第173話8月コンサート

8月ミサコンサート。


悩んだのだが亊と小太鼓は入場する際に運ぶのは大変なので設置済み。綺麗な布をかけて隠している状態だ。




「笙がさあ。乾燥させておかないと音が悪くなるんだよね。」


ジョージが取り敢えず笙を日光浴させている。


「何か火鉢で乾燥させるって言ってたよね。夏は火を炊くのはちょっと暑いよねえ。」


一緒に習ったカインがジョージの横で一緒に日光浴中。




「竹製品の楽器ってお手入れ大変ですよね。」


エミリアも龍笛等の笛のお手入れは欠かせないと言っていた。




まだミサまで30分以上あるのだが席が殆ど埋まっている。人気は出て来てる証拠なのだけど。


「チケット誰か買ってくれてるかなあ?」


礼拝堂の様子が気になる。


「取り敢えず最後の挨拶でアピールするよ。」


王子は心配しないでと皆に微笑みかける。


「本当に信仰心の熱い人と僕ら目的の人、どのくらいの割合なんだろうね?」


またこっそりと礼拝堂を観察していたクライスが呟く。




「本日も満員御礼、立ち見有り。」


本当に教会でのコンサートは順調だ。




「なぁ。ポスターのデザインって出来る?」


ルイスにこっそりと話し掛ける。


「インパクトに欠けるからだろ?やった事は無いけど。」


昔は壁に落書きしてたじゃんと言うと確実にカッコイイ感じになら書けるかもなあと言いながら考え始めた。


「スプレー缶専門なんだよなあ。」


確かにそうだったな。


「こう、チームのじゃなかった、このメンバーのモチーフっての作りたいよな。」


だよなあ。とお互い考える。






「ほら、そろそろミサ終わるよお二人さん!」


会長に突っ込まれながらドア前にスタンバイ。


本日も大司教さんが挨拶されて登場。


登場から拍手と声援が月を追うごとに増えている。




せーの!ノネット・クライムー!!


女性の黄色い声がキャーキャー聞こえる。


この子達は確実に歌目的の礼拝客だ。




前へ出て楽器スタンバイ。


見た事が無い楽器にざわめきが聞こえる。




「本日もお越しいただきありがとうございます。ノネット・クライムです!」


王子の挨拶で拍手が起こる。


「今回はボードウェン初の他国の楽器を使って演奏を行ないたいと思います。綺麗な音色ですのでお楽しみ下さい。」


拍手が収まってから徐ろに王子は亊の元へ。


亊は正座で弾くか?と討論の末テーブルの上に乗せて弾く事になった。正座では目立たない。




「お聞き下さい。異国の友へ。」


主旋律のカイン、ハモリのクライスと会長が前へ出る。




亊の調べから演奏が開始される。




初めて聞く音に会場からは感心するような声も聞こえた。






「限りなく広がる空に 異国の風を感じて」


カインの低音美声が響き渡る。




「静かに目を閉じる 何処か懐かしい風の匂いを 胸いっぱいに吸い込んで」


会長とクライスがハモる。ここから龍笛と三味線、笙が加わる。




「この地に立って 大地を感じて沢山の出会い 人の優しさ」


ダダン!私の小太鼓の出番発動。




礼拝客の顔を見るとウットリ。


亊の音綺麗だよね。


初めての和楽器の音色と歌声に酔いしれてる。




「また逢おう 逢いに行く 友情は永遠だから」


盛り上がり最高潮。




「君との出逢いに ありがとう」


ラストに亊のエンディングで締める。




終わって一礼。


ドキドキの瞬間だ。反応無い?あれ?


顔を上げる。




口が半開きで目がウットリとしている女性達。


感動しているのか?目を閉じ手を胸に当てて祈る様な男性達。




私達が顔を上げたのを見て慌てた様に拍手喝采が起こった。


そしてスタンディングオベーション。




良かったー。物凄く感動したんだ。




美しい。素晴らしい。心に染みる。


そんな声が沢山聞こえた。




アンコールも頂きました。




「新しい楽器は如何でしたか?アンコールにお答えしますね。」


王子がキャサリンと目を合わせ「さくらさくら」


を弾き始めた。


これだけでは物足りないかと提案して「春の海」を練習しておいた。新春で良く流れるあの曲です。


エミリアの神楽笛が無茶苦茶綺麗。


そして尺八も良い感じだ。




アンコールも拍手喝采を頂きまだ物足りない!!と言う再アンコールが起こる。




ここで王子が宣伝に入った。


「本日もありがとうございました。私達ノネット・クライムは来月末に市民ホールでコンサートを予定しております。宜しければチケット購入をお願いします。」


再び全員でお辞儀。




拍手の中、退場した。


今日も黄色い声援が止まない。




控え室に漸く辿り着けた。


「お疲れ様!!」


「プラゲ楽器良かったですねー!」


うん!めっちゃ感動されていた。


ハイタッチをしてガッツポーズ!




「やっぱりクライスへの声援多いなー。」


「今回は会長とカインも多かったじゃん。」


それに関しては全然嬉しくなさそうだ。




「チケット売れますようにー。」


キャサリンは祈っている。私も祈ります。じゃ私も。僕も。


全員で礼拝堂へのドアへ向かって祈る。




チケットを購入しているのか出待ちなのか1時間近く礼拝堂に出られなかった。


ノックが聞こえて大司教さんが入って来た。


「おめでとうございます!」


そう言って満面の笑みで私達を見た。




「教会販売分の200人分のチケット完売です!!」




おー!!!!


皆の歓声が上がる。初日で200人か!やったじゃん!


再度ハイタッチ!


「行けるかもな!」


「満員御礼なるかも!」


目指せ満員御礼!


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