第337話お泊まり

マッケンジー家の風呂って。

「銭湯っぽい!!」

わー。何か嬉しくなる。脱衣場にある棚とか籠とか。

王家と同じ感じの数名用の風呂と普通の風呂とあるらしいマッケンジー家。


数名用の風呂が銭湯。家族風呂っぽい。

家建てる時にこう言う造りにしちゃったんだろうな。


良い湯だった。

風呂上がりに廊下に出るとルナリーが待っていた。

「あのさあ。会長。これ。」

そっと何かを渡された。ん?何これ?


「ほら。えーとそのアレだよアレ。」

・・・。

「あったんだ?え?ボードウェンには無いよ!」

実はクライスと付き合う事になってちょっと探した。


「パルドデア国にはあったらしくてグレンさんが買ってくれたんだ。私達もまだ学生だからな。」

「いや!しないし!でっ・・でも貰う。」


まあ、そのうち?使うだろ?とルナリーは照れながらじゃあ私も風呂入る!とバタバタと走って行った。


流石、先進国パルドデア。ゴムあったんだな。そのうち。使う事にしよ・・・。


リビングルームに戻ると部屋に案内するよとルイスが言ってくれた。

「ありがとう。」

「お泊まり楽しみだね!」

クライス嬉しそうだなあ。勿論、僕も。


2階の客間。

ベッドは2つ。

「え?ルイスは?」

「俺?ルナリーと寝るし。」

とあっけらかんと答えられた。絶対、解ってないタイプだ。2人っきり・・。


「おやすみー!また明日な!」

ルイスはニコっと笑って僕らを置いて行く。

ルイスの部屋は少し離れてはいるが・・ってそう言うの考えてはダメだって!!


「会長?」

「あっ。ごめん。部屋に入ろうか。」


客間はどの家も似たような造りでツインルームはホテルとかよりも広い。

ソファもテーブルもあるしクローゼットもしっかりある。

って・・もうそんな事を考えて脳内を落ち着かせるのに必死な僕。


「ケビン。少し話さない?」

クライスがソファに座った。


「うん。」

ドキドキしながらクライスの隣に腰掛ける。


「イチャイチャしても良い?」

やっぱりそうなるよな。

したい・・・もんね。

「うん。」


そう答えるとクライスがそっと距離を詰め寄る。ち・・・近い。

優しく手に触れられる。

ピクッとそれだけで身体が反応してしまった。


「結構、ドキドキするね。」

クライスは頬を赤らめて僕の手を握る。

恋人繋ぎだぁ・・・。


「うん。かなり。」

僕の顔も赤くなっているのが解る。


何、話したら良いんだ?頭が回らない。


エッチな事しか思い浮かばなーい!!


でも!僕は残念ながら途中経過をどうしたら良いのか・・・知らない。

普通に何もしないで入れたら痛いよね?

絶対それは間違いだ。


落ち着け・・・ケビン。


「会長の前世ってどんな人だったの?」

クライスが話をしてきて漸く妄想が落ち着いた。


「中学から高校までは女子校だったよ。それから大学に行って就職した。本当に普通の庶民だったんだ。」

想像つかないでしょ?と笑う。


「可愛かった?」

「それはー?普通じゃないか?」

全くモテない訳ではないがモテモテでは無かったし。


昔の話をこんなにしたのは初めてかも。

恋愛話は敢えて避けたけど。


「労働し過ぎたんだよね。何故かその時は働かないと。自分がやらないとって。社畜ってそんなものなんだよ。」

クライスは難しそうな顔で頷く。


「ケビンは今もそう言うところあるから。1人で何でも背負っちゃダメだよ。」

僕の顔を見詰めて握っていた手を離して抱き締めてきた。


「うん。」

僕の悪い癖だ。何でも1人で背負いたがる。今もその傾向が確かにある。


「ちゃんと頼ってね。」

「ありがと。」

抱き締められた身体の温もりが心地良くて幸せを感じる。


僕はね。前世でも君に頼ってたよ?

ストレスを軽くしてくれたクライスの笑顔。クライスが居なかったらもっと早く死んでたかもね。


「クライス。好き。」

「ケビン。大好きだ。」

嬉し過ぎる。


「あの。その・・・。」

クライスが抱き締めていた腕を離してモゴモゴ言いながら下を向く。

「どうした?」


「き・・・キス・・したい。」

「うん。」

僕もしたいと思ってた。


肩をガシッと掴まれた。クライスは僕を見詰めて固まる。

少し掴んだ手も震えていて緊張が伝わる。


そう言う僕も緊張しているけれど。


そっと目を閉じる。


クライスの顔が近づいてくるのが解る。


ふっと息が唇にかかった。


そのキスは優しくて優しくて


唇に触れただけのキスだった。


キスが終わってクライスと見詰め合う。

こんなに満たされたキスは前世も含めて初めてだ・・・。


クライスの目に薄ら涙が浮かんでいて僕も気付かなかっただけで涙が出てた。

「ごめん。嬉しくて。」

「うん。僕も。」

あぁ。幸せ・・・。


もう一度、僕らは抱き締めあった。

「寝ようか。」

「そうだね。明日も練習あるしね。」


勿論、お互い別々のベッドに入る。


「おやすみケビン。」

「うん。おやすみクライス。」

電気を消して就寝。


ファーストキス・・・。まさかのマッケンジー家でか。

自分の唇にそっと触れた。

思い出しただけでドキドキする。


僕らはまだ先には進めそうにない。

心臓がもたないよ・・・。もう少し落ち着いてからだな。


そんな大人の階段を登る事を考えていたらいつの間にか眠りについていた。

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