第10話 問

 今日は金曜日。いつものLINE。白捩からだ。

『今日のミーティングは庵野んちねー』

 と勝手に。

 というかANTO JET‘sは毎週うちのガレージの前だ。

 20時ちょうど、ガレージ間仕事場前が車で埋まる。

「お前ら10分早かったら殴ってたわ」

 客が10分前にはいたからな。

「お前んとこ19時までだろ?追い出しちまえよ」

 確かに19時までだが、までだが今後の売り上げが変わってしまう。

「は?大事な客だぞ?」

 当然そんなことはできない。

「まあまあ。ミーティング開始ー!」

 白捩が遮った。

 俺はあ、そうだ。と本田の目を見る。

「本田、お前ダチに西尾っていたろ。アイツ悪魔サタンなんだろ?」

 一瞬空気が固まる。

「な、なんでそれを……?」

 本田は静寂を切り裂いてしゃべる。

「見覚えあったんだよ。遠い記憶の底に」

「そうか……。悪い黙ってて。でも西尾に頼まれてたんだよ」

 申し訳なさそうな顔で言う。

「アイツもお前が庵野だってことも知ってる」

 やっぱり。俺が気づいてた通りだった。

「頼まれてたって?」

「それは―――……」

 それきり黙ってしまった。

「ま、人の事情があるだろうし今度本人に聞こうか」

 八九寺言う。

「そうだな」


 そのあと無事にミーティングを終わらせた。

「さーて行くか―」

 八九寺が動き出す。

「うーん大黒閉鎖だってー」

 スマホをいじってた白捩が答える。

「はあ!?」

 八九寺が驚く。

「そりゃそうだ」

 と突っ込んどいてやる。

 今は金曜日の21時。この時間の大黒PA閉鎖は珍しくない。

 閉鎖解除は当分先だろう。


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