第182話練習

レッスンルームは約1年、完全に私物化している。


王子の権力に感謝しかない。


本日はプラゲ楽器まで持ち込んだ。放課後までに王子の警護人達が運んでおいてくれたようだ。




「無いと練習にならないしなあ。」


通しで練習をしないと。




「テーブルの端持ってー!」


「ルナリー、無理するなって。」


いや?そう重くないって言いながらルイスと話し合い用のテーブルや椅子は部屋の隅に寄せる。


ステージに見立てて設置をして行かないとね。




2人で先ずは出だしの位置確認の設置をしていると皆もゾロゾロとやって来た。


「わー!凄い!ごめんね。こんなにやらせちゃって!」


クライスが驚いた様に中に入ってきた。


「あー。大丈夫。力仕事はお任せあれー!」


ルイスと笑いながらプラゲ楽器は隅に寄せる。




「今度、浴衣も持って来ないとな。早着替えの練習しなきゃ。」


「帯が難しいよなあ。」




「では!本番と思って挨拶からやりましょうか?」


誰も見ていないんだが本番に見立てて練習開始。




「本日はノネット・クライムのコンサートへお越しいただきありがとうございます!!」




ちょっと硬いかなあ。でも、クラシックコンサートしか聞いた事無い国民だし最初はこんな感じだよね。




「今日はクラシックでは無い新しい音楽をお楽しみ下さい。」


王子がピアノへ向かう。




キャサリンが


「1曲目は私達のデビュー曲になります。Jupiter!」


合図と共に演奏開始。


本番はマイクも使う事にした。会場の盛り上がり具合で音量は調整しこう。




「ここで自己紹介にします?」


うんうん。頷きあいながら。


手探りで色々と決めていく。




楽器を置いて2曲目、3曲目。




曲紹介も忘れずに。




浪漫飛行は絶対盛り上がるだろうなあ。自然に身体が動く曲。ローズさんの1押しなお気に入り。余裕がらあったら振り付けも考えたい。




浴衣着替えメンバーが捌ける。


「この曲はソロ曲です。私達はこの夏、プラゲ国と言う国交の無い国で新しい音楽を学んで来ました。そこで作った1曲です。ワダツミの木。聞いてください。」


MCってこんな感じ?!難しーい!!




次は私達の浴衣着替えタイム!


絶対、着替えの練習しないと。




「ジェファーソン、カッコいいわー。」


キャサリンがうっとりと眺めている。こりゃ女性ファンが泣くかもなー。本当に名曲だ。




プラゲ楽器の説明、そして演奏。


ラストまで通した。




「いやー。結構、疲れましたね。」


「アンコールやってないのにねー。」


通し練習でかなり疲れた。普段練習で2時間3時間平気で歌うのにこの1時間20分くらいが結構な疲労感。




「緊張からかなあ。曲紹介も難しいよ。」


曲紹介は全員で満遍なくやっているが考えていても言葉に詰まる。




「日々練習ですね。」


王子が1番喋っていてお疲れ気味。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




翌日は浴衣着替え練習。




覚えたつもりが案外難しい。




腰紐で止めて帯をこうクルッと。この板みたいなやつを挟んでっと。


「普通のリボン結びじゃダメだよな。」


「まあ、誰も知らないだろうけど。見た目や形が変になるわ。」


「ここをクルクルっとしてこうでしたっけ?」


あー。そんな感じだった。


着るまでは大丈夫だ。問題は帯だ。きちんと習っておくべきだったなあ。




適当な着付け状態で男性陣の元へ。


「大丈夫?着られてる?」


覗くとやはり!四苦八苦している。


着るところから危うい。


着方は何とか教えてっと。


「男の帯はまだましだったよな。」


「女性よりは簡単に見えたけど。。」


こう上手いこと行かない。




会長がニヤっと何かを企んだ様な顔で此方に寄ってきた。


「ルナリー!!君にミッションだ!!」


肩をポンポンと叩かれめちゃくちゃ笑顔。


「作り帯を作ってくれ!」


ん?作り帯?


会長が企んだ笑顔を崩さずに手招きする。ノートを広げて絵を描き出した。


「本来はここはマジックテープなんだ。」


サラサラと描く絵は解り易くそして帯が簡単に巻けば良いと言う代物。


「なるほど予め作っておいた帯の結んだやつをベルトみたいに巻くだけか。」


私の時代にあったかな?浴衣は子供の頃にしか着た記憶がない。


しかし便利だ。問題は。。


「マジックテープ無いっすね。」


「やはり手芸専門の君が知らないという事は存在してないか。」


会長が口をむーと1文字に結んで考えている。




「ボタンでいけるかな?それかホックかファスナーか。」


「頼めるかね?ルナリー君。」




時間短縮になるよなあ。




背後からキャサリンが女性用も。。とノートに描く。


女性用は帯に差し込むのね。ほほう。これは便利!




「ルナリー出来る?」


キャサリンも懇願するような顔で見てる。




「誰かにもう1回習えたら結べる用になるんだろうけどね。」


「でも、作り帯の方が楽だよ。」


「1曲の間に着るなら楽な方だな。」




しかし、どう作るか。


「崩れたら意味無いもんなあ。」


マジックテープって便利なもんだったんだなあ。




紐だな。しっかり結んで帯の中に入れ込んで見えない様にして。後は結んだ所を合わせる様に作って。






脳内でイメージを作りながら自宅に帰宅して作業をしてみる。


帯を切る訳にはいかないので他で代用。




前世も和服なんて着る機会なかったからなあ。


悪戦苦闘の末、何とか誤魔化せる様な作り帯の更に偽物が出来た。

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