8月16日 早朝(事件発生まで後1日。捜査開始まで後3日。残り10日)
AM3時40分。
某SNSの無人島ツアーに興味本位で参加した所、まさかの当選。13万人の中から選ばれた16人の1人になってしまった私は大きめのキャリーバッグに荷物を詰め、指定された港へと来ていた。私が到着した時には既に数人ちらほらと港に集まっており、眠そうに目を擦る人やケータイでゲームをしている人、忘れ物のチェックを行なってる人などそれぞれが好きな様に行動し特に会話をする事も無く時間を潰していた。
とは言え私も何か特別社交性に優れてる訳でもない。更に言えば今見えている人達は薄暗やみでしっかりと認識は出来ないけども恐らく男性ばかり。同性なら兎も角見ず知らずの異性に声を駆け回る勇気があるわけもなく、ケータイで音楽を聴いて時間を潰すしかなかった。
それから、10分程経っただろうか。続々と港に人が集まり始め恐らくほぼ全ての参加者が到着していた。驚いたのは私以外にも女性が多数参加しており、男女比で言えば6:4という形になっていた。もしこれが私以外全員男となると最悪の場合身の危険が生じるとかのレベルではない。その点から見てもある意味公平に参加者を募っていたのだろうとホッとする事実だった。
AM4時。
『どうも皆様。この度は当旅泊にご当選おめでとうございます。そして何より、1人の欠員もなく参加して頂く事心より感謝申し上げます。』
予定時間と共にライトアップされた大型クルーズから2人の男女が現れる。今回のイベントの主催者だろう。深々とお辞儀をした彼らは挨拶を交えながら今回の行き先や設備について説明をした後、注意点を述べ始める。
『尚、無人島での生活を十二分に楽しんで頂く為皆様には到着時に番号をお渡しします。こちらの番号は皆様1人辺りの毎食分の食事を保管した冷凍・冷蔵庫の番号となります。こちらは盗難を防ぐ為に到着しましたら我々立会いの元1人ずつ暗証番号を設定して頂きます。もし、暗証番号の入力に3度失敗した場合は帰港時を持って窃盗罪として警察対応させていただきますのでご注意下さい。又、各人のテントにも貴重品金庫がございます。金品等はこちらをご利用ください。有事の際の医療品につきましても同様にテントに支給してあり、全て昨日の内に新品の物にしてあります。
生活面につきましては天然の浴場がありますので、入浴の際はそちらをご利用下さい。尚、覗きや盗撮等を避けるために男女別の位置で用意させて頂いている上、個人に手渡す地図にも男性なら男性用のみ、女性なら女性用のみの浴場を記載してありますのでご安心下さい。
衣類の洗濯につきましては医療品と共に衣類用洗剤を配布してあります。こちらを用いて手洗いではありますがご利用ください。
食事面に関しまして。サバイバルに不慣れな方が多いと思われるので調理場には大型のガスコンロを配置してあり、それ以外にもバーベキューセットや飯盒、使い捨ての食器類など1人当たり1ヶ月分支給してあります。もし紛失などがあった場合は皆様分け与えるなどをしてご協力ください。
最後に、当社が再度寄港するのは10日後の最終日のみとなっております。それまでは無人島生活を満喫して頂く為、如何なる場合でもお迎えに上がることは出来ませんのでご了承下さい。それではお待たせ致しました。順次搭乗して下さい。』
説明を終えた男女が再び頭を下げる。……終始笑顔を見せていた2人だが最後の方だけ一瞬、鋭く冷たい眼差しになった気がする。気のせいだろうか。もしかすると2人がかけている眼鏡が反射しただけかもしれない。あまり気にしない様にしながら私もクルーズに乗り込んだ。
船内は外見通り豪華な物になっており、各人個室が割り当てられていた。乗員に案内された私は部屋に入り一先ずベッドに腰をかける事に。少し不安があるものの待ちに待った無人島旅行である。嘘偽り無いかは到着するまで分からないが、それでも楽しい10日間を過ごせると信じて出港を待つ事に。到着する島はどれくらいの広さでどれくらいの自然が広がっているのか。楽しみで仕方ない私はさながら遠足前の子供の様に1人はしゃいでいた。
それから間もなくして、低く底に響く警笛が鳴る。音が鳴り止んだ後にゆっくりと動き出した船は16人の当選者を運び無人島へと向かい始めた。
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