第178話閑話 パーティー1週間 クライス×ケビン

王子の誕生日パーティーの1週間前だった。


トントン!生徒会室の扉がノックされ返事をする。月末までは生徒会長なので書類整理をしていた所だった。




誰かと思えばクライスだ。珍しい。と言うか1人で来るのは初めてじゃないかな? まあ、座ってとソファに促した。


クライスは意を決した様に


「会長は誕生日パーティーで誰かエスコートするんですか?」


と聞いてきた。突然の問いに驚いたが1人で行くよ?と答えた。




「妹に彼氏が出来たみたいなんです。」


去年は妹をエスコートしてクライスは参加したらしい。まだ婚約はしていないけど妹は誘われた男子と一緒に参加すると言う。




「別に1人で参加で良いんじゃないの?カインやジョージもそうだろ?」


4人で行こうかと誘ってみた。クライスは行くのはそれでも良いけれどダンスが、、。と項垂れた。


ジェファーソンの誕生日パーティーは初めて行くのだが財閥系のパーティーって確かに面倒臭いよね。必ずでは無いのだろうけど踊らないといけない空気。




ジェファーソンの誕生日パーティーでは先ずジェファーソンとキャサリンのダンスと王様とお后様、兄王子と婚約者と言った王族がダンスをする。その後、財閥達がダンスをする流れらしい。




「あの。会長!!あのその。言ってたあれ、本当にやりませんか?」


クライスが照れたように俯いてそう言った。


えっと。あれって僕とダンス?!




「僕とダンスする?」


「はい。ダメですかね?」


思わず口を手で被って横を向いてしまった。


顔が見れない。


「会長?ごめんなさい。無茶言って。」


クライスが頭を掻きながら何とか踊らない様に隅に隠れて誤魔化します。と申し訳なさそうに言った。


落ち着けケビン!!


何時もの冷静な僕に戻るんだ!!自分に言い聞かせる。




「良いよ。ダンスしよう。面白そうじゃないか!」


「本当?!」


クライスの嬉しそうな顔!




「いや、まあね。クライスが寄ってくる御令嬢に興味無いのは知ってたけど。そこまで思い詰めてたの?」


嬉しいんだけど僕は君の行く末がちょっと心配だ。




「僕が御令嬢達に陰で何と呼ばれているか知ってますか?」


クライスが真剣な顔で僕を見詰める。


知らない。首を横に振った。




「最高の残り物物件です!」


クライスは頬を膨らませて壁を睨んで居る。それすらも可愛いんだけれども。


「それは酷いな。女達、最低だ!」


こんなにイケメンで優しくて良い子なのに財産しか見てないのか。酷すぎる。そりゃ御令嬢嫌いにもなるよね。




僕はゲームで卒業後を知らない。だから今でも今後の人生が怖い。選ばれなかった攻略対象者の将来なんてゲームには無かったしなあ。




「ノネット・クライムって結構人気あると思うんだ。」


だからね?僕らが一緒にダンスするのも変な疑いはかからないと思うよ。仲良しにしか見えない。


もしもの為にクライスに心配しないで良いよと投げかける。




「別に男が好きって思われても構わないです!」


クライスはまたぷっくり頬っぺでブーたれている。その頬を突きたいです。




「あっ!ごめんなさい。勝手な事ばかり言って!会長が困るんだ!!」


慌てて謝るクライスに大丈夫だよと微笑みかける。




「クライスちょっと立ってみて。」


身長差はそうないか。僕が175センチ、クライスは174センチだったかな。


「身長同じくらいだよね。じゃ僕が女役で良いかな?」


え?会長が女性パート踊るんですか?と驚かれた。




「確かに身長は同じ?ですけど頼んでいるのに会長に女役させるなんて出来ないですよ!!」


可愛い。そりゃ見た目的にはクライスが可愛いんだけど。




「クライスは財閥御曹司だからね。僕が女性役が立場上OKなんだよ!大丈夫!」


クライスの肩をポンポンと叩いて落ち着かせる。




「会長。ありがとうございます!」


クライスが頭を下げてくるので本当に気にしないで良いよと言うしかない。こんなに嬉しい事はないのになあ。


「ちょっと練習してみようか?」




クライスに手を出す。クライスはあっ!そうだよね!と手を取った。


えーと。女性パートだよね。何となく解る。




クライスがすっと腰に手を回して来た。


うっわー!!!近い。腰に手!繋いだ手!!普通何だけど!


ゾクゾクするーーー!


「何か男性と踊るってウケますね!」


あぁ。そうだよね。普通はウケるんだよ。落ち着けケビン。




「そうだよなあ。きっと会場でもウケるぞ!」


女性って綺麗な男性同士の絡み好きだよね。イケメンに生まれて良かったー!




その後、何とかダンスも形になったので誕生日パーティーは頑張ろうと言う事で本番を迎える事になった。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「ドキドキしてきた!さあ会長!手を。」


僕は会長の手を取る。


会長は相変わらずのクールな顔している。いつも冷静でカッコいいよね。




手を取り会場のダンススペースに行くと黄色い声援にびっくりした。


キャー!!キャーキャー!クライス様とケビン様だわ!


お似合い!ノネット最高!




「ほら。令嬢達が逆に嬉しそうでしょ?」


会長がニヤリと笑った。


「信じられない。びっくりした。」


正直、この声援が未だに信じられない。




曲がかかりダンスを始める。本当に御令嬢達が嬉しそうだなあ。


何なんだ?この不思議な現象。




ダンスをしていてふと思う。何時もカッコいい会長がたまに凄く可愛い。表情とか仕草とか。


ほら。今も。。




あっという間にダンスが終わった。何時もは令嬢と踊る時に長くて苦痛に感じていたのに。


「さあ、ファンに御挨拶しようか?」


会長に言われて御令嬢達に向かって一礼。


すると黄色い声援が更に高まった。




「びっくりしてます。」


会長は予想通りだよ?と言っている。




その後、ルイスと姐さんが笑いながらやって来た。


そうだ一緒に踊ってたんだよね。目にも入らなかった。




カインとジョージも踊ろうかと迷っているとジェファーソン達も笑いながらやって来た。


ジェファーソン爆笑しすぎだよ。




何かジェファーソンとカインが踊るって張り切っているし。


本当にジェファーソンって楽しそうな事好きだよね。




会長がジョージに踊るかい?と誘っていた。


僕はそれを黙って見ている。




ダンスは先程よりも声援が大きくて。


何か面白くないな。




理由は全然解らないけれど。胸がチクっと痛んだ。

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