元カノは記憶喪失

@mikage_kei

第1話 ただのクラスメイトへ

「――ごめん、別れて欲しい」



「――いきなり過ぎて、俺の頭の処理が追いつかないんだけど……」




 ――遡ること今から20分前



 体育祭が終わり、俺は教室に戻り今日1日の余韻に浸っていると、彩葉いろはから携帯に連絡が来ていた。


 帰りのホームルームが終わり、慌てて1人屋上へと向かって行く。


 自己紹介が遅れたが俺の名前は、三影圭みかげけい

 そんでもってさっき携帯に連絡してきたのが色彩葉しきいろは


 3ヶ月前から付き合っている彼女だ。だが厳密に言うと彼女だった。何故ならこの20分後に振られるからだ。


 屋上に行く道中、俺の頭の中では1つの仮定にたどり着いていた。

 それは、今日が付き合いだして3ヶ月記念日なのだ。今まで何回かデートを重ね、手まで繋げる関係になっていた。


 それでいて、今日逢いたいとなるとあれしか考えられない。


 ――そう、彩葉との初キッスである。


 そんなおめでた頭な俺が、屋上の扉を静かに開けるとそこには、彩葉が1人立ってた。


 夕陽のせいで、影になって見えるがやっぱり彩葉は可愛い。でも何故か彩葉が一瞬泣いているように遠目から見えた。

 まぁ気のせいだろうと思いながら彼女の元へ向かっていく。


「おーーい、彩葉ーー」


 彼女は俺に気づいたのか、笑顔で大きく手を振り返してくれた。



 そして先程のシーンになるわけだが……




「――ごめん、別れて欲しい」



「――いきなり過ぎて、俺の頭の処理が追いつかないんだけど……」


「お互い来年から、受験生じゃん?」


「うん……」


「だからその、そろそろ受験にも集中したいし、なんか私圭君のこともう好きじゃないっていうか……だから別れよ。私達」


「じゃあ何で、そんなに涙堪えた顔してんの?」


「こ、これは、今日私達のクラス総合2位だったじゃん。それが悔しくてね、今更ながら気泣けてきちゃっただけ。」


「そっか。

 でも、彩葉は頭がいいからそんなに頑張らなくても…さ…だから別れるなんて言わないでよ。」


「ごめん、もう決めたことだから。」


「……」

 俺は、返す言葉が見つからなかった。


「ありがと、今まで。」


「うん」


 俺は彩葉の顔を直視することが出来なかった。


「圭君、これからは友達として仲良くしよ?」


「うん……」


 俺は居ても立っても居られず、その場から立ち去った。




 家に帰り、すぐに自室のベッドに仰向けになって考えていた。


 あの時、彩葉はどんな顔してたのかは分からない。


 でも、時折泣いていたのは聞こえた。


「俺、明日からどんな顔して行けばいんだよ」




 次の日の朝。

 担任からクラス全体へ思わぬ一言が言い渡された。


「――色彩葉さんは、今朝登校中に交通事故に遭い、3ヶ月入院することにりました。」


「――嘘だろ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元カノは記憶喪失 @mikage_kei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ