第156話京都最終日

観世さんが今日はお泊まり下さいと仰って下さったので有難く泊めて貰うことになった。




『何から何まで申し訳ございません。助かります。』


『本当にありがとうございます。』


『何かお礼したいですよね。』


私達も何かお返しがしたい。そう言うと頭をポリポリ掻きながら


『うーん?面白そうだからボードウェン国の歌でも聞かせて貰おうかな。』


と言われた。観世さんはプラゲ独自に固執する事無く能楽も新しい物を作れたら良いと常々考えているそうだ。




『観世殿は面白いであろう?ちょっと変人じゃからなあ。』


と光国さんが笑っていた。


『いや、光国殿程、周りを困らせたりして無いので。』


そう言い返され光国さんはちょっといじけていた。






晩御飯も観世流本宅で。何から何までお世話になって本当に有難い。


時代劇見てたけどこの時代の人ってやっぱり優しいんだなあ。


『本当に晩御飯まで御馳走になってすみません。』


『子供達に楽器まで教えて頂けて感謝しかありません。』


ローズさんとグレンさんが親らしい発言をしていた。


観世さんはボードウェン国の人ってやはり他の国とは違うと仰っるので思い切って聞いてみた。


『他の国交のある国ってそんなに違うんですか?』




『見たいと言って歌舞伎や能楽を見せても理解出来ないと言うし。食事は肉を食べさせろと言うし。吉宗殿が若いからと暴言吐いたり。天皇陛下に立ったまま挨拶したり。』


と光国さんの愚痴が止まらない。


『踊っている最中にお喋りしたり。お礼も無いしね。』


観世さんも苦笑いしながら言った。




『それは、一般常識の範囲ですよね。』


大司教さんも呆れている。司祭としてちょっとパルドキアとかの司教に文句言っておきます!と言っていた。


『いやいや、此方が我慢すれば良い故。プラゲは資源が余りなくてどうしても弱いのよなあ。』


光国さんと観世さんは諦め顔だ。


日本もプラゲ国も同じなんだろうなあ。もう少し発展したら輸出強くなるんだろうけどね。




散々の愚痴を一頻り聞いて私達は観世さん達に歌を歌う事にした。


「で、何が良いんでしょう?」


「クラシック?オリジナル?」


オリジナル曲って弾け過ぎかなぁ?楽器が無いよ?


「そうだピアノが無い!!」


ピアノ以外の楽器は持ってきてはいるのだが飛行船の中だ。




『観世殿、光国殿。落ち着いた曲と理解出来ないかも知れない弾けた曲とどちらがお好みですか?』


取り敢えず確認してみた。どうせなら弾けた曲と希望された。


「じゃ、oh happy dayとサマーバケーションにしましょう!」


会長が僕がメインかよ!と突っ込んでいたが披露する事にした。




oh happy day、最初は普通に聞いていた光国さんと観世さんだったがサビで目を丸くしていた。


会長の高音はやっぱり美しい。私も負けずに声を上げる。




『はー。凄い。そして天晴れ!』


『世の中の広さを知った感じです。』


うん。驚かれている。サマーバケーションはもっと弾けてますよー。




私達のダンス付きサマーバケーションアカペラバージョン。


歌い終わった後の2人共やはり驚かれていた。


『本当に井の中の蛙じゃなあ。美しい歌声じゃった!』


『曲調が早いですね。多分、早口過ぎて歌えないです。でも、とても綺麗でした!』


観世さんが満足してくれたのが嬉しい。




『こんなお返しですみません。国に帰ったら何か送りますね!』


王子がそう約束すると更に嬉しそうだった。




『ボードウェン国との国交は早く結びたいものじゃなあ。』


光国さんがしみじみと仰った。






翌日は寺巡りをしたり楽器購入を行った。


亊、龍笛、笙、小太鼓。


王子の作曲にも歌詞を考えてコンサートで披露したい。






散々お世話になった観世さんにお礼を述べる。


また是非来てください。私もボードウェン国に行きたいです。


『是非いらして下さい!そしてまた来ます!』


王子が笑顔で述べる。


『あの!助けて頂き本当に感謝します。お陰様で僕の貞操は守られました!観世殿!本当にありがとうございました!』


会長が深くお辞儀をした。観世さんは笑いながら確かに!権中納言の件は本当に助けて良かったと言って会長の肩をポンポンと叩いていた。


そして観世殿の本家を後にする。




バスに乗り駅へ向かった。


バスの中で光国さんが


『着いて行きたいが琉球には行けぬ。』


と言い出した。てっきりずっと共に旅をすると思っていたので非常に残念だ。


『琉球はのう。ちと複雑で。元々琉球国と言うプラゲ国では無かったのじゃ。』


故に言葉が複雑なので儂では通訳にならん。


光国さんも残念そうだったが確かに沖縄の方言って独特だったよなと思い出した。


『英語は通じるので主らは英語で話されよ。後、夏目が同行する。』


英語が通じるのは有難い。そして夏目さんも来てくれるのは助かる。




駅で光国さんとも別れを告げる。何かとても寂しい。


『またそのうち!さっさと国交を結ぼうぞ!』


笑顔で見送ってくれた。


また逢う日まで!!




SLの中から手を振る。




そして、大阪へ。琉球へ旅立とう。

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