第6話
三八
大晦日。
陽が翳り始めた三浦海岸駅前商店通り。
夕飯の買い出しを急ぐ主婦たちが、海風に肩をすぼめながら、店の前を早足で通り過ぎてゆく。
つり銭の準備を終えた大城みゆきは、薄いピンクの口紅を引いた唇を左右に吊り上げ、軽い鼻唄を歌いながらテーブルの上を拭き始めた。
接客担当の中谷真理子は、まだ不慣れな手つきでビールサーバーの動作を確認している。
中谷真理子は、神谷藍の大学の友人で、毎年春夏の休みの間だけ、住み込みで店を手伝いにきていたが、今年は旅行の予定もなく、冬もバイトすることにした。
店に来て五日目になる。
年末年始は、ここで神谷藍たちと過ごす。元日の早朝は浜に降り、稔彦も加えた四人で、房総半島から昇る元日の陽の出を拝む予定だ。
神谷藍は、商工会理事役員たちが予約した鍋料理の下ごしらえをする手を止め、二人に優しい視線を向けた。
活発で
店の扉は、店内の空気を入れかえるために開け放しているが、冷たい風が入り込んできたので、そろそろ閉め時だと思い、神谷藍は厨房から出た。
扉のノブに手をかけた時、中から薄暗い空を覗き見上げ、一時間ほど前に太子堂高校へ向かった稔彦の、いつになく緊張した顔つきを思い浮かべた。
歳の暮れのこんな時刻、冬休み中の学校に何の用事があるのかと疑いたくもなる。
ただ稔彦は、愛好会の集まりに行く、としか言わなかった。
いつだったか、横須賀の病院前に現れた人相の悪い男たちとの間で、最近何らかのトラブルがあったことは間違いなかった。
横須賀署の二人の刑事が、何の前ぶれもなく店にやって来て、当日の稔彦の行動について横柄な態度で尋問してきた。
あの時、大城みゆきが留守だったのは幸いだった。
元紫煙の二代目総長だった彼女は、未だに警察が大嫌いで、二人の刑事と一悶着起こしかないからだ。
夜遅く戻ってきた稔彦の左頬に、まだ新しい10cmほどの切り傷が浮いていた。
空手の稽古でつけた傷にしては、傷痕が直線的で、鋭い切っ先で裂いたように見えた。
理由を訊いても、稔彦は何も応えない。
幸い傷は浅かったから安堵したが、完治しないまま出かけていった。
これから稔彦が、また何かやらかそうとしているのも察している。
ただ、今は、何も訊かないし、何も言わないつもりだ。
今のうちに、稔彦のやりたいことを、好きなだけやらせてあげようと思っている。
年が明け、春から夏に移ろう季節、自分には大きな喜びが訪れるが、まだ若い稔彦には、大きな責任を背負わせることになるからだ。
それでも神谷藍は、再び厨房へ戻ると天井へ笑顔を向け、心の中で呟いた。
(梢さん、来年の五月にね、あなたの孫が生まれるよ……)
三九
太子堂高校柔道場。
本来は、柔道部専用の道場だが、七年前、
今、その柔道場の中央寄りに、村石校長、その隣に三崎署の河田警部補と部下の巡査二名が、緊張した表情で立ち並んでいる。
なぜなら、稔彦を中央に挟んだ対面に、愛好会歴代主将、新城良、石狩拓也、門場勝美、鬼頭三郎、梶川大悟たちが、異様な雰囲気を醸しだしながら身構えているからだ。
河田警部補は小柄だが、柔道三段。
二人の巡査も剣道の有段者で、これまでにも、凶悪犯の身柄確保に奔走してきた経験者だ。
だがこの場には、それまで自分たちが経験してきた現場とはまた別の、異質な緊張感が溢れていた。
新城たちの後列には、倉田、翔太、そしてマネージャーのモモコが、寒さのせいもあるが、これまた予想以上に緊張した顔つきで震えている。
愛好会の一年生、熊坂昇太と飯星聖哉は、年末年始の旅行に出かけて欠席だった。
モモコもその予定だったが、稔彦が初代主将と試合うことを聞き、自分だけ家族旅行を取り止めた。
母親は一人残す娘を心配してくれたが、父親には、勝手にしろと怒鳴られた。
怒鳴りながらも、淋しそうな表情を見せる父親に、ほんの少し、後ろめたさを覚えた。
そのモモコの左側に三条がおり、その隣には仙道明人の姿がみえる。
仙道は、柔道場内を駆けまわるピリピリした雰囲気を、丸ごと呑み込もうと大きく息を吸い込んだ。
ただ、段田剛二だけが、まだ到着していなかった。
約束の集合時間を二〇分ほど過ぎたが、まだ段田剛二は現れない。
ついに業を煮やした門場勝美が、新城良に懇願した。
「おす、新城先輩。あの人、気まぐれだから、いつ来るかわかりませんよ。こうして待っている時間がもったいないから、草薙とのウォーミングアップ、軽くならやり合っても構わないですよね」
これを聞いた三条が、門場に向かって大声を張りあげた。段田先輩の了解も得ずに失礼だから控えろと
三条は、門場が稔彦を相手にウォーミングアップ程度で済ますはずがないと思っている。
その場の雰囲気が硬直してゆく中、それでも新城良は、平然とした大らかな笑みを絶やさないでいる。
それが唯一、皆の張りつめた緊張感を和らいでいた。
新城は、門場の肩を叩き、その門場本人にではなく、隣の鬼頭三郎へ問いかけた。
「鬼頭、おまえはどうなんだよ。まだ現役なんだろう」
それとなく稔彦との試合を促してみる。
鬼頭三郎は、新城へ苦笑いを浮かべ、稔彦とは、この夏にガチでやり合ったことを話した。
それを聞いた門場から、勝敗の行方を問われ、鬼頭三郎は、試合後、二日間入院したことを、照れ臭そうに応えた。
門場の顔が、一瞬硬直する。
一年後輩の、蹴りの業師と謳われた鬼頭三郎の実力は、門場自身が、一番理解しているからだ。
その鬼頭三郎を、病院送りにした稔彦の実力は、もはや疑いようはない。だからこれまで以上に試してみたくなる。
血が、騒ぐのだ。
門場は、他にやる者がいないなら、今回は自分に優先権があると主張し、もう一度新城に許可を求めた。
新城の返答は、やりたい者同士で話し合え、だ。
新城は思う。
最初から誰かがこう言いだすことは予測していた。
歴代の愛好会を守り抜いてきた
段田剛二は、それを知ってわざと遅れているのかもしれない。
門場が稔彦に一歩迫り、嬉しそうに笑いかけた。
「草薙、そう言うことなんで、受けてくれるよなあ」
稔彦が、飄然とした顔で頷く。
「よっしゃあ、新城先輩、これで話はつきました」
門場が着ていたダウンコートを脱ぎ、色褪せた黒のTシャツに太めのジャージパンツ姿になった。
肩や腕は筋肉で盛りあがってはいるが、どちらかと言えばプロレスラータイプではなく、競泳選手みたいなしなやかでスマートな体躯だ。
稔彦は、最初から、空手着の上に、神谷藍に買ってもらったベンチコートを羽織っているだけだ。
門場と稔彦の身長体重はほぼ同じ。
次の瞬間、村石校長たちの列とOBたちが並ぶ列の間が広く分かれ、その中央に門場勝美と稔彦が相対した。
村石校長が、少し震えた声で新城に訊ねた。
「新城君。こ、これから何が始まろうとしているのかね。私は、寒中稽古としか、報告を受けていないのだが。しかし、この雰囲気は、少し尋常ではないようだが」
新城は笑いながら、
「単なる余興ですよ。愛好会の先輩が、現役と練習試合をやるだけのことです」
「余興、かね。つまり、しごきとか、暴力ではないんだね」
「校長先生。先輩が後輩にヤキを入れる、みたいなことを心配しておられるなら、まったくお門違いですよ。これから始まるのは、そんな低レベルなイベントではありません。まあ、みていて下さい」
村石校長が、不安げに隣の河田警部補を振り向いた。
河田警部補は、中央の門場勝美と稔彦を見つめたまま、新城の言葉を肯定するように深く頷いてみせた。
彼は、長く三崎署に勤務しており、愛好会の歴代たちが起こしてきた、数々の暴力沙汰にも携わっていた。
事件を調査した結果で判ったことだが、彼らが好んで起こしてきた、と言うよりは、巻き込まれた、と言った方が正しいかった。
誰もが、自ら率先して相手に仕掛けたことはなかった。
いつも火の粉の方から降りかかってきた。彼らは、逃げなかっただけだ。
そして誰もが、降りかかるその火の粉を、気力と腕力で払い除けてきた。
俗に言う、弱者には手はださない、いつも一人で多勢を相手に闘い、そして負けたことはなかった。
河田警部補は、そんな彼らに、ある種の
河田警部補は、村石校長と二人の巡査に、腹の底から絞り出すような重い声で言った。
「まあ、瞬きせんで、しっかりと、これから起こることを、見届けてやって下さい」
新城が中央の二人に視線を戻したら、門場が、稔彦の眼を凝視しながら、楽しそうに微笑んでいる。
ただ、自前の三白眼だけは笑っていない。
審判は新城の提案で、鬼頭三郎が仕切ることになった。
理由は、OBの中で、門場と稔彦の性格を最も理解しているからだ。
その鬼頭三郎が稔彦と門場を中央へ呼んだ。
ルールは、闘う意識をなくした者の負け。つまり、ノックアウトされるか、自分から降りるか。
制限時間は、段田剛二が現れるまで。
鬼頭三郎が両名に、試合開始の号令を発した。
試合が始まった。
その場にいる誰もが、これから起こるだろう闘いの展開を勝手に想像しながら、黙って見守っている。
門場が上半身をやや前に屈み、両手で顔面をガードしながら、その上半身を軽く左右に振り始めた。
それを見た梶川大悟は、その異様な動作に戦慄を覚えた。
門場は、この場で、バーリトゥード(ポルトガル語でなんでもありの意)をやるつもりなのだ。
翔太は、門場の構えが空手の動きではないことに気づき、柔道かレスリングでも始めるのかと首を傾げた。
稔彦は、少しだけ腰を落とし、左手を前へ伸ばして門場との間合いを計りながら、軽く握った右の拳を右脇腹に添えた。
二人の異なる構えをみた新城は、突き蹴り投げに寝技など、何でもありきの総合格闘技スタイルでやるつもりの門場に対して、稔彦は、空手一筋で挑むつもりだと思った。
その門場が、身構えたまま動けないでいる。
稔彦の、一撃必殺を狙う右拳が気になるからだ。
稔彦ほどの実力とパワーがあれば、安易に跳び込み、カウンターを一発喰らえば、それで沈む。
門場の脳裡に、ばつが悪そうに、二日間入院したと苦笑いした鬼頭三郎の顔が張りついている。
三条は、稔彦の四肢が石みたいに固かったと言う。
それが門場に、攻撃の躊躇いを生じさせた。
稔彦は、門場の構えをみた瞬間、門場がどんな技を仕掛けてくるのか想像できた。
門場は、両手を握っていなかった。
掴みにくる構えだ。
柔道部OBで、秋の空手大会にも出場した加藤康宏とやり合った経験が、稔彦に、異種格闘技と相見えた時の対応策を教えてくれた。
身体を沈めた門場がいきなり跳び込み、稔彦の両脚を掴みにかかる。
稔彦は掴まる前に跳び上がり、空中で両足の踵を揃え、落下と同時に門場の顔面を踏みつけた。
門場が両腕を折り曲げ、弾き返す。
次の瞬間、稔彦の着地と同時に抱きついた。
抱きついて稔彦を抱え上げようとした瞬間にぐらつき、左膝をついた。
何が起こったのかと倉田たちが驚いて覗き込む。
この時、稔彦の右膝が、門場の左脇腹にめり込んでいた。
間を置かず、姿勢を崩した門場の左顎へ、稔彦が右のローキックを刈り込む。
思わず門場が両腕でブロック。
野球のバッドで殴られたような衝撃が襲う。
門場は体勢を整える間もなく、堪らず畳の上を転げ、稔彦との間合いを外した。
それからゆっくり起ち上がり、左脇腹を押さえながらも、不敵な笑みを浮かべ、唸った。
「うぬ」
「続行!」
鬼頭三郎が叫ぶ。
門場が一気に間合いを詰め、左ローキック。
次いで右上段廻し蹴り。
軽く顔を反って躱す稔彦。
門場が左右の正拳突きと前蹴りを連打して、稔彦を壁際へ追い込む。
壁板を背負わせ、後ろへ下がれないようにして、掴まえるつもりだ。
門場がもう一発右の前蹴り。
その中足へ、稔彦が右肘を叩きつけた。
門場の右足に激痛。
今度は稔彦の左ローキック。
門場が、右膝を立て受け流そうとして前屈みになったその右顎へ、稔彦は、ローキックから左上段廻し蹴りへ瞬時に切り替える。
門場が咄嗟に顔をのけ反り、稔彦の高速上段廻し蹴りを何とか凌ぐ。
この切り替えし技は、門場もよく知っている。蹴りの業師と呼ばれた鬼頭三郎の得意技だ。
稔彦のスピードは、その遥か上をゆく。
両腕を組み、二人の攻防を見つめていた新城が、隣の石狩拓也に話しかけた。
「二人とも、まだウォーミングアップだな。ただ、門場は、草薙がこれほどやるとは思っていなかったみたいだ。石狩、おまえは、何年か前に草薙と面識があったんだよな」
「おす。二年前の春、教育実習で、近くまで来ていたものですから。愛好会の様子がどんなものか覗いてみたくなって」
「二年前の春ってことは、草薙がまだ新入生だった頃か」
「その新入生の勝ち気がもの凄いんで、驚きました。さすがに当時の鬼頭や梶川には勝てませんでしたが、段田さんも、その頃から気にかけていたみたいです」
門場と稔彦が再び構え直した。
石狩拓也は、二人の構えを眺めながら、新城に、
「おす、新城先輩。門場も草薙も尋常ではないほど強くなりました。確かにそうですが、しかしこの程度では、あの段田先輩には勝てませんよ。何かが違うって言うか、よく判りませんが、レベルの問題ですかね。草薙のやつ、このままでは本当に余興で終わってしまいますよ」
「さあな。草薙が、おまえの言う程度の実力ならば、段田剛二は最初から相手にしないはずだ。今ごろ、三浦屋で飲んでるよ。肝心なのは、あの大会で優勝するなんざ、そう簡単にできることではないってことだ」
それを聞いた石狩拓也は、いま一度頭の中で反芻し、それから同調したように頷いてみせた。
これまでの展開を見届けていた翔太は、愛好会の、八年間の歴史を垣間見たような喜びに浸っていた。
段田剛二には怖くて会いたくないが、一度は会ってみたいと思っていた新城良、石狩拓也、門場勝美の三人を初めて見て嬉しかった。
噂に聞く、歴代の強者どもだ。
そうして誰もが皆、同じような臭いがした。
汗と血の混じった体臭、痛みや恐怖を超越した世界を精神力で生き抜いてきたような、逞しさを感じ、感動している。
これが愛好会歴代主将たちなのだ。
梶川大悟は、この闘いで、まだ稔彦が牙をむいていないのを疑問に思っていた。
門場の攻撃を、鍛えた四肢の鉄扇で叩き落とす、その本気度が、まだ窺えない。
それでいて、稔彦が何かを狙っているようにも見える。
次の攻防で、稔彦が何か仕掛けそうな予感がした。
梶川大悟が見ると、門場が稔彦の顔面に左右の正拳突きをくれながら、直後、左の前蹴りで、真下から稔彦の顎を一直線に蹴り上げた。
稔彦は、顎を天井へ向けてのけ反り、門場の蹴りをやり過ごす。
その隙をついた門場が、突進して稔彦に抱きついた。
門場は、眼前の稔彦に余裕の笑みを浮かべ、こう言った。
「やっとつかまえた」
仙道明人は、門場の間合いが、あまりに近すぎることを心配した。
抱きついても、安心できない。稔彦は、何をするか判らない。
門場は、稔彦の右手首を掴んだまま、抱きしめるように引き寄せた。
左脚を内側から稔彦の右脚に掛け、後ろへ倒しながら同時に跳びつき、すぐ稔彦の右腕に両脚を絡める。
腕ひしぎ十字固。
稔彦の右腕の肘関節を、全力で引きつける。
これを狙っていたのか、梶川大悟は思わず眼を剥きながら、唸り声をあげた。
稔彦は、引き抜こうが、ブリッチしてはね除けようが、難しい体勢にはまってしまった。
「ああ、主将……」
翔太が絶望的なため息をもらした。
モモコは口元に手を当て、泣きだしそうな顔で稔彦を見守る。
稔彦は、右腕の力だけで、門場が引っ張る力に堪えた。
腕が伸びきれば、稔彦はギブアップするしかない。
しなけれは右肘の靱帯が伸びきり、使いものにならなくなる。
この時、誰もが終わったと思った。
突然、門場が悲鳴をあげた。
驚いた鬼頭三郎は、何が起こったのか見極めるため、急いで門場の背後へ回り込んだ。
門場は、稔彦の右腕に絡めた両腕を離し、両脚を解き、それから畳の上を転がりだした。
左脚の太腿を擦りながら、ゆっくり起ち上がり、稔彦を睨みつけた。
「おもしろいなあ、草薙。そうか、こんな逃げ方もあったんだなあ」
固め技に対抗する手段として、相手の身体の一部を噛みちぎる、それを二年前、まだ高校一年生だった稔彦に教えたのは、他ならぬ段田剛二だ。
「さあ、続きをやろうぜ。同じ手は、もう通用しないからな」
門場が稔彦に近づき、さっきと同じように構えた。
稔彦も間合いを詰める。
二人の体格はほぼ同じだから、間合いも変わらない。
門場が、稔彦の右袖を取ろうとして左手を差し伸ばす。
もう一度、軽く左のフェイント。
そのスピードが中途半端。
その動きに合わせ、門場の左指先を、稔彦が左の裏拳で厳しく弾き返す。
コンクリート製の電柱を叩いて鍛えた稔彦の拳。
門場の指先に強烈な痛みが走り、一瞬動きが止まった。
稔彦が前方へ跳んだ。
跳び込みながら、高速跳び左上段廻し蹴り。
予測外の跳び蹴りを、左指の痛みに気を取られていた門場が躱しきれず、右顎に直撃を受けた。
誰もが、肉と肉、骨と骨がぶち当たるガツンとした衝撃を感じた。
この瞬間、門場の眼前に火花がとんだ。
それでも倒れまいと必死に踏ん張る。
ぐらついた門場の腹へ、強烈な稔彦の左後ろ廻し蹴りが炸裂。
体重80kgの門場の身体が、軽々とふっ飛び、尻から畳に落ちた。
必死の形相で何とか起ち上がろうとする門場へ、鬼頭三郎が走り寄り、試合続行が可能かを確認する。
もちろん門場は、苦しげに顔を歪ませながらも、右手でVサインを作ってみせる。
劣勢になったこの状況下で、なおさら門場が退けないことは、鬼頭自身が一番理解している。
門場は、頭を左右に振りながら、まだふらつく足取りで、稔彦が待つ柔道場の中央へ歩いた。
四〇
それが起こったのは、鬼頭三郎が、再び試合を続行させようと二人の間に分け入った直後だった。
突然、柔道場の外で落雷に似た地鳴りが轟き、ピリピリした電流が流れだした。
最初にその異変に気づいた新城良は、思わず顔を玄関へ向けた。
次いで石狩拓也と梶川大悟が、外から伝わってく異様な威圧感を感じ、互いに顔を見合わせる。
「やっと現れたな」
新城が、誰にとなく、呟いた。
その声を聞いた石狩と梶川の二人がもう一度顔を見合わせ、慌てて柔道場の玄関へ走った。
その後方から、新城がゆっくりした足取りで向かう。
鬼頭三郎は、門場と稔彦を残したまま、三人の後を追いかけた。
門場と稔彦はまだ相対したままだ。
試合に集中しているから、今、何が起こっているのかまだ気づかない。
先に仕掛けようと、門場が腰を落とす。
その時、力強い音をたて、いきなり柔道場の戸が開いた。
皆の視線が一斉に玄関へ集中する。
真冬なのに、外から生温かい風が吹き込んできた。
この時、やっと門場と稔彦は、辺りの異変に気づき、二人同時に玄関を振り向いた。
誰もが獣の臭いを嗅いだ。
野生の熊に顔を舐められたら、こんな臭いだろう。
玄関の上枠に頭をぶつけないように搔い潜り、肉厚の四角い顔が覗き込んできた。
俯き加減なその顔をゆっくり起こし、太い眉毛に、仁王像みたいなぎょろ眼が、柔道場の中を見回す。
見回した後、ふざけたように、にぃっ、と笑う。
次の瞬間、横一列に並んだ新城良たち三人が、胸の前でクロスさせた両腕を切り、揃って挨拶した。
「おす!」
「お久しぶりです!」
「段田先輩!」
この時、門場と稔彦が遅れて、新城たちの後ろへ並んだ。
空手愛好会初代主将。
その段田剛二が、ゆっくり玄関の中へ、足を一歩踏み入れた。
熊に噛まれても大丈夫そうなぶ厚い靴底の登山靴を見た石狩拓也が、その巨大さに眼を剥いた。
片方だけで、軽く2kgはありそうだ。
身長190cmに近い新城良より、さらに頭一つ背が高い。
肩幅は痩せ型の石狩拓也の二倍以上ある。
短く無造作に刈り込んだ頭髪。
無精ひげを生やした口もとの、歯だけは顔に似合わず白い。
真冬なのに、下着のような黒のヒートテックの上に、半袖の毛皮を纏っているだけだ。
誰が見ても、手製の、獣の毛皮に思える。
段田剛二が、肩に担いだ巨大なリックサックを、新城の足元へ放り投げた。
ズシンと鈍い音を立て、そのリックサックの中身が動いてゆっくり斜めに傾いてゆく。
段田剛二が、無差別に新城たちを見回し、太くしゃがれた声で言った。
「おまえら、今夜は猪鍋だ。そん中に二頭分、入ってる」
驚いた新城が、その二頭のイノシシをどうやって手に入れたのか訊ねたら、段田剛二は、伊豆の山中で捕獲したと軽快に笑ってみせる。
「あっちで山籠もりしてたらよう、いきなり突っ込んできたから、ぶっ叩いた」
「はあ? この寒いのに伊豆山中で山籠もり。叩き殺したんですか、イノシシを、それも二頭も。何やってんですか、先輩」
「あ、言い忘れたが、こいつらは後で捕まえたやつらだ。前のやつは、あっちで焼いて喰っちまった。山ん中にいっぱいいるからよお、食料には困らないんだよ。葉っぱもきのこも採れるしよ。そうそう、余ったきのこも一緒に入ってるぜ。この時期のこいつらはよう、脂がのってるから、特製の噌鍋で煮込むと旨いんだよ」
そう言うなり、登山靴を脱いで柔道場へ上がり、中央の横で緊張している村石校長と河田警部補たちに挨拶した。
本気なのか冗談なのか判らないような口調で、よかったら一緒に猪鍋を食べないかと誘いかける。
近くで聞いていたモモコは、イノシシだけは食べたくないと思った。豚肉の方がまだいい。
それより、噂に聞く段田剛二の、圧倒的な存在感、そしてもの凄いオーラを浴び、思わず興奮して漏らしそうになった。
河田警部補が、突然の、思いもよらない展開にどう返答していいのか迷っていたら、段田剛二が、下の三浦屋で飲んでいるから、気が向いたらおいでよ、まるで友達を誘うみたいに話しかける。
段田剛二、まだ高校生だったこの男には、県警全域が何度も手を焼かされた。
武道の有段者であるはずの警察官が五、六人でかかっても、捕獲できなかった記憶がある。
太子堂高校在学中、八度の停学処分を受け、一年留年して卒業したと、河田警部補は、風の便りに聞いたことがあった。
その段田剛二が、頭部をかきながら、おやつをねだる子どもみたいに新城へ催促する。
「さあ、早く用事を済ませて、猪鍋で一杯やろうぜ。新城、最初の相手は誰だ。草薙か、それとも久しぶりに、おまえがやるか」
新城は破顔しながら首を横に振り、門場と稔彦の試合がまだ途中なのを説明した。
それから段田剛二に、空手着に着替えないのか訊ねたら、あんなものは役に立たないから捨てた、そうにべもなく言い放つ。
段田剛二は、門場に、押さえ込みでも絞めでも関節でも何でもいいから、おまえの得意な固め技を仕掛けてこいと命じた。
その誘いに門場が躊躇っていたら、腹が減ったから早くかかって来いと、怒ったように催促してきた。
「おす。段田先輩、参ります」
門場は、先ほど稔彦にかけた腕ひしぎ十字固を、もう一度試した。
段田剛二にどこまで通用するか、興味があったからだ。
まさか、段田剛二とあろう者が、脚を噛んだりしないだろう。
門場が、腕ひしぎ十字固の体勢に入り、全力で段田剛二の左腕を引っ張ったが、腕力が強すぎて、左腕が伸びきらない。
さっきの稔彦より、もっと強い。
次の瞬間、信じられないことが起こった。
「おうりゃやあ!」
段田剛二がいきなりブリッジすると雄叫びをあげ、ブリッジした状態から、左腕に体重80kgの門場を抱えたまま上体を起こし始めた。
腹筋、背筋、脚力、身体中の全ての筋力をフル稼働して起ち上がるその左上腕に、門場勝美がのっている。
その場にいた誰もが度肝を抜かれた。
純真に驚いた顔を向け、眼前で起こっている信じられない光景に吸い込まれてゆく。
次の瞬間、起ち上がった段田剛二が、力いっぱい門場を畳の上に叩きつけた。
門場は、柔道の受け身をとり、衝撃を和らげ、そのまま畳の上を転がって逃れた。
それから素早く起き上がり、段田剛二に礼を述べた。
門場は、自分自身に言いきかせるように呟いた。
やはり、この程度の固め技では、この男には通用しなかった……
柔道場の天井を見上げ、三年間のブラジル修行はいったい何だったのだろうかと思い、少し落ち込んだ。
最初から門場は、稔彦ではなく、段田剛二とやり合うのが目的だった。
段田剛二に勝つために格闘技の盛んなブラジルへ渡り、そこでブラジリアン柔術を学んだ。
パワー全開の段田剛二に対抗するためには、実戦的な固め技を修得するのが得策だと考えたからだ。
だが、三年間学んだその技も、段田剛二には通用しなかった。
通用しなかったのは技ではなく、パワーに対してだ。
圧倒的なパワー。
所詮、技は、力には勝てないのだろうかと悩んでしまう。
「新城、お次は誰だ」
落ち込む門場勝美などお構いなしに、段田剛二が、新城へ、次の相手を催促する。
早く猪鍋が食べたくてしょうがない駄々っ子のような段田剛二に、新城は苦笑いを浮かべ、稔彦を見た。
その稔彦が、頷く。
それから稔彦の肩を叩き、首の関節を鳴らし始めた段田剛二に向かって応えた。
「段田先輩、次は草薙です。そしてこれで最後です」
「あいよ。すぐに終わらせるから、次は猪鍋と酒だ。さあ、来いよ、草薙。精一杯かかってきなさい。こっちはいつでもいいぜ」
いつでもいい、その言葉の途中で、稔彦が一歩踏み込み、高く跳んだ。
空中で静止し、段田剛二の顔面目がけ、両足裏で五連発。
通常なら、両腕を立てブロックしなければ逃れられないほどのスピードと威力。
その隙に稔彦は次の動作に移る。
だが、段田剛二は違っていた。
いきなり、フギィアスケートのイナバウアーみたいに両腕を広げ、上半身を後ろへそり返し、届かない稔彦の足蹴りを、笑いながら眺めている。
稔彦得意の空中五連発は、段田剛二の顔の寸前で空振りしていた。
稔彦の背中に悪寒が走る。
まだ空中にいるこの状態で、段田剛二の反撃を受けたらおしまいだ。
咄嗟に稔彦は、空中で全身を伸ばし、高速度で横向きに回転した。
空中で攻撃を受けた場合に備え、回転力で衝撃を軽減するためだ。
その稔彦の腹部を、真下から、容赦なく段田剛二が右中足で蹴り上げる。
落下しかけた稔彦の身体が、空中でさらに高く跳ね上がる
「ひー」
これはモモコの悲鳴。
翔太は口を開けたままフリーズ。
鬼頭三郎は、次は稔彦の番だと拳を握る。このままでは終わらないはず。
新城は、段田剛二が空中で稔彦を捉え、肩に担いで畳に落とす動作を描いた。
突然、稔彦が空中で前方回転した。
回転力を利用して段田剛二の頭部へ踵を落とす。
「おお」
河田警部補が唸り声をあげる。
段田剛二がその踵を右掌で受け止め、鷲掴みし、稔彦の身体ごと水平に振り回す。
三回振り回して放り投げた。
その先にいた翔太が、思わず首を引っ込める。
その翔太の頭越え、仰向けのまま稔彦がふっ飛んでゆく。
稔彦は空中で身体を丸め、後方回転して畳の上に着地。
着地と同時に走る。
走って跳んだ。
まだ頭を下げたままの翔太を背後から跳び越え、その正面に聳え立つ段田剛二へ、跳び足刀蹴り。
段田剛二が右腕で払い落とす。
バランスを崩し、落ちる稔彦の背中へ右膝蹴り。
稔彦は尻から落ちながら、両手を尻の下へ回し、段田剛二の膝頭を押さえ、膝蹴りの威力を利用して高く舞い上がる。
天井板に吸い込まれていくように、稔彦の身体が縮んでゆく。
逆さコウモリみたいに天井板に貼りつく稔彦。
「凄い!」
その異形な動きに思わず仙道明人が感嘆。
静止した次の瞬間、天井板を蹴った稔彦が、見上げる段田剛二に向かって前方回転しながら落ちてゆく。
段田剛二が右拳を突き上げる。
前方回転の威力のまま踵を落とす稔彦。
拳と踵がぶつかり合い、弾けた稔彦が、後方回転して畳の上に着地。
同時に三歩跳び退く。
四一
段田剛二が一歩踏み込み、強烈な右の前蹴り。
稔彦は鍛えた右肘で弾き返すも、そのパワーに圧倒され、壁際までふっ飛んだ。
肘を鍛えていなかったら、肘骨ごともっていかれそうな衝撃。
コンクリート製の電柱を叩いて鍛えた肘も拳も、段田剛二には通用しない。
そのパワーの差に愕然とする。
段田剛二が稔彦を追いかける。
稔彦が体勢を戻す寸前、もう一発右の前蹴り。
直前、右へ回り、稔彦が躱す。
段田剛二、前蹴りの勢いが止まらず、柔道場の壁板をぶち抜いた。
その足の二倍分だけ、壁に穴があいた。
それを見た新城が、まずいなと舌打ちする。
高校生を相手に、もう少し加減すればいいのにと。
それから隣の石狩に、あれは弁償だぞ、そう嘆いてみせる。
石狩も苦笑いを返すしかない。
村石校長をチラ見したら、ポカンと口を開けたままフリーズしている。
ヤバいな……
段田剛二は、フェイントや切り替えし技などの小技は、いっさい使わない。
蹴りなら蹴り、拳なら拳、その単調な一発を全力で打ち込む。
だから歯止めがない。
相手がブロックするなら、そのブロックごと破壊してしまう。
体勢を戻した稔彦が、もう一度、跳んだ。
左の跳び前蹴りで段田剛二の下顎を蹴りあげる。
段田剛二が右掌でこれを払う。
次の瞬間。
空中で腰をひねり、稔彦が右の足刀を蹴り込んだ。
段田剛二の喉元へ、予想以上に稔彦の右足刀が伸びてゆく。
倉田が叫んだ。
「やったあ、足刀二段蹴り!」
稔彦の右足刀が段田剛二の喉元を貫こうした瞬間、稔彦の視界から段田剛二の姿が消えた。
「稔彦、下だあ!」
今度は、冷静沈着な梶川大悟が、珍しく我を忘れて叫んだ。
攻撃を躱された瞬間、最大の危機が訪れる。
段田剛二が、稔彦の真下から勢いよく跳び上がった。
稔彦の腰を、右肩に担いだまま、空中へ上昇してゆく。
空中で身体を入れ替え、稔彦の腰を持ちあげ、両脚を自分の肩に担ぎ、自分の両脚で稔彦の肩を押さえながら落下する。
稔彦は空中で身動きがとれず、段田剛二の体重を載せたまま、背中から畳に叩きつけられた。
ドスンと鈍い音をたて、段田剛二と稔彦が畳の上に落ちた。
結果を確認しようと全員の眼が二人に集中する。
最初に段田剛二がゆっくり起ち上がる。
起き上がって首の後ろを軽く揉んで笑ってみせる。
稔彦は、まだ畳に沈んだまま。
仙道明人は、稔彦の容態が心配になり、近寄ろうとして足を止めた。
稔彦の頭が僅かに動いたのを見たからだ。
鬼頭三郎が稔彦に、これ以上やれるか声をかけた。
稔彦は鬼頭三郎に向かい、先ほど門場勝美がそうした様に、Vサインを作ってみせる。
それを見た段田剛二が、仁王像みたいな顔で破顔し、右足を持ち上げると稔彦の腹へ、止めの踵を落とした。
直撃を受ける寸前、稔彦は畳の上を転がって躱す。
段田剛二との間合いを大きくあけ、それから起ち上がる。
今まで、二人の闘いに圧倒され、声を控えていた村石校長が、怯えるように声を震わせ、段田剛二に懇願した。
「だ、段田君。も、も、これ以上は」
段田剛二が、声の方向へ一瞬振り向いた。
稔彦が跳んだのは、この時だ。
段田剛二の喉元へ、空中で腰を入れ替えながら左右の足刀蹴りを連打。
思わず一歩後退しながら、右手で払い除ける段田剛二。
稔彦はさらに腰を捻り、三発目の左足刀を、渾身の思いで蹴り込んだ。
唇に笑みを浮かべた段田剛二が、稔彦の足刀へ向かって顔を突きだす。
自分から打たれに行くつもりか。
「段田先輩!」
新城が思わず叫んだ。
石狩、鬼頭、梶川が拳を握りしめ、眼を見開く。
仙道明人は、思わず組んだ両腕を解いた。
次の瞬間、異常な、この世にはあり得ない光景を全員が見た。
段田剛二は、稔彦会心の左足刀蹴りの直撃を、喉元で受け止め、顎と鎖骨で挟み咥え、そのまま右回りに振り投げた。
「化けもの」、モモコが呟く。
稔彦は空中で一回転し、畳の上に四つん這いになって降り立つ。
稔彦が再び助走しようと身構えた時、温和な新城が、左腕を水平に振り、稔彦を制して怒鳴った。
「ばか野郎! 死にたいのか! ここまでだ!」
新城の、その一喝を聞いた稔彦が、走りかけた脚を止め、電池が切れたロボットみたいにゆっくり膝から崩れ落ちていく。
梶川、倉田、翔太、そしてモモコが走り寄り、稔彦の名を呼んだ。
倉田は、泪と掠れた声で、よくやったを連発する。
翔太も鼻水をたらして泣きながら、「草薙主将、草薙主将」、何度もその名を繰り返し呼んだ。
稔彦は両眼を見開き、肩で息をしながら、柔道場の天井を、哀しそうな顔で見つめている。
段田剛二には、まだ遠く及ばない、そう思うと重い虚脱感に襲われ、身体が動かない。
それでも翔太とモモコは、稔彦の表情に、闘いをやり遂げた男の満足感を見た気がして嬉しかった。
梶川大悟は、ほんとは死ぬまでやりたかったのだろうと、内心で稔彦に同情した。
あの段田剛二を相手に、ここまで闘えた稔彦が、羨ましく、そして抱きしめてやりたいくらいだ。
その反面、自分と稔彦の距離が、永遠に縮まらないことを理解し、淋しくなる。
その梶川大悟が、現役引退を決めたのはこの瞬間だった。
この時、鬼頭三郎も同じことを考えていた。
間もなく、新城、石狩、門場が、畳の上で大の字に寝ている稔彦を笑顔で見下ろし、称賛の拍手を贈り始めた。
鬼頭と梶川たちがそれに続いた。
村石校長、河田警部補たちも、遅れながら両手を叩き始める。
今、眼前で展開してきた光景を、部外者的な立ち位置から見守っていた仙道明人の、眼が濡れている。
自分の知らない
この時、仙道明人は、いきなり自分の肩を叩かれ、振り向いた眼前に、肉厚的で四角い顔が笑っていた。
仙道明人は、自分でも知らずの内に背後を捕られていたことに、まったく気づかなかった。
段田剛二は、驚いて振り向いた仙道明人に、飄然とした顔でこう囁いた。
「仙道さん、猪鍋、一緒にどうすか」
(完)
RISING SUN Ⅱ 成沢光義 @hi-ro001
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