第9話 準備完了

 真司は県支所1階の待合室にいた。

 時間は午後3時。

 先ほど狩りから戻ってきて、成果を換金したばかりである。

 今日の成果は約九千円。

 午前4時半からぶっとおしで狩りを続けた成果である。

 ゴブリンも2匹倒した。


 ちなみにエアガンはいつもの中華AKを使った。

 五月のPS90HC改の方がエアガンとしては高性能だ。

 しかし短くて銃剣も付けていない。

 だからいざ相手に飛び掛かられて格闘戦になったらと思うと心もとないのだ。

 例えばゴブリンが2匹出てきて、距離があるうちに両方とも倒せなかったら。

 真司の中華AKなら外装が金属製で頑丈で重さもあるし銃剣もついている。

 格闘戦にも移行可能だ。

 PS90HC改だとBB弾で倒れなければ逃げるしかない。

 つまり支援特化の武器だし、小柄な五月には合っているのだろう。


 真司は時計を見る。

 もうすぐ講習が終わる時間だ。

 県支所のこの待合室は「冒険者ギルド」なんてネット上で呼ばれていたりする。

 この部屋や周辺で魔物討伐の許可を出したり講習をしたり討伐報奨金を出したりするからだ。

 しかしファンタジーにあるようなギルドよりはよっぽどいい。

 事務員は一応県職員の採用試験を通ってきたそれなりにまともな人間。

 物語のように変な詮索をしたり初心者を馬鹿にしたりすることはまずない。

 冒険者もファンタジーにあるようなめんどい人間はいない。

 例えば初心者をからかったりいじめたりからんだりするような人間は。

 犯歴が10年以内にあると許可が下りないためもあるだろうか。

 皆ほどよく他人に無関心。

 だから真司のような元引きこもりでも比較的気楽でいられる。

 ただそれは何もせず待っているだけの場合。

 他人と色々やり取りするとなると……


 待つこと5分位で五月が1人で出てきた。

 顔色がとっても悪い。

 この前と同じく白いを通して青白い。

 恒星なら色スペクトルで約九千度。

 真司を認めた五月はゾンビくらいの遅い動きで真司の横の椅子に近づき、横の椅子に倒れ掛かる。

 約5分後真司のスマホにモヒカンからスタンプが送られてきた。

 拳王ラオウ様が昇天してしまっているスタンプだ。

 そんなスタンプ選んで送信してくる位だからちょっとは回復したのだろう。


「昼飯にでもするか? それとも買い出し」

「買い出しキボンヌ」

 やっぱり回復している。

 昨日色々やった分、少しは五月の対人経験値があがっているのかもしれない。

 ゲームではなく現実リアルの。

 二人でロッジの売店へ。

 それぞれカゴを取って買い出し開始。

 真司は今日の昼食兼夕食の弁当をカゴに入れる。

 今日の弁当は普通のチキンから揚げ弁当。

 魔物ジビエなんて高級なものではなく380円の庶民仕様。

 他に特売98円のカップ焼きそば2個。

 五月のほうはと真司は見て思う。

 何だこれは。

 コーラ、ポテチ2、タケノコの里3、プリン2、チーズたら、イカのつまみ缶…… 真司の視線に気づいたのか、五月からメッセージが来る。

現実リアルう●るの宴セット」

「体に悪くないか」

「むしゃくしゃしてやった、我が一生に悔いは無い」

 かなり調子が戻っているようだ。

 まあ実際にはうまるの宴セットの他に、下に隠れて牛乳や紅茶、グラノーラ等やオーク肉煮つけパック3袋も入ってのも見えてはいるが。

 結果重量感あふれる仕上がりになった五月の買い物袋。

 何かぶら下げているのも大変そうなので、見かねて真司が持ってやる。

『ありがとう』

 返事代わりに真司はスタンプを送る。

 SNS標準キャラの金髪がかっこつけてるスタンプ。

 そのまま建物の中を宿舎棟に向かいエレベータで4階へ。

 部屋の前で五月からメッセージが来る。

「明日何時?」

「5時ちょうど予定」

「ロビーで待っている。私のエアガンもお願い」

 そういえば預かったままだ。

「任務了解」

 五月から怪しげな関西風パンダが手もみをしながらよろしくお願いします、と挨拶しているスタンプが届いた。

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