第343話白無垢

エジソンさんとフェッセンデンさんと通訳で意気投合。どうしてもまだ会話がしたいと言うパトリックと大司教さんは城に残った。



光国さんと私達だけで城下町に来ました!


「おっ!街灯付いてるじゃん!」

城下町にはちょっと似合わないけれど夜道はしっかり明るくなったんじゃないだろうか。

「夜間の犯罪はだいぶ減ったぞ!」

と光国さんが嬉しそうに街灯を見上げながら歩く。

「エミリアは後で楽器屋行く?」

笛収集したいと言ってたし。

「行きたい!新しい龍笛ちゃんを買いたかったんですよ。」

龍笛ちゃん。エミリアは心底嬉しそう。


「あはは。笛への愛に溢れてますね。」

王子がちょっとからかいながら僕も新しい楽器買おうかなと言っている。


「此処じゃよ。」

呉服屋さん。

あー!もしかして例の誘拐事件の?


店内に入ると光国さんを見た番頭さんみたいな人が慌て出して、私達を見た店員さん達にご主人らしき方も揃って正座して頭を下げられてしまった。

『その節は娘をお助け頂き誠にありがとうございました。』


『良い良い。面を上げよ。今日は頼んでおいた婚礼衣装の採寸に来たのじゃ。』


前もって連絡を入れていた光国さんだったがあの事件以降会うのは初らしくそりゃもうお礼が止まらないし頭を上げてくれないし。

こういう所、時代劇っぽくて好きだなあと眺めていると奥からあの日、牢屋に囚われていたお嬢さんが出てきて

『あの日のくノ一様ですね!』

と私に向かって平に付した。


「くノ一?あー。ルナリー忍者だったの?」

「姐さんらしいな。」

クライスとカインにからかわれる。


『いや、本当に頭を上げて下さい。ね!衣装選びたいし。』

『本当に大丈夫ですから。』

何とか店の人も落ち着いて漸く店内に入る事が出来た。


『婚礼衣装と留袖は此方で御座います。』

と私とルイスとローズさん、グレンさんは奥へ案内された。


「ねえ?ルナリー!もしかし着物縫える?」

入口付近で反物を見ていたキャサリンが声をかけた。

「ん?縫えるよ?」

「和洋折衷のコンサート衣装にしたいわ。」

何やらそう言っている。和洋折衷ね。

縫えるがアイデアが無いんだけど。


「取り敢えず何か選んだらー?」

そう叫んで奥の間へ向かった。


『こちら白無垢になります。』

反物を幾つか持ってこられた。

そっかあ。白地に白糸や銀糸で模様が描いてあるんだな。

真っ白な生地じゃないんだ。

『綺麗ですねぇ。悩むな。』


縁起物の鶴が人気らしい。

『あー。白梅良いですね。綺麗だ。』

『梅でしたら中の打掛けは赤にされるのが可愛らしいと思います。』

白無垢に赤の着物を合わせて見せられた。


良いな。これに決めよう。


その後は採寸。

『背がお高いから大変!』

ルイスの採寸は大変そうだ。腕が長いし脚も長い。


『家紋はどうしましょう?』

グレンさんとローズさんに店員が尋ねていた。

「家紋か。ねーな?どうする?」

「そうだねえ。グレンに任せるよ。」

2人は悩みながら

『薔薇の家紋てあるかい?こいつの名前の意味が薔薇って意味なんだ。』

のグレンさんが嬉しそうな顔でそう聞いた。

店員は家紋表みたいな本から花の家紋から探してくれた。

薔薇もあるのか!

『では、こちらですね。』

『おー。お願いします。』

やり取りの末に決定。

マッケンジー家の婚礼衣装には薔薇の家紋が入る事になった。


採寸の後はやらなきゃならない事がある。

『すみませんが着付けを教えて下さい。』

そう、本番の結婚式はローズさんと私。グレンさんとルイスでお互いの着付けをしないとならないのだ。


「しっかり覚えておけよ。」

「親父もな。」


女性の着物の方が難しい。


「覚えたか?ルナリー。」

「多分。」

多分じゃダメだぞローズさんに言われて必死だ。


『この度はありがとう御座いました。』

店の方には着付けまで教えて貰ったし着物も値引きしてくれた。

これから反物から着物にしてもらいボードウェンまで送って貰う。

出来上がりが楽しみだ。


「お待たせ!」

戻ると反物を皆、めっちゃ選んでた。

「お疲れ。キャサリンが言うにはワンピース生地を着物にしたりとかお洒落だと言うんだよね。」

会長も男性も着物生地でスーツも面白いかなあと言って幾つか選んでいた。


「縫えるし作れるがアイデアがねえよ?」

残念だがデザイナーじゃないし。


「みんなで考えようよ!」

ジョージ達も結構渋い柄とか選んでいた。


裏地とかにも使えるか。

と言う訳で卒業後の新衣装の案として着物生地を購入した。



「じゃあ、楽器屋さんに行きますか!」

王子の掛け声で

おー!!と叫んで再び城下町を散策。

『いっぱい買うたのお?着るのか?』

光国さんが不思議そうに眺めてそう聞いた。

『コンサート衣装にアレンジします。』

『アレンジ?』

なかなか説明がホワンとしていて難しい。


『こう言うスーツの裏地とかポケットとかに使おうかと。』

何とか解ってくれた。

そう言う発想は珍しいらしく光国さんは良いなあと言っている。


「あっ。ここだよね!!」

「行きますか!」

クライスとジョージもウキウキしている。

そしてやっぱりエミリアが嬉しそう。


この時代のプラゲ国の楽器屋さんって職人が手作りのお店で雰囲気とかも少し敷居が高い。

『これはボードウェンの皆様!いらっしゃいませ!』

沢山輸入したお陰でとてもフレンドリーになっていた。


『こんにちは。笛を見せて欲しいです。』

エミリアもしっかりプラゲ語で話せている。

龍笛りゅうてき、神楽笛、篠笛しのぶえ、能管。

『あれ?これは?』

『これは高麗笛こまぶえです。』


「吹いてみたいです。あっ違った。」

『吹いてみたいです。』

と頑張ってプラゲ語で。


相変わらずエミリアの笛の腕は良い。店の主人もこれほど吹ける人はなかなか居ませんと褒めている。


「音が高いんですね。これも買います。」

エミリアは全部大人買い。しっかりとブルーさんの分のお土産も購入していた。


私達もその他の楽器も鼓や笙も購入。


買い物を堪能し城へ戻る。

そして帰ったら晩餐会だ。

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