第205話会長のちょっと難しい話 Win-Win-Win

「デルソリア国、商人ベキム・タンと申します。」


やっぱりアジア系っぽい名前だな。




「事情は貴方の部下に聞きました。小麦の輸出差し止めの腹いせだそうですね。」


王子がそう言うと元締めは不満そう頷いた。




「儂はプラゲ国の使者、徳川光国じゃ。知っておるだろう?」


「はい。存じあげております。」




「主の国の貴族が人身売買を行っていた。本来は国交断絶しても可笑しくない。善処の計らいでの輸出差し止めじゃ。」


酷く不満そうな顔で頷く。納得はしていないようだ。




「私達だけでは無い。農民達が輸出を差し止めされると路頭に迷う。何故!小麦なんですか!他にも輸出している品があるのに!!」




「その意見解らなくもない。」


光国さんは大きな溜息をついた。




「やっては行けない事をやりました。申し訳ございませんでした。」


元締めは王子に頭を下げた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




うーん。このイベントって動物園デートでジェファーソンが誘拐されてその身代金をルナリーが届けに行くってイベントじゃなかったっけ?


何か身代金の受け渡し交渉とかはあったけど。あんまり面白くないイベントだしジェファーソンしか出ないから記憶が薄いなあ。




まあ、もう完全に別の話になっているし。プラゲ国が絡んだ時点でオリジナルだ。


さて、話し合い上手く行きそうに無いな。




3国がwin-winの関係にならないと。また揉めそう。戦争も誘拐も真っ平御免。ボードウェンは小麦の輸出はそれ程気にしてないし。でも、ただデルソリアに小麦輸出を譲っても農民や庶民は裕福にならない。と車の中でずっと考えていたんだが。。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「あのー。光国殿。1つ意見を良いですか?」


会長が声をかけた。


「何じゃ?ケビン殿。」


光国さんは険しい顔だったが会長には笑顔を向けた。




「小麦を精製して小麦粉にして袋詰めにして輸出して貰ったらどうですか?値は上がりますが国で売るのにも手間が省けますよ。」


光国さんが解った様な解らない様な表情を見せる。




「プラゲ国はまだ石臼ひきで精製度も低い。我々やデルソリアは結構、小麦の精製度が高いんです。精製度が高いとパンが柔らかく美味しくなりますし。ちなみに小麦粉は薄力粉、中力粉、強力粉に分けられます。うどん、パン、お菓子など分けて使うとそれぞれの味が良くなりますよ。」




「なるほど。まあ、食の文化は広がるし米が取れない時の飢饉は無くなるか。」


光国さんは面白いかもしれんなあと頷いた。




「国交断絶まで考えているんですから!そのくらい手間暇をかけて頂いたらプラゲ国にもメリットがあると思います。」


会長がニヤっと笑って


「デルソリアも妥協点として考えてはどうですか?精製する事、袋詰めをする事で雇用が増えます。そして、手間賃で小麦の価格も上げられます。」


と双方を見て言った。




デルソリアの元締めは下方を向いて頷きながら考え出した。


会長。。すげぇ。




「それで我が国なんですが!ジェファーソン!羊毛を輸出しませんか?」




「羊毛?確かに沢山取れますね。」


ジェファーソンも小麦の件でかなり感心しているように見える。




「羊毛って毛糸だよな?プラゲ国って寒いのにセーターとか無いもんなあ。」


私がそう言うと王子はそうか!!と言う顔をして光国さんに毛糸は良いですよ!とアピールし始めた。




「そして、毛糸を編んだ品を国内で消費するだけでは無くプラゲ国は輸出したらどうですか?」


会長が光国さん、王子、元締めを交互に見て笑顔で言った。




「これからは原材料では無く加工の時代になると思うんですよね。まあ、これは僕が家業の社長業を継いだらやろうかと思っていたんですが。今は歌手になる方が忙しいし楽しいので。」


僕の考えていた案を譲りますと言って締めた。




「会長、良い案ですねー。流石です!しかし、良かったんですか?こんな良いアイデア!」


王子はひたすら感心してうんうんと頷いていた。




「加工か。面白い!やります。徳川殿!どうかもう一度取引きして下さい!」


元締めは光国さんに土下座をした。この人、案外プラゲ国の事心得てるな。




「うむ。3国にメリットがある。確かにプラゲ国は寒い。しかし毛糸を編むとは?セーターとは何じゃ?教えて貰えるのかのお?」


光国さん、セーター知らなかったか。




「ルナリー。編めるだろ?色々。」


会長が私を見る。なるほど。


「何でも行けるぜー!編み方の指南は任せろ!」


編み図も作らないとな。うん。それは楽勝だ。




「取り敢えず、誘拐未遂事件の輩はどうするんだ?」


ルイスが思い出した様に言った。警察に連れていかれたままか。


「しかも、こいつ誘拐の首謀者だろ?」




「国に帰ったら裁かれるだろうなあ。」




元締めは俯いて黙り込んでしまった。



「なあ、元締めさんよー。お前の所の国ってもしかして白黒の熊、居ないか?」


グレンさんがボソリと呟いた。


「居ますよ。竹を食べる大熊猫。ジャイアントパンダと言います。」


何?!パンダだと!?


会長とローズさん、ルイス、そしてグレンさんと目があった。




「それ、うちの国に譲ってくれねーかなー?オスとメスの子供を2頭くらい。あと餌の竹も。」


グレンさんがニヤニヤと笑いながら元締めを半ば脅している。




「え!?あっ多分大丈夫だと思います。」


元締めは大きく頷く。




「王子、誘拐未遂事件は無かった事にしよう!パンダだぞ!」


「そうだ!ジェファーソン無かった事にしよう!」


「うんうん。ジェファーソン心を広く持て!」


ルイスだけでなく会長まで説得にかかっている。




「えーと?確かに図鑑で見た事ありますね。可愛かったです。兄が凄く欲しがっていました。。」


「キャサリンも多分めちゃくちゃ好きだと思う!」


その一言で王子は水に流しますかと言った。




パンダは偉大だ。日本でも並ばないと見れない代物だった。


しかも子パンダか。絶対触らせて貰いたい!




誘拐未遂事件の5人はパンダと引き換えで引き渡すという条件で暫く人質と言う事で上手く纏まった。




何でも王子の兄のアレクサンダー王子が動物が好きでうちの国の動物園は作られたらしい。


だからあんなに規模が大きく色んな動物が居たのか。


兄も王様もパンダ2頭で納得されるだろうと王子は話していた。


歌手活動に動物園か。


なかなか息子に甘い王様だなあ。




帰りの車の中でグレンさんがその話をしながら爆笑していた。


「王様さぁ。甘いのよ。王子2人に!」


「我が子は可愛いもんだよ。似た者親子だもんねぇ。」


ローズさんも笑っている。




「しかし、良くパンダが居ると思いましたね?」


私が質問すると


「この時代はまだ乱獲されていないから居るかと思ったんだよ。多分、前世で言うならのベトナムか中国っぽい国だったからさあ。」


と言った。私も名前でその辺の人かと思ったけど地図上の位置的にはちょっと違うんだよね。


でも、パンダ居て良かった良かった。




私達2人を城まで送ってくれてグレンさんとローズさんは楽しかったなあと帰宅された。

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