第1話 ー謎の差し出し物

遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。

目を覚ました僕は、ベッドから起き上がろうとしたが重い何かがあって失敗した。

「何してるんだい、エイシャ」

「朝の挨拶ですよ、ローグ様」

エイシャはベッドから降りると、

「ほら、朝ご飯ですよ早く来て下さいね」

と言うと、部屋を出ていった。

ふぅと息を吐きながら身体を起こした。

今日もここは平和だな。

と、思いながらキッチンへと向かった。

朝食を食べ終わった僕らは、ギルドハウスへと向かった。


ギルドハウスに入った僕達だが、既に先客がいたようだ。二人の男女がソファーでくつろいでいる。

男の方がこちらに気づいて顔を向けてきた。

「ようローグ、今日もシケた面してんなぁ」

「はいはい、アラビス。今回はどんな用事なんですか?」

「それがまだ教えてもらってねーんだわ。めんどいけど奴さん待ちってこった。何か知ってるか、ユリアン?」

ユリアンと呼ばれた女は、

「知らないわよ。まあ知ってても、貴方には言わないけどね」

「けっお前に教えてもらわなくてもすぐにわかるから、な結構だぜ」

二人が言い合っていると、奥のドアから少年が出てきた。

「やあやあ、集まっているね。では始めるとしようか」

少年は声のトーンを落として、

「今回皆に集まってもらったのは、こんなのがきたからなんだ」

と、一通の手紙を取り出した。

「これは魔術で封がされていた。これでこの手紙が何か重要な物だと分かる。分かるだろ?」

皆の意識が一瞬硬くなった。そしてその感じを味わうと、

「では開けるとしよう」

と、指で魔方陣を描く。すると指が光を放った。それを手紙にかざして手紙の封にかざすと、封がハラリと開く。

その中身をの紙を取り出して読み上げる。

「マラセーヤの泉?に隠したるは宮の輿。我を探しだせ。?、なんだこりゃ」

「いやいや、これは、あれだな、わからないのでこちらに丸投げしたな」

「泉の中にある館を探すという事ですか?」

「あるいは神仏、だな」

と、それまで黙って聞いていたエイシャが、口を開いた。

「マラセーヤ、という単語には聞き覚えがあります」

「ほう、どういう意味だい?」

「マラセーヤは、私の故郷の言葉で、「死に返り」という意味で使われます。つまり一旦死んだら一回だけ生き返れる、ということです」

エイシャが答えると、

「まあ、それが関係あるのかないのかは分からないが取り敢えずは情報集めだな。情報屋には僕から頼んでおく。明日またここに来てくれ。では解散」

少年はそう言うと奥の部屋に入ってしまった。

残された四人は、

「ま、今日はぶらついてるか。行くぞ、ユリアン」

「じゃ、明日ね、ローグ、エイシャ。あ、待ってアラビス〜」

ユリアンはアラビスを追って出て行く。

「さて、僕らはどうしようか」

「私の事は良いですから。私はローグ様の後ろからついて行くだけです」

「うーん、じゃあさ、中央通りで露店でも見ていく?」

「はいっ」

エイシャは満面の笑みを浮かべてローグに早く行きましょうと腕を引くのだった。


次の日。

「では、情報屋から集めたことを僕が整理したことを話す。ただ、完全では無いので所々憶測が入っているけど」

というと、懐から何枚かの紙束を取り出した。

「これはとある泉だったものの地図だ。最近まで枯れていたが、現在は湧き上がるほどの水量、だそうだ」

「それだけじゃねぇだろ、ベルナンド。他に何か気になることがなけりゃあんたは断定はしない」

「そうだね。これはある筋からの情報なんだけど、」

と言ってベルナンドが両手を広げた時だった。

「危ないっ」

と少年を押し倒すエイシャ。

少し遅れて爆発音。

見ると、広げた紙からチリチリと、火が出ている。

「こりゃ罠か?」

アラビスが尋ねると、

「ふぅ。罠を解除するのも込みでこれを譲ってもらったんだけどな。まぁ少し焦げてるだけだからいいけど」

「す、すいません!そうとは知らずに。本当にすいません、すいません」

エイシャはすいませんすいませんとこちらがビックリする程ベルナンドに謝り続けた。

ベルナンドがいいからいいからと言って逆に宥めているのは新鮮だった。

そしてしばらくしてというかエイシャが落ち着くのを待ってから、

「さて、話を戻すとしようか」

やっとホッとした顔で少年は言う。まぁ仕切り直しなんだけど。

「これはとある泉の通行書みたいなものだ。ただ、これはこれだけでは足りなくてある魔力を通す必要がある」

「へぇ、どんな魔力だい?」

「それは、水の魔力だ」

「水なら何処でもあるじゃない。何か難しい条件でも?」

「ああ、その水の魔力なんだが」

言いにくい様にベルナンドは話を続ける。

「実は、魔力量が問題なんだ」

「へぇどの位?まさか街全部の水を集めた量なんて言わないよな?」

「多い訳じゃない。逆にとても少なくしなければならない。少しでも多いと鍵が壊れる」

「ふーん、じゃあどうするんだ」

「こういうのに適した人がいるじゃないですか。ローグ、腕の調子はどうですか。出来ますか?」

「ふう、まだ本調子ではないですがやってみましょう」

そしてローグは、

「やるなら地下の工房がいいでしょう、頑丈ですからね。万が一のことがあっても建物が壊れる事はないでしょう」

「そうだね、分かった。ではローグは工房で作業をしてくれ。残りの者は、そうだな少しお使いに行って貰おうか」

ローグは階段を下りて工房へ。

ここの工房は地脈の裂け目に有るという少し特殊な所だ。

沢山の魔力が集まるのだがその分制御が難しい。

まあ、今回は小さな魔力量だが。


やり始めると、小さな魔力だと侮っていたがこれはかなり難しい部類だと悟った。

込める範囲が細かいのだ。

以前のローグならかなり難しかっただろう。

けれど今なら、


ローグは左手から手袋を外す。

なんと左手が光を放っていた。

そして光っている手が辺りを照らしていた。

「ふーん、どうやって精錬するのかと思ったらそういう隠し技があったのかい」

声のした方を向くと盗賊風の格好をした少年がそこにいた。

「やぁやぁ、そのまま続けてていいよ。僕はここで見てるだけだから、さ」

ーー>続く

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