第154話能楽堪能
全く持って良く事件が起きるメンバーだ。
でも、良かったよ。
「良かったなあ。会長。」
話しかけると笑顔で会長は振り向いて
「半分諦めてたけどさ。信じて待ってたよ!」
と言ってくれた。部屋探しをしてくれた大司教さんとグレンさんに皆でお礼を言う。中納言の部屋へ向かって居たらグレンさんが木から飛び降りて来た時は驚いた。運動神経が相変わらず良い。
光国さんには忍びであったかと勘違いされていたし。
バスは観世流の本家へ向かう。
『稽古を見て行かれるのであろう?』
観世さんがそう言われ王子が是非宜しく御願いします。と挨拶をしていた。
私達もバスの中で観世さんに自己紹介を行った。
観世元章さんは落ち着いて見えたけどまだ18歳だった。
能や狂言は全く詳しくないのだがその系統の綺麗な顔立ちの凛々しい青年で権中納言が追っかけファンってのも解る。
『京に居て良かったですね。私、プラネットに滞在している事も多い故。』
『不幸中の幸いじゃったのお。』
『私は不幸でしたけれど。』
光国さんと観世さんのやり取りが面白い。仲良しなんだろうなあ。
観世流の御屋敷はそれはそれは立派だった。
稽古場の広い部屋だけで無く本番の能の舞台まであるらしい。
『猿楽と通常呼ばれております。解らないかもしれませんが能にはシテ方、ワキ方、狂言方、囃子方等に分かれてまして。私はシテ方。』
まあ、見せましょうか。と言われた。
『左近様。お客人でしたか。これは光国殿。』
出迎えに来た観世流の方が光国さんに丁寧にお辞儀をしていた。
『異国のお方に稽古を見せる。用意を。』
観世さんが申されると頭を下げ中へ向かわれた。
『囃子方を是非見せてやってくれ。この者達は国では歌や弾き方をしておる。』
光国さんの申し出に観世さんはなるほどと頷かれた。
玄関の木戸を開けると家の広さを思わせる長い廊下と中庭があった。
稽古場に案内され、お邪魔しますと頭を下げて皆が入ると観世さんを初め観世流の方々は感心して居た。
能の舞台は板張りだ。
『足崩して下さい。』
そう言う優しさが有難い。でもなるべく頑張る私達。
『少々お待ちを。』
観世さんは着替えて来られるようだ。他の観世流の方々は正座で背筋をピンとされて居て静かに待たれている。
私達も静かに待った。
囃子方の演奏と共に観世さんが入って来られ舞が始まる。
ゆっくりと時に激しく。
優雅で所作一つ一つが美しい。
言葉の意味が難しく歌舞伎より更に理解するのが困難なのだが音楽が心に響く。
皆も見入って居た。
10分程の舞だったが生でこんな近くで見れて本当に感動した。
『ありがとうございました。感動しました!』
王子が土下座をしてお礼を述べたので私達もそれに習ってありがとうございましたと伏した。
『いえいえ。どうぞお顔を上げて下さい。まだ稽古の段階でお恥ずかしい。』
『本当に素晴らしかったです。』
皆、口々に感想を述べると観世さんはニッコリ微笑まれた。
『なるほど。他の異国のお方とは違いますなあ。』
光国殿の言わんとする事が解りましたと言われた。他の国の人ってそんなに態度悪いのだろうか。良くこう言われている気がする。
『あの、質問があります!』
エミリアが手を挙げた。
『その笛は何でしょうか?この前、篠笛は吹かせて貰ったのですが。音が違う。』
囃子方のあの方の楽器ですと頑張って説明していた。
『能管ですね。見た目もちょっと違うでしょう?』
他にもプラゲの笛は龍笛や神楽笛等ありますよ。と教えてくれていた。
『すみません!僕も質問です。写真で見たのですがこう言う山なりの竹?を組み合わせた様な楽器はありますか?』
カインが一生懸命、手で形を現して訴えている。
『笙しょうですかね?あれは雅楽で使うんですよ。』
観世さんは親切に能楽と雅楽の違いも教えてくれた。
めちゃくちゃ優しい方だなあ。
『なるほど。楽器を学びたいのですね。』
私達は大きく頷いた。
光国さんに面白い方達ですねえと言いながら観世さんは少し考え事をしている。
『光国殿。何が良いでしょう?』
『儂に振るか。そうよのお?笙も興味あるのであろうし。』
『ボードウェン殿、プラネットでは何を買われた?』
光国殿の質問に王子は三味線と篠笛と鼓と答えていた。
観世さんはうんうんと頷いて
『じゃ、亊ことはいかがですか?後は笙とか尺八に能管、大太鼓とかでも。』
おお!亊か!キャサリンとか似合いそう!
観世さんは囃子方の方に教えて頂ける様にお願いしてくれた。
何とも有難いお話だ。
囃子方の方は多才で自分の持ち楽器以外も得意だと言う。
王子とキャサリンは亊。
私とカインとジョージは笙。
ルイスと私は大太鼓
会長とクライスは尺八。
エミリアは能管をそれぞれレッスンして貰えることになった。
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