第311話そして家族がひとつになる

アーシェンバードは200年前はアーシェン国とバードエン国と言う隣接国だった。その後統一。


統一後、100年くらい前まで《アーシェン領》と《バードエン領》に分かれていた。2つの領土でアーシェンバードと言う国だった。それをアーシェン領の曽祖父が完全に統一して今の国の形態になった。



しかし統一後もアーシェン出身、バードエン出身と言った感じで結婚や就職等は少々お互いの領土の意識が強く互いの出身に対して厳しかったそうだ。



そこで思い切ったのが王様とお后様。


王家はアーシェン領で固めて居た中にバードエン出身のお后様を迎えた。


「父には猛反対されたけれど。本当にこの国を纏めるには何処出身等と気にする事を止めさせたかった。」


「勿論、私達は恋愛結婚ですよ。」


王様とお后様は微笑まれる。



「確かに今はアーシェン出身、バードエン出身って言うのは全然、聞かない。」


皇太子は頷いた。


「でも、何故?お母様が謝られるんですか?」


皇太子はもうここまで来たらと聞きに入る。



「子供の頃ダミアンに厳しくしたり冷たくしていたのは私方の従者達。即ちバードエン出身の者たちなんですよ。」


そう本当に辛そうな顔で仰った。


「貴方はおじい様を初めとしたアーシェン王族の顔立ちなの。私は大好きなんだけれど。従者達はそういう訳には行かなかったの。」



「私にも責任がある。マリアの両親にマリアを妻にする時の条件としてマリア付きの従者を数十名、城に入れる事。地位も与える事を言われてそうした。」


王様もお后様も再び皇太子に謝った。


皇太子に厳しく接している場面を見た時は陰で注意はしていたらしい。


剣技や勉強の指南役は地位を与えたバードエン出身従者が多いらしくある意味酷い話だ。




「なるほど。と言うことは未だに城の中ではアーシェン出身者とバードエン出身者とで争っているんですね?」


王子が尋ねると王様は少しねと頷いた。




「ダミアン君に冷たいバードエン出身従者、ヨーゼフ君に甘いバードエン出身従者か。で、その従者の地位がそこそこあるのか。」


会長も呟くように内情を整理している。



どうにか出来なかったんだろうか?ちょっと腹が立つ。


「王様とお后様と皇太子さんは何故会話しなくなったんですか?皇太子さん結構、悩んでいたし。」


素朴な疑問だが素直に尋ねてみる。



「ルナリー。ちょっと君達の思っている事と違うんだ。そう言う僕も今、何故か解ったんだけれどもね。」



「従者達は厳しく接している行為は極力、両親に見られない様にしていたし。僕は従者達に陰でダミアン様は御両親に愛されていないと言われ続けていた。それで、両親と会話が出来なくなったんだよ。」




皇太子は弟が産まれてから何処出身の従者とは解らずに音楽の稽古や剣技、勉強まで見て貰っていたそうだ。その時にジワジワと洗脳の様に思い込まされてきたと言う話。




「なんだよ?!それ酷くねーか?!」


キレ気味の私をキャサリンが落ち着きなさいと肩を叩く。




皇太子の話を聞いたお后様はポロポロと涙を零される。王様の目にもうるうると涙が。


「私達は何て事を・・・・。」


「知らなかったとは言え本当に辛い思いをさせたね。」


王様とお后様2人で皇太子をしっかりと抱き締めた。皇太子も泣いている。




拗れて縺れて絡まりまくった糸が解けた瞬間。




普通に2人とも愛されていたんだ。そしてこの国の事情も。大司教さんやグレンさんの聞いた話をしたのはバードエン出身者だったんだろう。




「何それ許せないです!お兄様に酷すぎる!」


反抗期に入ったばかりのヨーゼフ君の怒りが収まらない。




「ヨーゼフ。理由が解ったら今後どうとでも対処出来るさ。」


皇太子は優しく微笑んだ。エリザベスさんは横でウルウルとしながらダミアンの手を取った。


「私がダミアン様をお守りします!!」


と宣言した。




「しかし、他国の者が口を出すのは失礼ですがダミアン、本当に拗れていましたからねぇ。少し従者に厳しく出来ないんですか?」


王子は王様とお后様に訴える。


「すまない。ジェファーソン。僕もこの拗れた12年を返して欲しいくらいだと思っているよ。でも、折角国を纏めようとお父様、お母様が考えた結婚だ。今が耐える時だと思う。」


皇太子の顔が凛々しい。




「折角だから歌で丸く収めましょうよ!」


キャサリンがニッコリと笑った。


「そっか。良い前例がありましたねー!」


クライスがニヤリと笑う。


皆も頷く。パルドデア国の王家の兄弟仲や夫婦仲も良くなったんだから。可能性はある!




王子が鞄から徐にレコードを2枚出す。持ち歩いているのか。王子が1番商魂魂があるな。


「僕らのレコードです!城中に響くようにかけて下さい!お勧めですよ。」




「1枚は持っているよ。確かに君らの歌は心に響くからなあ。今迄は部屋で聞いていたけど。皆に聞かせるのは良いかもしれない。」


皇太子は笑顔で2枚とも受け取った。






その後、晩御飯代わりにお菓子をたらふく食べてホテルへ帰る事にした。


王様もお后様も皇太子もヨーゼフ君も本当に幸せそうで本音で話せる家族になった様だった。




城の中のいざこざも解決してくれる事を心から願う。

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