第315話新生徒会長

修学旅行から帰ってきて数日後。


学校に行くと生徒会長選挙立候補者が貼り出してあった。


しかも投票日は今日だし。




「おお。パトリック!」


ルイスと2人で掲示板を見ているとクライスとカインも寄ってきた。




「そうそう。パトリック出るんだよね。」


カインが頷く。後は2年生2人の3人で争うのか。


「どうする?」


ルイスが聞いてくる。


「扇風機貰ったしなあ。」


クライスが呟いた。そうだった。これからも色々貰える可能性あるしもしも遠征になった場合はパトリックなら黙らせる事は可能か。




「パトリックにしとくか。マッケンジー家も恩恵あるし。」


うんうん。


「しかし、全然誰が立候補とか見てなかったよ。」


「3年ってそんなもんだろ。」


そんな話をしていたら王子にキャサリンが登校してきた。




「あら?生徒会長選挙ね。わー。パトリック。」


「キャサリン知らなかったんですか?」


王子は知っていたようでキャサリンは苦笑しながら知らなかったわと言っている。




「やっぱりパトリックが無難ですかね?」


王子も同じ考えな様で何かあったら使える人材を考えている様だ。


「そうよね。何かあったらパトリックも仲間と言えばそうだしね。」


当選するかしないかは別として私達はパトリックへの投票へ決めた。




生徒会長選挙は午後からだった。




カインの時のような選挙演説中の盛り上がりは流石に無い。


2年生も無難な演説をしている。




そしてパトリックの演説だ。


おっ。拍手が多い。


「姐さん、夏休みの宿題で曲作ってあげたでしょ?」


クライスがボソボソと聞いてくる。


「あー。そう言えば。私の宿題の見返りに。」




「めちゃくちゃ今、1年声楽科で人気出たらしいですよー。」


なるほど。宇宙戦艦ヤマトがそんなにウケたのか。そりゃ良かった。




パトリックの演説が始まった。


「パトリック・ガードナーと申します。」


パトリックもまあ普通の演説だなあ。虐めを無くすとかそんな感じ。


しかし最後に爆弾発言をした。


「僕が生徒会長になったら3月で卒業されてしまうノネット・クライムのメンバーを来年の文化祭に呼びます!!」


と言い切った。


会場は拍手喝采。凄い歓声だ。




「わー。まじかー。」


「聞いてます?」


「聞いてないけど後でお願いされるパターンだな。」




全く、調子が良い奴だ。でもなあ、大司教さんの前世弟さんだしマッケンジー家が今後の発明でお世話になるからなあ。






そしてパトリックが圧倒的大差で生徒会長になった。


そりゃそーだ。




放課後。




「ごめんなさい。」


レッスンルームの扉越しにパトリックの声が聞こえた。




私達は顔を見合わせて笑う。


「入りなよ。」


王子がクスクス笑いながらパトリックを迎え入れる。




「本当に申し訳ございませんでした!!」


パトリックが珍しく大きな声でハキハキと頭を下げて謝った。




「予想はしてなかったけど。」


「お世話になったこの学校に今後も恩返しするのは賛成!」


「うん。本当にそうですね!」


皆、それぞれ学校には思い入れがある。


このレッスンルームも3年間借りっぱなしだし。我儘も沢山やってきた。




「ありがとうございます!」


パトリックは又、頭を下げた。




「まあ、良い学校にしてくれよ。」


「うん。頼むね。」


会長とカインがパトリックに微笑む。




「はい!もし遠征があったらノネットメンバーが困るからと兄ちゃん!いや、大司教様に言われて生徒会長になる事に決めたんです!頑張ります!」




私達は顔を見合わせる。プッ!王子が吹き出して笑い出す。


「大司教様か。あはは。良かったですねカイン!」




「大司教様か。はぁ。後でお礼言っとくよ。」


カイン1人大きな溜息をついた。




大司教さんの策略だったのか。何か納得。




「あっそれと!ラジオを小型化しました。」


早速、発明か。




「だいたい半分くらいの大きさと値段になると思います。」


それは売りやすくなる。


「もう少し部品とか解ると良いんだけど。ラジオ分解経験が無くて。悩み中です。」


と言った。まだ1台だけ試しに作っただけらしく改良の余地はあるらしい。




「パルドデア国と今、国交が凄く良い関係なのでちょっと待って下さいね。」


王子が少し申し訳無さそうにパトリックに謝った。




「いえいえ。趣味みたいなものなので。」


ラジオより他の家電を先に考えようかなあ。と独り言を言っている。




色々国交等を考えると難しいんだなあ。




「では、僕はこの辺で失礼します。」


パトリックははにかむ様な笑顔でペコっと頭を下げた。




「またねー!」


「あっ来週、仕事の引き続きやるから!」


カインがそう言うと嬉しそうに了解ですと言ってレッスンルームから出て行った。




「まあ、卒業まで何処の外交もしなさそうなんですけどね。」


「カインの為に念の為だよね。」


皆、生暖かい目でカインを見詰める。




「くぅ。ぐうの音も出ないー。でも、知らない奴よりまし!」


カインが開き直った様に胸を張るので笑ってしまった。


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