第8話 悲しみを知る少女

「ありがとう。もう一人の私。」

 予知で出会った悲しみの黒い真理亜に感謝する。

「やってやろうじゃない! 私がみんなの悲しみを蹴り飛ばす! アハッ!」

 真理亜の闘志に火が着いた。

「なんてったって、私はお友達100万人キャンペーン実施中!」

 高校生活の真理亜のテーマは、お友達をたくさん作って、楽しい高校生活を過ごすことである。

「達成しないと楓に馬鹿にされる・・・・・・・。」

 自分が姉なのに、妹の楓が恐怖の「真理亜お姉ちゃんのおバカ」大魔王に見えてくる。

「おお!? なんて恐ろしいんだ!? 悲しみよりも楓の方が怖いわ。」

 全身に寒気と震えを覚える真理亜。

「夢は叶えるために見るんだ! みんな幸せになるために生きているんだ!」

 改めて真理亜はクラスメイトたちの悲しみを振り払う決意を固める。

「まずは私のタイキック能力で、みんなの黒い塊の悲しみが何なのか透視してみよう。」

 おバカキャラの真理亜だが、痛いのは嫌なので相手の悲しみが何なのか、予習から入ることにした。アハッ!

「どれどれ。まずは私に敵意を向けてくるいじめっ子と。」

 真理亜はいじめっ子の黒い塊の悲しみから透視した。

(痛い!? やめて!? お父さん!? ぶたないで!? 痛い!? 痛いよ!?)

「何これ!? 虐待じゃない!? あの子!? お父さんから暴力を受けているの!? 制服の下はアザだらけじゃない!?」

 他人に暴力を振るおうという子は、実は父親から暴力を受けていた。そして悲しみを生み出され、暴力の痛さを知っているから、他人も殴って、自分と同じ痛みを味合わせようとしていたのである。

「他の子はどうなの!? そこのスマホばっかりしてる子は!?」

 次に真理亜はスマホっ子の悲しみを透視してみた。

「アイツ、キモイな。」

「みんなでいじめようぜ!」

「おお!」

 スマホっ子は小学生の時に集団いじめにあっていた。

「友達なんか要らない。私の友達はスマホだけ。スマホのSNSの一度も会ったことのない友達たちは私に優しいもん。友達なんか要らないんだ・・・・・・。」

 全てではないのだが、壮絶なスマホっ子の誕生秘話であった。

「もう一人の私が言ったみたいに、みんな悲しみを持っているんだわ!? みんな心に傷を負っているんだ!?」

 本当にとても心は脆く誰もが傷ついて悲しみを生み出していた。

 つづく。

 おまけ

 透視

「バリアを張らなければいけません。」

 母のひばりが姉の真理亜に超能力の指導をしている。

「バリア?」

 超能力とバリア。何のつながりがあるのか分からない。

「超能力には透視という、物が透けて見えるサイキック・スキルがある。」

「タイキック・スキル!?」

「サイキック・スキルよ!」

 この流れはお約束。

「透視?」

 おバカな姉には難しい言葉の意味は分からない。

「分かりやすくいうと、透視して宝箱の中にモンスターがいたら宝箱を開けなくていいでしょう。」

 母は分かりやすく例え話をする。

「う~ん? 難しい?」

 それでも理解できない姉。

「ああ~、真理亜に分かってもらうのって大変だわ~。」

 我が娘ながら不憫に思う。

「ごめんなさい。デッキの悪いお母さんの娘で。」

 タダでは負けない娘。

「仕方がありません。もう一歩進んだ例え話をしましょう。」

 覚悟を決めた母親。

「朝、ベッドで目が覚めて、食卓を透視する。朝食が大好物のエビフライだった場合、ベッドから飛び起きると思わない?」

「エビフライ! 起きる! 起きます! 起きます!」

 食べ物に釣られる娘。

「釣れた。さすが我が娘だわ。アハッ!」

 食べ物に弱い娘のことを、よく理解している母であった。

「ここからが本題よ!」

「長!? 前振り長!?」

 いよいよ母は物事の核心に迫る。

「もし街を歩いていて、自分以外の超能力者がいたとします。」

「同業者!」

「その超能力者が、あなたの着ている服を透視します。どうなりますか?」

「下着が見えます!」

「いえ、裸が見られてしまいます。」

「キャアー! 変態!」

 おバカな娘に分かりやすく透視の危険を説明する。どうやら娘にも理解できたようだ。

「もし街を歩いていて鼻血を出して倒れている人間がいるとします。その人間は超能力者です。」

「そんな奴いないでしょう・・・・・・いた!? それも結構多いかも!?」

 街の様子を思い出した娘はは鼻血を出して倒れている多くの男女のことを思い出す。

「間違いありません。超能力者です。」

「そうだったのか!? 明日からブラとパンツ10枚履きます!」

 枚数を増やすのが娘の対透視用の対策だった。

「大丈夫ですよ。あなたの透視バリアは、サイキック上位者の私が張っていますから、あなたの裸もステータスも透視されて見られたことは一度もありませんから。」

 超能力者の母は超能力はレベルが高く、サイキック・高スキルの透視バリアを張れる。

「お母さん! ありがとう! お母さん! 大好き!」

「アハッ!」

 抱き着いてくる娘を可愛く思う母であった。

 つづく。

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