第6話 思春期少女

「ねえ、私とお友達にならない。アハッ!」

 真理亜の高校生活が始まった。

「はあっ!? 小学生じゃないんですけど。」

「キモイ。」

「ウザイ。」

「頭おかしいんじゃない。」

「・・・・・・(無視)。」

 返事は決まって「ノー」だった。

「私とお友達になろうよ!」

「私とお友達になれ!」

「私とお友達に・・・・・・な・・・・・・っ・・・・・・て・・・・・・。」

 クラスメイトに声をかけ続けるがお、誰もお友達になってくれなかった。

「どうして!? どうして誰もお友達になってくれないの!? お友達を作ることは、そんなに難しいの!?」

 さすがのおバカ、いや、前向きな真理亜も弱気になってしまう。

(誰がいじめの標的になっている奴と友達になるんだよ。)

(いじめて、あのお友達おバカを一人ぼっちで孤立させてやる。)

(他人をいじめるって楽しいな。)

(フォフォフォフォ!)

 真理亜には悪い黒い影の悪魔のささやきが聞こえてくる。

「クソッ!? 私がお友達を作れないのは、いじめをしている連中の仕業だったのか! 許さん! 許さないわよ!」

 真理亜は自分にお友達ができない本当の理由を知った。本当に倒さないといけないクラスメイトのウザイ黒い影がいることに。

(可哀そう。)

(そうだね。お友達になってあげようか?)

(でも真理亜ちゃんと友達になったら、私たちまでいじめられるんだよ。)

(それは嫌。)

(誰とも関わらないのが一番いいよ。)

(そうだね。平和だね。)

(勉強したり、スマホをいじったり、昼寝したり。)

(そうそう。キモイ奴の相手しなくていいんだもの。)

(高校生活なんて3年間だ。3年耐えれば、さようならさ。)

(所詮は他人だからね。)

 主観的に悪くはないのだが、楽しい高校生活を入学したばかりでも諦めている黒い影も多かった。

「ま、ま、ま、前向きにお友達を作って高校生活を楽しもうという子がいない!?」

 真理亜、最大のピンチ!

 驚愕の事実に真理亜のお友達100万人キャンペーンはどうなるのか。

 つづく。

 おまけ。

 超能力のある生活。

「お母さん、ごはん、おかわり。」

 大神家は食事の最中だった。長女の真理亜はお茶碗を母のひばりに差し出す。

「自分でやりなさい。あなたもサイコキネシスが使えるようになったんだから。」

 母は長女の要求を拒否する。

「ケチッ!」

 ブーッと頬を膨らませて不機嫌そうな長女。

「私は今、家の掃除や洗濯にサイコキネシスを使っているから無理。」

 母は超能力で家の中の掃除や洗濯物干しを行っている。見た目は透明人間が家事をしているように見える。ちなみに母は料理もサイコキネシスで全自動で作った。

「助かるわ~。やっとあなたが超能力に目覚めてくれたおかげで、自分でやらなくて良くなったのだから。アハッ!」

 自分で家事をしなくて良いことに喜びを実感する母。

「はいはい。自分でやればいいんでしょ。」

 長女は諦めて自分でごはんをおかわりすることにした。

「戦いの始まりだ! いくぞ!」

 顔は険しい表情になり、まだサイキックに不慣れな長女の戦いが始まる。

「いけ! お茶碗!」

 サイコキネシスでお茶碗が空を飛ぶ。

「開け! 炊飯器の蓋!」

 炊飯器の蓋が誰も触れていないのに開いた。

「ごはんをお茶碗によそえ! しゃもじ!」

 しゃもじがごはんをお茶碗によそう。

「戻ってこい! お茶碗!」

 おかわりのごはんがよそわれたお茶碗が長女の元に戻って来る。

「できたー! ごはんのおかわり! タイキックって、便利ね! アハッ!」

 超能力に目覚めた長女は、サイコキネシスを扱えるようになっていた。一仕事を終えた長女の表情は満面の笑顔だった。

「すごい! お姉ちゃん! ・・・・・・でも、少しズレているような。」

 次女の楓は姉の成長を喜ぶ。そして、いつも通りの姉で安心する妹。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・・はあ。」

 サイキックに不慣れな長女は、少しサイコキネシスを使うだけで疲れてしまう。

「真理亜、もう少し普通にサイコキネシスを使えるようにならないといけないな。」

 父の慎太郎が超能力が使えるようになったばかりの長女に苦言を呈する。

「分かったわ! やってやろうじゃない! 家族一! 日本一! 世界一! いえ! 宇宙一のタイキッカーになってやる!」

 長女は素直な性格なので挑発されると、直ぐにやる気が出る。

「飛躍し過ぎよ!? お姉ちゃん!?」

 優秀な妹も憎めない姉である。

「ということで、今度はみそ汁のおかわり! いけ! お椀! 私に温かいみそ汁を飲ませろ!」

 本人曰く、これもサイキックの練習らしい。

「お姉ちゃん!? やっぱり、少しズレてるよ!?」

 妹の苦労は、まだ始まったばかりである。

 つづく。

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