦うだけがサイキックじゃないわよ。」
妹の楓はマーケティング能力も高かった。
「そうね。日本では登場キャラクターのデザインが可愛ければ、熱狂的なファンがついてくれるんだから。良かった~、私、可愛くて。アハッ!」
無駄美人に対抗して、姉は無駄に可愛かった。
「それにサイキック・ソードや、サイキック・アルファ破に、サイキック・巨大ロボットを登場させちゃうとCGで費用が掛かるのよ。」
「予算の問題ね。だから大人って嫌いよ。」
歪んだ大人が嫌いなので、どこまでも姉は純粋に突き進んで行く。
「お姉ちゃん! それは予知よ!」
「予知!?」
知らない間に姉はサイキック・スキルの(予知)を使っていたのだった。
「予知は少しだけ未来が見えるのよ。サイキック・スキルの能力の一つよ。」
「未来が見える!? スゴイ!? タイキック!?」
「お姉ちゃん!? 少しズレてるよ!?」
未来が予知できても、姉はサイキックとタイキックの違いは見えなかった。
「それでも今後の展開が見えてきたわね。」
「今後の展開!?」
「そうよ。これからお姉ちゃんが進む道よ!」
「私の進む道!?」
妹も予知能力があると、たじろぐ姉。
「きっと、これから私たち以外の超能力少女が現れて、戦って、助け合って、仲間になって、友情と絆を深めていくんだわ。そして、最後には世界を救うのよ。」
「おお! 私が世界を救うぞ!」
単純な姉は注意喚起に影響されやすい。
「そして家族のくせに登場していない兄の一郎は、超能力者の特殊機関にいるのよ。だからごはんの時間にも家に帰ってこないのよ。」
「ごはんより仕事が大切なのか!?」
「ツッコムのは、そこじゃないと思うけど。」
食いしん坊な姉は、サイキック特殊機関より、ごはんが大切であった。
「でも当分の間は家族での行動や、お姉ちゃんの心に聞こえてきた人の声に対応するしかないわ。」
超能力者の悲しい定めで、聞きたくもない声が勝手に聞こえてくることがある。良い子とも悪いことも。それが超能力者の宿命だとしても。
「どうして?」
しかし姉は、そんなことには気づいていない。
「今、今後の構想を練っているから。」
話をはぐらかす妹。
「ズコー!?」
ズッコケる姉。
「アハハハッ!」
仲良し姉妹であった。
つづく。
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