第148話さあ、京都へ行こう!

『この度は大変お世話になりました!』


『ありがとうございました!』


吉宗殿に御礼を申し上げて次の目的地、大阪、京都へ行く。




『ボードウェン殿!近々、ボードウェン国に訪問したい。そして国交を築きたいと思うのだが如何だろうか?』


王子は是非お願いします!と吉宗殿に更に頭を下げていた。


めでたいなあ。




気に入られたのか光国さんが通訳者として大阪、京都まで着いてくると言う。


『また揉め事起こすでないぞ!』


吉宗殿が笑いながら送り出してくれた。




そして、飛行船に乗り込む。


あっ。カインの面倒を見なければ。


「姐さーん。ルイスー!」


本当に飛行船の離着陸時のカインは面白い。




『徳川殿。ちょっと煩いですか我慢して下さいね。』


大司教さんの隣に座った光国さんがさんは首を傾げた。




離陸と同時にカインが叫ぶ。


「いーやーだー!何でずっと飛行船移動なんだよ!」


「むーりー!無理無理無理。揺れてるってば!」


私とルイスは暴言を吐きながら睨みつける。


それを見て光国さんは呆れながらも飛行船が怖いのか?と爆笑されている。


『カインは睨みつけたり暴言を吐かれると喜ぶんですよ。』


会長が光国さんに説明していた。


「カイン!これ以上騒いだら玉砂利の上に正座させるぞ。」


「それは逆に楽しそうだからむーりー!」


彼はお白洲をそう見ていたんだな。。


今回は近い距離なのでそれ程上空高くには上がらないのでカインは比較的早く鎮まった。


「大体さあ!カインってズルいですよね。高所恐怖症だからって姐さんとルイスの睨みを何時も独り占めして!」


クライスが珍しく怒っている。


「これが無いと飛行船には乗れないし。クライスもたまにはお願いして見たら良いんじゃない?」


落ち着いたカインがへっちゃらで答えるのでクライスはブーたれ気味だ。




『城の天守閣に泊まって頂ければ良かったかのお?』


光国さんは悪そうな笑顔でカインを見ている。


『あー!それ良いですね!』


クライスもニヤっと笑うと今度はカインがブーたれていた。


困った奴らだ。




大阪までは2時間程で到着した。落ち着く暇が無いカインだけは凄く疲れていた。


「もう、旅は船が良いよ。」


確かに叫んで睨まれてを繰り返すのは少しばかり気の毒だが船だと時間がかかるからなあ。




大阪からは鉄道で京都へ向かう。大変なので荷物は飛行船に残し必要な物だけ持って行く事にした。


盗難等は無いとは言うが私設兵2人と使用人1人はお留守番して頂く。


空港を出ると大阪の総理管轄の外務省の職員らしき方2人がバスを用意して待っていてくれた。


王子が挨拶すると


『御丁寧にありがとうございます。駅まで送らさせて頂きます。徳川殿も、ようお越し下さいました。』


と少し訛った感じで挨拶された。


「これが地方によって言葉が違うって奴ですよね?」


「アクセントがこう波打つ様な感じだよね。」


ジョージとクライスがプラゲ語の冊子に書いてあった事を思い出して納得している。




『ほな、行きますね。』


外務省職員の方が運転を始めた。


大阪の街は想像通り栄えていた。


外務省の職員のお兄さん達は良く喋る。喋る。


昔も今も異世界でも大阪人はフレンドリーなのかもしれない。


『京に行くならきーつけなあかんで?』


『まだ公家さんで煩いのやら寺で力持ってんのがおんねん。』




光国さんが何とか通訳をしてくれている。


天皇陛下は京都御所に居るのか。寺も確かに多いだろうし寺社仏閣の権力ってやつか。




大阪駅に着き外務省職員の方と別れる。良い人達だった。


明治時代風の造りの駅は結構賑わっていた。大阪は着物に袴の女性が結構居た。可愛い格好だ。




しかし、SL列車か。庶民なのでボードウェン国でも乗ったことがないのだ。ワクワクする。


「エミリアは乗ったことある?」


「無いですよー。高いですしねえ。」


うんうん。良かった、私だけじゃ無い。




「今日あんまり暑くなくて良かったなあ。」


「なんで?」


ルイスがしみじみと言う意味が解らない。


「トンネルで窓開けたら大変な事になる。」


「あー!そうか!!」


SLは前世でもどっかの県で走っていた筈だけどクーラー付いてただろうしなあ。


まだ地球温暖化とか無いのでこの時代は涼しくて良かったよ。




確かに駅に煙をモクモクと上げて走ってきたSLに噎せた。


これは煙い。




煙がダイレクトに入ってこない後方の車両にVIP車両と言うのか?お金持ち用の車両が用意されていた。


有難い事にその車両を光国さんが予約していてくれた。




皆の話によるとボードウェンにもそんな車両はあるらしくやはりお高いそうだ。


貸し切りにされた列車内は快適で混みあってもいないので窓も開けなくても大丈夫だった。


ちなみにトンネル内で窓を開けると顔や服が煤だらけになるそうだ。


『さっきの外務省職員が言ってた話なんですけど。そんなに面倒なんですか?』


王子が尋ねる。


『この国の昔の話なのだが。昔は将軍や総理が居ない時代があってその頃は天皇陛下だけで国を治めていたんじゃ。』


『その頃の名残りで天皇配下の公家と呼ばれる家柄の者達が京には多い。そしてタチが悪い。』


そして光国さんは面倒臭い連中だと言った。


イメージは凄く湧いた。麿な人達だな。


『なるべく関わらずに済むようにするから大丈夫じゃよ。儂の身分で何とかなるくらいじゃからなあ。京では武士の力が弱すぎる。』


その為に着いてきたと言ってくれた。権力者には権力者をって事かな。しかし、光国さんでギリギリとはちょっと大変そうな所に行きたいと言ってしまったのだなあ。




2時間程そんな会話をしていたら京の都に着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る