第147話お白州と歌舞伎


朝食を頂いてから奉行所へ向かう事になった。


皆も見学で着いてきている。


「お白洲って何ですか?」


「ああ。裁判の事だよ。」


玉砂利に蓙が敷かれた所に罪人が座ると説明すると痛そう。裁判形態も違うんですね。とそれぞれの感想が出る。


私達は椅子が用意されていて後ろで見学をさせて貰う事になった。


昨日の武士や下人、そして岡部が縛られた状態で役人に連れて来られた。大岡越前登場。


ダダン!!と響く太鼓の音に皆、そっちに興味が行っている。そうだった。楽器を買いに来たのが1番の目的だ。楽しすぎて忘れていたよ。


私やルイスに昨晩の話をするように大岡さんが証言を求めた。


囚われていた娘も証言をしたり。岡部家の武士達や誘拐犯の下人は身分剥奪や流刑。


『岡部の裁きの沙汰は上様より御達しがあるだろう』


光国さんに聞いた所、国交断絶か吉宗殿は決めかねていると言っていたからなあ。裁きは直ぐには出せないのだろう。




お白洲が終わると大岡さんから御礼を言われた。まだ売り飛ばす前で本当に良かったと思う。






私達はその後、光国さんと夏目さんに約束の歌舞伎を見に行く事となった。


昔も今も人生初歌舞伎鑑賞だ。


『歌舞伎ってそもそも何ですか?』


クライスの質問に他の者も頷いた。解らないです!


光国さんは


『うーん?演劇で解るか?』


解らない単語だったらしく首を傾げている。


「えーと。演劇です。オペラの様な物?」


夏目さんが英語で説明してくれた。


わー!!楽しみです!皆の顔が凄く嬉しそう。




理解出来るかなあ。私も自信ないぞ。




演目は有名な勧進帳であった。有名だが、知らない!!




歌舞伎座と言うのだろうか?演劇場に入る。


舞台前の非常に良い席に案内される。権力使ったんだろうなあ。




会場は満員御礼だ。




勧進帳が始まった。


前世日本人でも難解な言葉だ。でも、源義経と武蔵坊弁慶が源頼朝から逃亡する話と言うのは見ていて解った。


実際、解らなくても面白いと思う。




皆が目を輝かせて見ていたのは楽器だ。


太鼓、鼓に笛、三味線。


そして長唄。




義経の正体がバレそうになった時の弁慶の演技は素晴らしかった。




「素晴らしいですね!」


王子が演目が終わって感動した様で一言!


「言葉の意味が解らない事が多かったのが残念でしたけどあの楽器!!弾きたい!」


ジョージは三味線が弾きたくたて仕方ない様子。


「笛ですよ!あの音。心に響きますわー!」


エミリアも吹きたがっている。




『興奮すると国の言葉しか出んのお。』


私達の笑顔に満足したのは解った様なのだがボードウェン語で話続ける私達に光国さんが突っ込まれた。




『申し訳ございません!徳川殿。余りにも感動してしまいました!』


『難しかったんですが音楽が非常に良かったです。』


カインと会長が必死にフォローを入れた。




『やはり、皆さんは楽器ですよね?』


夏目さんが尋ねられたので王子が特に大きく頷いた。




『気難しい連中だが会うか?』


是非お願いします!王子は頭を下げた。


『京では雅楽も学べるように手配してますよ。』


夏目さんの配慮に更に皆のテンションが上がった。




光国さんに付いて楽屋?に向かう。


歌舞伎役者でなくお囃子の人達に会いたがる人は珍しいらしく中に入ると少し驚かれた。


『少しばかり弾かせてやってくれぬか?』


外国人に?と言った反応が返って来た。そうでなくても弟子入りも厳しい世界なんだろうからなあ。




『無理を言って申し訳ございません。私、ボードウェン国より参りました。ボードウェン・ジェファーソンと申します。』


王子が深々と頭を下げた。


『私共はボードウェン国で音楽を学んでおります。無理を承知でお願いに上がりました。』


会長がすかさずフォローを入れた。




三味線奏者の方がそこ迄言うなら少し弾いてみるかい?と言ってくれた。




しかし、男尊女卑と言うか女人禁制と言うかまだ色濃く残っている為、私達女子は教えて貰えない様だ。




仕方ないので楽譜だけ見せて貰った。


独特の楽譜。五線譜じゃないのだ。


見てもさっぱり解らない。




『笛を吹きたい。。』


エミリアが寂しそうに言う。




『篠笛。』


男性がエミリアにそう言って渡した。


『良いんですか?!』


エミリアが驚いて尋ねると教えはしない。と言った。やはりちょっと意地悪だ。


でもエミリアは嬉しそうに篠笛を触って穴の位置などを触っている。


「フルートとは間隔が違いますね。やってみます!」


笛って最初は音を出すのも難しい。多分、吹けないだろうとでも思われていたのだろうがエミリアは音階を確かめる様に吹いた。




フルートやピッコロとは違う和楽器の音色。澄んでいて美しい。




三味線に慣れて少し弾ける様になったジョージとルイスに王子。


鼓を教えて貰っていた会長とクライスとカイン。




「ちょっとやりましょうか?私達の腕前披露しましょ。」


王子がニヤっと笑った。


「じゃ、私とキャサリンは歌うよ。荒城の月でいいかな?」


皆、頷きちょっと披露する。




『あはは。流石よのう。』


光国さんと夏目さんは私達の音楽力は承知済だからなあ。


荒城の月はアレンジして居たので編曲してある。


前奏は三味線と篠笛で。




歌と鼓も加わり演奏する。




歌い終わった頃にはお囃子の人達は感心した様な顔で褒めてくれた。


『君ら本当に才能があるなあ。』


『特に三味線の君達と篠笛の君!凄い!』


鼓は初体験だし全く関わりのある楽器弾いたことないしね。


エミリアも嬉しそうだった。




『この楽器を是非!買いたいです!』


王子の申し出に楽器屋さんを紹介して貰った。


無事に購入出来そうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る