第307話美少年コンテスト

控え室に通された。


美少年コンテスト出場者は僕を入れて5人か。


アウェイ感が凄い。誰だ?って言う不信そうな視線。勿論、飛び入り参加は僕だけだ。視線が痛い。


僕17歳!!全く12歳如きに睨まれたく無い。




金髪碧眼って言っていたからあれがヨーゼフ王子か。やっぱりダミアン皇太子が拗ねるのが解る綺麗な顔立ちしている。僕の顔をチラリと見てそっぽを向いてしまった。やっぱり嫌な感じ。




あっ。チェロ無いな。音楽発表はやっぱりピアノかな。何弾こう。弾き語りにしようかな。それだけは楽しみだ。




男性教師が控え室に入って来てコンテストの説明を始めた。


自己紹介にウォーキング?プリントにそう書いてある。舞台の造りが不思議な形。この中央まで歩くのか。


その後に音楽発表をすると。まあ、いいか。僕はちょっとだけリリーさんの敵討ちみたいなもんだし。皆は勝てるとか言うけれど無理っぽいよ。焦らせることが出来たら良いかなくらいで頑張ろう。




コンテストが始まった。


舞台袖から眺める。




「エントリーNo.1。パーシー・ジョンソン!」


会場にはクラシック音楽が流れ拍手が起こる。自己紹介後にウォーキングはなるほど。その後、パーシー君はピアノを披露していた。子犬のワルツ。可愛い。




やっぱりヨーゼフ王子以外は盛り上がらないのかな。3番手まで拍手は起こるけど昨日の劇みたいな歓声は聞こえない。


次は王子でラストは僕か。出にくいなー。エントリー順なんだろうけど。




「エントリーNo.4!ヨーゼフ・アーシェンバード!」


キャー!!!悲鳴の様な歓声が聞こえる。


うっわー。ちょっと本当にこの後にやりにくいー!




「やあ、可愛いレディ達!ヨーゼフ・アーシェンバードです。」


ヨーゼフ様!ヨーゼフ様!カッコいー!!




少年じゃないけどクライスか会長が出た方が良かったかもー。




ウォーキング中も拍手と声援。音楽発表は彼もピアノだった。


別れの曲か。この国ではショパン流行っているのかな。




ピアノ高難度弾いても良いんだけど。

大人気無いよなあ?何だかブツブツ考えているうちに順番になってしまった。



「エントリーNo.5は何と飛び入り参加です!ジョージ・アンダーソン!」


会場が誰?っとザワつく。出にくい・・・。


でも、僕もノネットメンバーだからね?さあ、楽しもう!



舞台の中央へ歩く。笑顔を向ける。


うーん?無反応?


「初めまして。ジョージ・アンダーソンです。ボードウェン国から修学旅行で来ました。アーシェンバード国は良い国ですね。」


ニッコリ笑顔。



そして。拍手が巻き起こった。


ランウェイを歩く歓声が聞こえる。


ジョージ様!ジョージ様!ジョージ様!!



良かった。やっぱり海外からの客には親切なんだなあ。それに歓声があると燃える!!


「ジョージ様!カッコいいわよー!!」


「ジョージ様!いけいけー!」


キャサリンとルナリーの声に笑いそうになった。



舞台中央へ戻って一礼。拍手喝采が起こる。うん。やっぱり外国人に優しい良い国だ。これは何としてでもヨーゼフ王子を改心させたい。



「音楽発表なんですがオリジナル曲を披露しますね。」


そう言ってピアノへ座る。マイクの位置をちょっと口元までずらしてっと。難易度的には全然難しくないんだけど僕としては名曲。



「聞いてください。愛は勝つ。」


この前奏も好き。



ソロで歌うのは初だけど。



うん。バッチリだ。



立ち上がって一礼して会場を見渡す。あっ。泣かせちゃってる。


ブラボー!!!大きな叫び声が聞こえたかと思うと一斉にスタンディングオベーションで拍手喝采を受けた。



凄く気持ち良いー!


ソロ曲ってこんな感じなんだなあ。いいなあ。




「アンコール!!」


ジェファーソンとクライスとルイスの声かな?流石に無茶だよ?


でもその声に合わせる様に会場中にアンコールが巻き起こった。


アンコール!アンコール!アンコール!



困った。何歌おう。アンコールに応えてこそのプロだよね。



「じゃあ1曲だけだよ?」


ウインクしてピアノに座る。



「聞いてください。世界に一つだけの花。」


結局歌いやすい2曲を披露する事になってしまった。



そして歌い終わりにまた拍手喝采と歓声が鳴り止まない。



「ありがとうございました!」


お辞儀をして後ろに下がる。



ヨーゼフ王子の顔色が悪い。


しまったなぁ。ちょっとやり過ぎた。

ついコンサートのノリでやってしまった僕。

何か舞台に上がるとテンション上がるんだよねぇ。


一旦、舞台袖へ戻る。気まずい・・・。



「アーシェンバード学院美少年コンテスト結果発表!!」


会場は拍手に包まれる。




「第3位・・・」


「第2位!エントリーNo.4 ヨーゼフ・アーシェンバード君!」


げげげ!!もしかして!


「優勝はエントリーNo.5!飛び入り参加のジョージ・アンダーソン君!!」


しまった。やってしまった・・・。




わっ!!と歓声と拍手が起き再び舞台へ上がる。



物凄く機嫌の悪い顔のヨーゼフ王子。


苦笑いの僕。


優勝の可愛いメダルを首から掛けてもらった。



一通り挨拶をして美少年コンテストは終了した。




終わった瞬間だった。




「何で!僕が2位なんだよ!可笑しいじゃないか!!」


ヨーゼフ王子がキレだした。




「飛び入り参加が優勝?こんなに人気者の僕が2位?」


会場はザワザワとして教師達もオロオロしていた。




「止めないか!ヨーゼフ!!」


ざわめきから一際大きい声が聞こえた。立ち上がったのはダミアン皇太子だ。




ダミアン様だ。皇太子様だわ良かった。


そんな声がチラホラと聞こえる。ヨーゼフ王子はダミアン皇太子を見て口を噤んだ。




ダミアン皇太子は後方の席から降りてきて舞台に上がってきてヨーゼフ王子の手を掴む。


「ヨーゼフ!!行くぞ!恥をかかせるな!」


舞台からヨーゼフ王子を引っ張って客席の出口から連れ出した。


その後をエリザベス様や皆も着いて行く。




「後は何とかしますから。大丈夫ですよ!」


教師に一声かけて僕も皆の元へ。


会場は騒然としていたが安堵の声も聞こえた。

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