第263話第1回前世対談
練習に全然身が入らない。
新曲も思いつかないし。いや、曲をこれ以上作るのが怖くなって来た。
ルイスと会長にはそっと一大事なので教会集合と伝える。
キャサリンは心ここに在らず。
「今日はキャサリンもルナリーも体調悪いのかな?早めに帰りましょうか?」
エミリアが心配してくれる。
「そうですね。朝晩の気温差あるし風邪かな?大丈夫?」
王子はキャサリンを心配しているがキャサリンは苦笑い。
「今日は解散しましょう。次回のレコード案は明日にでも。」
会長がそう言うので何時もより1時間程早く学校を出られる事になった。
王子は学校を出るまでキャサリンに付きっきりで今は逆にキャサリンはその対応が辛いんじゃないかと思えてくる。
ルイスが単車に乗る前にどうした?と聞いてきた。
「運転に支障をきたすから教会で話すよ。」
そう言うと解ったと言って教会まで走る。
念の為後をつけられていないか確認。大丈夫だな。
万が一の事があっても教会へは定期的に行っているから何とか誤魔化せるだろうし。
教会へ着くと大司教さんが出てきた。
「あら?皆さんお揃いで。曲悩んでるんですか?」
そう言って来たので
「一大事。取り敢えず人に聞かれない場所で話をしたい。」
そう言った。大司教さんは一瞬首を傾げたが此方の様子を察して部屋へ案内してくれた。
会長とキャサリンも集まり第1回前世対談開始。
「ガードナー家の長男が転生者だった。」
開口一番に皆の目が大きく見開く。
「また?転生者?それで?」
「・・・。ノネットの皆にバラすって。言ってる。」
そう言った瞬間、キャサリンが今まで我慢していた涙が頬をつたう。
「パトリックは王子と婚約破棄して自分と結婚しろって言いやがった!」
私は唇を噛み締める。
「待て!ルナリーにキャサリンもっと詳しく!」
会長は冷静に場を収めようと言葉をかける。
私とキャサリンは今日の放課後の話を詳しく3人に話した。
「なるほど。キャサリンとルナリーは確定されているのか。ルイスも疑われていると。バレていないのは僕と大司教様。」
「ガードナー家か。あそこの家は厄介だな。」
1年の時もそうだったがルイスもガードナー家の事になると躊躇する。財閥のランクは解らないがトップって事か。。
「ルナリーさん。ガードナー家は財政界のドンだと思って良いですよ。参りましたね。パトリック様か。」
大司教さんも頭を抱える。
「ガードナー家とフラーム家が繋がったら確かに世界進出する大企業が出来る。ましてや前世の記憶があるならこの国が経済大国になるのも可能だろうね。」
会長は眉間に皺を寄せて目をつぶった。
「そいつ前世では何もんだったんだろうな?」
ルイスの質問にそれは聞いていないと答える。
「もし、皆さんの前世の話したらどう言う反応するでしょうね?」
大司教さんが悲しそうな顔をした。
「解らない。信じられなかったら変な奴。信じて貰えても今までと同じ扱いはされないかな。」
会長は目を開けて苦笑した。
「私達の曲作りってチートですもんね。」
「軽蔑されるだろうなあ。」
「オリジナルじゃないもんな。」
「そうなる可能性大。」
4人揃って大きな溜息。
「ゲームの世界って言うのも話したらショックでしょうしね。」
大司教さんが言う。
「それは信じて貰えなさそうですけどね。」
会長はルナリーやルイスにも通じない2000年代日本の世界は理解されないだろうと言った。
「嫌だ。嫌われたくない。ジェファーソンとずっと一緒に居たい。なんで!なんで!ねえ?なんでよ!!」
キャサリンが机を叩いて狂ったように泣き崩れた。
「落ち着けキャサリン!!私が殺るから!ルイス、すまん!私、奴を殺してくる!」
動揺した私に会長の平手打ちが飛んだ。
「ルナリー!!落ち着くのはあんたもだ!!」
「それと!ルイスも!間違っても殺人事件とか起こすなよ!」
会長は必死で私達へ訴える。
「考えよう。」
「考えるって言っても2択でしょ?会長やルイスは黙っていても良いから。これは私達の問題!」
キャサリンは会長を睨みつける。
「言うか言わないかの2択なのよ?」
私も同じ立場だったらと思うと苦しい。お互いに愛し合っている相手と結ばれない事程辛い事なんてない。
「バカ!バラす時は一緒にだよ!全く、全然落ち着いていない。」
会長はキャサリンを宥めながら溜息をついた。
「皆さん。パトリック様の話を1から考えてみたのですが。彼はアリラブの事を知らないのでは?」
大司教さんが多分と言う顔をしてこちらを見た。
「先ずアリラブを知っていたらルナリーが主役と言う事やキャサリンが悪役令嬢と言う事を知っているでしょう?」
私達は大きく頷く。
「冷静に考えるとね?昔、この世界の話をケビン君としましたよね?ルナリーさんが攻略対象者と付き合っていない事をケビン君は不思議がっていましたよね?」
会長はうんうんと頷く。
「ルイス君とエミリアさんはモブ?ですね?そこの突っ込みも無い。そして勿論、パトリック様もモブだ。大司教もね?」
ルイスが確かにと頷く。
「主役のルナリーさんと悪役令嬢キャサリンさん仲良しですよねー!」
それを聞いてキャサリンが口を開いた。
「知っていたら曲じゃなくて私達の性格で気がつくって事か。」
大司教さんは頷いた。
「2択だけど話しても良い方向に転ぶ選択かもしれません。」
私達は首を傾げた。
「前世の話ってしたら楽になりますよ。ゲームって話をせずに例えば前世4人はプラゲ国民だったって話すとか?」
「未来から何故かこの時代に生まれたって設定にしたらもっと楽になりますかね?」
大司教さんの言いたい事も良く解る。
「でも、嫌われたくない。」
キャサリンが苦しそうに目を閉じる。
「嫌いになりますかね?前世の記憶のある人ってテレビとかでやってて羨ましかったり面白い番組だったけど?」
そう言われると解らなくもない。
「キャサリン。パトリックに確認しよう。それとなーく!取り敢えず敵の情報を把握!!」
キャサリンは目を開けて決意したように頷いた。
「やる!確認する!!」
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