第277話コンサートゲネプロ

コンサートは明日。お昼の放送は国立管弦楽団にお願いして前日入り。朝からパルドデア国へ飛ぶ事になった。


空港へはデイビス王子と警護人が迎えに来てくれていてバスまで用意してくれていた。


「コンサートはパルドデアシティホールです。国立ホールよりは小さいですが利用者も多くて人気があるんですよ。」


バスの中でデイビス王子がそう言っていた。




さて。パルドデアシティホールへやって参りました!!




正直言う。ボードウェン国の音楽ホールが現代風で優れているだけでこの時代背景通りと言った音楽ホールだ。


人気あるの?外観のイメージは昭和の地方の市民会館と言った感じかなあ。


中に入ってもやはりロビーも、うーん?広くないなあ。




取り敢えず皆、ホールの外観等については触れずに客席を見ることにした。




映画館的な作りは同じか。ちょっと座席間隔が狭いかな。


でもホール内は広いし2階席もあるし1500人収容ってのは間違い無いな。


「デイビス王子。チケットはどのくらいの期間で売れました?」


会長が聞くとデイビス王子はふふふっと笑って




「3日で完売!!」


と言った。


「えーーー?!!」


ちょっと信じられない。ボードウェン国は2階席がなかなか売れなかったのに?!




「本当に?ですよね?」


王子を始め私達はちょっとその辺疑り深い。




「本当ですよ。ラジオ放送でレコード毎日かけてたらファンが我が国にも出来たみたいですねぇ。」


デイビス王子は微笑む。


「そう言う私も!!ファンになりました!」


王子の手をガシッと掴んで嬉しそうに無理矢理握手していた。


王子はちょっと照れながらありがとうございますとお礼を言っていた。




「何かちょっと安心しました。」


会長が嬉しそうにさあ!ゲネプロしますよ!と意気込む。




音響担当、チケット回収担当、警備担当の警護人、使用人、私設兵も中へ入り当日の役割確認に入った。


彼等も慣れたものだ。




「聞きたくてたまらないのですが!!明日の楽しみに取っておきます!」


デイビス王子は明日のコンサートは来られるらしく本当に聞きたくて仕方なさそう。


「我慢、我慢!」


と自分に暗示をかける様に呟きながら先に城へ戻ります!と言って出ていかれた。




「さてと。しかし、このホールは・・・。ボードウェンと比べちゃダメですねー。」


王子が腕組みしながらうーん?と首を捻る。


「ちょっと古いですものね。」


キャサリンも頷く。




「音楽ホールにお金をかけていないんでしょうね。」


カインの意見に皆、納得する。




しかし、この後ゲネプロを始めると音響機器等がうちの国より最新で遥かに凄いと言う事が解った。




「マイクが凄く良い。」


「このスピーカーもだ。」




やっぱり機械系はパルドデア国が凄い。




反響板も良いな。技術国なんだなあ。




「私達の良さは100パーセント出せそうね!!」


この音響は本当に気に入った。




使用人達との打ち合わせもしっかり済ませて城へ行きますか。と言う事になった。




「明日は本番なので早く寝ると言う感じでお願いします!」


王子が酔っ払い王子に絡まれたく無いのか私達に念を押す。




「勿論、食後は皆で部屋に集合しよう。」


それも了解。




一応絡まれる覚悟はしてパルドデア城へ向かった。




パルドデア城は今日もメルヘンだ。やっぱり可愛い。



「ようこそいらっしゃいませ。」


デイビス王子が迎えてくれた。



「明日に備えて今夜は食後は早めに退席しても大丈夫ですか?」


王子がこっそり聞いている。デイビス王子は勿論ですよと言いながら一先ず部屋でお寛ぎ下さいと寝室へ案内してくれた。




「本当に皆さんと同じ部屋で良いのですか?」


王子はその方が楽しいので!と嬉しそうに今回は皆と一緒の部屋だ。




部屋割りは王子、ルイス、カイン。会長、クライス、ジョージ。


そして女子。


部屋に入るとエミリアが


「会長って本当に男性と同じお部屋で良いんですかねー?」


とふと聞いてきた。


「うーん。大丈夫だろ。私達と同じ部屋ってのも見た目可笑しいしなあ。」


そうなのよねぇとキャサリンも頷く。




食事時間まで部屋で寛ぎ今日はそのまま制服で夕食が用意された客間へ向かった。




今回は外交と言う訳では無いので有難い事に王や王妃、アンドレ王子もアルマーニ王子も挨拶に来られただけだった。



王子への挨拶を見ていて少しだけアルマーニ王子が優しくなった気がした。レコード売れたからかもしれない。



「ゆっくり寛いで明日は頑張って下さいね。」


とアンドレ王子が声をかけていた。この長男は普通に優しい。




泊まらせて頂くお礼を述べて私達だけで楽しく晩御飯タイム。




「やはり肉ですね。」


王子がボソリと呟く。別に私達も肉は好きなのだけれども。


今日はヒレステーキだった。この前のより好き。ソースはオーソドックスなステーキソースだ。


スープにパンにサラダと。前世のレストランのステーキセットの様なメニューだった。


料理もやっぱりボードウェン国の勝ちだなと思う。




パルドデアの使用人の方々が居るので特に晩御飯の話はせずに明日のコンサートの話など当たり障りの無い話をした。




食事が終わった頃にデイビス王子がやって来て


「明日、凄く楽しみです。後・・・。明日、面白いものが見れるかも知れません。まだ内緒です。」


と秘密を楽しむかの様にニッコリと微笑まれる。




「内緒なんですか?」


「ええ。お楽しみにです。」


そう言ってまた明日と客間を出られた。




何だろ?まあ、お楽しみなんだろうな。




「今日は普通に寝ますか。」


王子もストレス溜まってないらしい。明日に備えてゆっくり休む事になった。

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