第5話 PSI(サイ)少女

「まさか!?」

 真理亜は大変なことに気づいてしまった。

「私は普通の高校に入学して、楽しいお友達生活を送ろうと思っていたのに、間違えて超能力研究所付属の高校に入学してしまったのか!?」

 いいえ、普通の高校です。

(なんなんだ? あいつマジでウザイ。)

(キモイ。)

(おバカなんだよ。)

(SNSでいじめしようぜ!)

(後で体育館裏に呼び出そうぜ!)

(やっちゃおうぜ!)

 精神年齢の低いクラスメイトの半分から殺意を向けられる真理亜。

「まあ、いい。だが、私にゴミをぶつけようとしたのは間違いだったな。」

 真理亜はサイコキネシスを発動させる。地面に転がっていたゴミが宙に浮く。

「いけ! 紙屑! 放った者の元に帰れ!」

 ゴミが真理亜のサイコキネシスの力で持ち主の元へ飛んでいく。

「ギャアアアアアアー!」

 額に命中して黒い塊は悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。

「ストライク!」

 ガッツポーズする真理亜。

「タイキック少女の私に超能力で勝負を挑んだのが間違いね! アハッ!」

 してやったりの真理亜。しかし黒い塊の心の声は聞こえてくる。

(誰とも関わりたくない。)

(良い大学に行くんだ。勉強しなくっちゃ。)

(スマホゲームしてれば誰ともかかわらなくていいもんね。)

(お金が全て!)

(一人の方が平和。)

(ぼっち最高。)

(・・・・・・・。)

 精神年齢の高い大人の様な、もう半分のクラスメイトは高校生になったばかりなのに人間関係に疲れ切っていた。

「なに!? 何なの!? 高校生って、こんなに夢も希望もないの!?」

 他人に敵意を向ける者、他人と関わりを持ちたくない者。みんな高校に入るまでの15年間でうるさい親や教師、いじめや暴力の学校のお友達に疲弊していた。

 つづく。

 おまけ。

 PSI。

「超能力を情報の伝達に関する現象である超感覚的知覚(ESP) と、物体に力を及ぼし得るサイコキネシス(念力、PK)に大別している。また、ESPとサイコキネシスを合わせて、PSI(サイ)という名称も使われているんだぞ。」

 父の慎太郎が超能力初心者の娘の真理亜に説明している。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!?」

 真理亜は難しい説明を聞くと痙攣して倒れ込む癖がある。

「やめて! お父さん! お姉ちゃんを殺す気なの?」

 妹の楓は気の利いた良く出来た子である。

「そ、そんな!? ただ普通に説明しただけなのに!?」

 父に尊厳はなかった。

「お姉ちゃん!? 大丈夫!? お姉ちゃん!? 死なないで!?」

「ゲホッ・・・・・・グホッ・・・・・・アベシ。」

 理解できない難しい話で姉は瀕死の重体になりピクピクしている。

「お姉ちゃん! 私のチョコレートあげるから!」

 妹は自分のおやつのチョコレートを姉の口に入れる。

「モグモグ。」

 チョコレートを食べる姉。

「美味しい! ありがとう! おお! カワイイ妹よ!」

「やったね! お姉ちゃん!」

 甘くて美味しいチョコレートを食べて復活する姉であった。 


「いつまでも、おバカとは言わせない!」

 遂に姉が立ち上がった。ネットで超能力について自分なりに調べることにした。

「なんだ~。お父さんの言っていた話って、全部ネットに書いてあるじゃない。アハッ!」

 ネットで父が言っていたような文章を見つけた。ただし姉が難しい漢字を読めている保証はない。また文章の意味を理解しているかは不明である。

「・・・・・・分からない。誰が読んでも分からないような難しい説明を書いてあるのが悪いのよ!」

 やっぱり姉には超能力の説明の文章は難しかったので逆ギレする。

「そうだ! 私にも分かりやすい説明を探そう! 私って賢い! アハッ!」

 前向きマイペースに突き進んで行く。それが姉のライフスタイルである。

「ポチットな。」

 次々と姉は超能力について書いてあるページを検索していく。

「あったー!」

 遂に姉は自分でも分かる超能力に書いてあるサイトを見つけた。

「超能力とは・・・・・・神が与えた神の力!? 超能力は神通力とも言われている!? タイキックは人々の憧れだった!?」

 無知な姉はネットの情報を全て信じる天使の様なおバカさんだった。

「クシュン!」

 その時、姉がくしゃみをした。

「誰か私が可愛いって噂話をしているわね。アハッ!」

 無駄にカワイイ。姉は無駄に可愛かった。

「ティッシュ、ティッシュと。」

 鼻水が出てきたので姉はティッシュ箱を探す。

(ピキーン!)

 誰も触っていないのにティッシュ箱が動き出し、姉の側に飛んでいく。

「ありがとう。」

 するとティッシュ箱が姉の元に一人で勝手に飛んできた。何も気にしないでテッシュを取る姉。

「ジュジュジュジュジュ!」

 姉は汚く鼻をかむ。

「やったー! ストライク!」

 鼻水をかんだテッシュをゴミ箱に投げ入れた。

「え!? ・・・・・・誰がティッシュ箱を持ってきてくれたの!?」

 大切なことに姉は気づいてしまった。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー!?」

 姉の悲鳴が地球を一周する。

「お化け!? 私の部屋に透明人間がいるー!? ギャアー!?」

 大声を上げて部屋の中を走りまくる姉であった。姉は自然の流れで物に影響を与える力(サイコキネシス)を覚えた。

 つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る