第338話閑話 ジェファーソン様からの電話

朝食を終えて自室に籠り食後の珈琲を嗜みながらレコードに針を落とす。

勿論、ノネット・クライムのレコードだ。


これが誰にも邪魔されたくない私の日課となっている。

至福の時・・・。


やはりカイン様の声は素晴らしいな。コンサートが思い出される。

あぁ。またコンサートに行きたい。

普通に交流会でも良い。

ノネットの皆様にお会いしたいな。



トントントントン!

「煩い!邪魔するな!!後にしろ!」

従者が部屋をノックする音に苛立つ。

全く、邪魔するなとあれ程言っているのに。


「あの・・・。アルマーニ様。お電話です。」

「・・・。」

誰だ?後でかけ直すかな。


「ボードウェン国のジェファーソン様からお電話で御座います。」


え?!大慌てで立ち上がりドアを開けた。


「すまない。それは一大事だったな!」

従者に謝る等、昔は無かったなあと思う。

しかし、ジェファーソン様の電話を無視せずに取り次いだ従者は褒めるに値する。



しかし、気持ちが通じているのだろうか。まさかジェファーソン様からお電話とは。何だろう。

まあ、何の話でも世間話でも嬉しい限りだ。


走ったので息を整えて。うっうん。

「もしもし。お待たせしました。アルマーニです。」


「突然、朝からすみません。ジェファーソンです。お久しぶりです。」

朝から良い声だ。


「お久しぶりです。この前のコンサートはありがとうございました。」

今日は本当にツイてるなあ。城に居て良かった。


「こちらこそありがとうございました。あの、ラジオの件でプラゲ国に行かれますよね?」

とジェファーソン様が聞いてきた。

あー。プラゲ国にラジオの良さはボードウェン国に問い合わせてみても良いと話た記憶がある。


「はい。輸入でプラゲ国に参ります。問い合わせがありましたか?」

ジェファーソン様は説明までしてくれたと言う。素晴らしい語学力だ。


「え?今、何と仰いました?」

聞き間違いしたかな?


「あの、宜しければ僕達もプラゲ国で公演の予定がありまして。もし良ければプラゲ公演に来られないかと思いまして。」


「・・・。えーーーー!!!行きます!行きます!!」

しまった。また大騒ぎしてしまった。取り乱し過ぎた。


聞くとルイス様とルナリー様の婚礼衣装を購入ついでにプラゲ国でミニコンサートをするそうだ。


「目出度いですね。ルイス様とルナリー様の婚礼衣装はプラゲ国の民族衣装でしたか。ドレスとまた違って美しいですものね。」

ルイス様もルナリー様も似合うだろうなあ。想像するとうっとりする。


ほほう。コンサートはプラゲ語で。それは凄い。言葉は解らなくても勿論聞きに行く事は確定だ。


「それで、後、図々しいのですが良かったらラジオ輸入の通訳をしたいのですが。ルイスにルナリー、キャサリン、ケビンが非常にプラゲ国語が堪能なんですよ。」


ジェファーソン様達が通訳?!!


「え?!そんな。恐れ多い。でも、非常に嬉しいです。」

御一緒に外交もとか!!!何だろうこれは神様のご褒美?


「宜しくお願いします。」

本当に是非是非!


「良かったです。ラジオの良さを頑張って伝えますね!」

可愛いです。そんな頑張るだなんて。

ノネットの皆様と夢の外交か。めちゃくちゃやる気出てきた。


「ちょっと待ってくださいね。」

ジェファーソン様がそう言った。

ん?何だ?


「もしもし。カインです。」

耳元に低音ボイスが・・・


「カインさまぁー!!!」

また叫んでしまった。

「お久しぶりです。カイン様。本当にこの前のコンサートは素晴らしかったです。実は今さっきもレコードを聞いていたんですよ。」

あ・・・。喋り過ぎた。


「ありがとうございます。そう言って頂けて光栄です。僕、プラゲ語で昴を歌います。楽しみにしていてくださいね。」


カイン様・・・。今から感動で涙が出そうですよ。


「楽しみ!!にしてます!!」


その後は当日のスケジュール等を共有して電話を切った。

まだずっと喋りたかったが流石にご迷惑になるだろうし。


プラゲ国行きは正直、ラジオを売る以外のメリットは何も無い外交だったのだが・・・。


テンションが上がりまくって来た。

顔が綻ぶなあ。


「どうしました?また叫んでましたね?」

げっ・・・。デイビスに聞かれていたか。


「んー。ジェファーソン様からの電話でな。」

ふふふ。羨ましいだろう?

「何時も兄上ばかり狡いですよ!で?何の話だったんですか?」


仕方ない。教えてやるか。


「私も行きます!」

デイビスは即答した。そう言うと思ってたよ。

「アンドレは置いていくか?留守番。」

「流石に3人で外交は国に迷惑かけますし。アンドレ兄様も忙しいですからね。」

2人してニヤリと笑う。


国の仕事は兄に任せて2人でプラゲ国へ外交決定。


「何、着ていきますか?兄上。」

「悩むな。やはり正装も用意すべきだろうか?」

手土産等プラゲ国に持っていった事も無いが。ここは格好付けるべきだろう。

これも用意せねばならないな。


2人で兄上には申し訳ない(全然そうは思っていないが)と言いつつ楽しく旅支度を始めた。


間もなくプラゲ国行き外交だ。

いや、ノネット・クライムのプラゲ国公演だな。

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