第145話城下町の治安を守ろう

両替商の待ち合わせ場所に向かうとホクホク顔のグレンさんが刀を腰にさして待っていた。


『太刀を買うたのか?』


光国さんが呆れた様な笑いを浮かべている。


『欲しかったんですよ。』


『刀掛けも買いました!』


家に飾る気なのだろうなあ。




『徳川殿。刀を買いに行ってる時に城下町での良からぬ噂を聞いたんですが。治安は大丈夫なのかい?』


グレンさんが深刻そうな顔で光国さんに話を始めた。


『良からぬ噂?』




光国さんは神妙な顔をした。




何でも若い娘の人攫い(誘拐)事件がここの所何件も起こっているらしい。


『その様な話は初めて聞いた。』


普段は光国さんの様な身分の高い方は城下町をフラフラしないらしい。


『いや、そんな事件があるなら明日も城下町に出るならこの子達を守らなきゃならないからね。』


グレンさんは私達を見てそう言った。


誘拐が頻繁に起こるとは物騒だ。やっぱり時代劇では良くあるお金持ちの武家が攫って手篭めにしてるパターンかなあ。




『少し調べるか。プラネットの治安は護るのが我らの仕事だからな。』


光国さんは聞き込みに付き合えと言っている。




『夕飯まで時間は大丈夫ですか?』


吉宗殿を待たせたら申し訳ない。


夏目さんが腕時計を見ながら余裕を持って帰るなら後30分ならと言った。




『良し!参るぞ!!』


何か護ると言いながら光国さんは少し楽しそうだった。


やんちゃなんだろうなあ。




グレンさんとローズさんが話を聞いたと言う茶店に先ずは行ってみた。


光国さんが店の主人に尋ねると逆に気を使わせて詳しく話してくれない。


『いや、お武家様に助けて頂くなど滅相も御座いません!』


とペコペコ頭を下げて会話になっていない。


見かねた夏目さんが間に入り漸く話が進んだ。


話に寄ると攫われたのは夕刻以降。


長屋の娘、呉服屋の娘、問屋の娘に別の茶店の娘に遊女等。


結構な数。話を聞くなら呉服屋か問屋が近いと店の名前を教えて貰った。




『もう時間が余りないぞ。徳川殿!』


夏目さんがブツブツ言っているが取り敢えず呉服屋へ。




また話にならないと困るので夏目さんが呉服屋の主に尋ねた。


『単刀直入に聞くが娘さんが人攫いにあったのは本当かい?』


茶店の主人に聞くと呉服屋の主は泣き出してしまった。




攫われたのは夜の20時過ぎで急ぎの注文の品を仕立てて武家屋敷に届ける時だったと。途中で攫われたのでは無いかと言う。




その武家屋敷が怪しいんじゃないか?


その武士は岡部様と言う屋敷で場所も教えて貰った。




『そろそろお時間です。』


夏目さんに言われ捜査は中断。


プラゲ城へ戻る事になった。




「晩飯の後に抜け出そうか?」


グレンさんとローズさんが良からぬ話を始めている。


誘拐犯を退治したいんだろうなあ。


「えっ?俺も行きたい。」


ルイスが行きたいなら私も!


「じゃあ。ルナリーが囮になるってのは?」


「有りですよ。」


「また親父達は無茶言うし!大丈夫だろうけどさあ。」


着実に計画が進んでいる。


「自分の国では出来ないけどここなら暴れて良いよなあ。」


「だよねー。」


これはほぼ確定だな。私も実際、人攫い犯を捕まえて誘拐された娘さん達を助けたいと思っていたし。




ただ迷惑がかかると不味いので。


『徳川さん。夜、見回りに行きませんか?』


と誘って見た。光国さんは目を丸くして儂も行きたいと思っておった!と仰った。やはりこの人やんちゃだ。光国さんの目がキラキラしている。




夕飯は何と有難い事にテーブルと椅子で晩餐会。


外交が有るからか城に似つかわしく無い洋間が造られていた。




『光国にそなた達の国の食事の話を聞いたのだが同じ様な品が作れず。プラゲ国の料理で申し訳ない。』


吉宗殿が申されたが私としては和食がとても有難い。




刺身、焼き魚、揚げ出し豆腐、味噌汁、香の物、天ぷら、白米。




『とても美味しいです!』


『初めて食べました。』


新鮮なお刺身が皆に案外ウケている。


勿論、前世日本人組の笑顔が止まらない。




プラゲに来て良かったあ!




『所で吉宗殿。』


光国さんが誘拐事件の話を報告していた。




『で、今から行ってくる!』


『光国、、またお主。。』


吉宗殿は大きな溜息をついた。光国さんは私達も一緒に行くと伝えると面食らった様な反応をされたが、諦めた様な溜息を更につかれた。


『奉行所に任せておけと言うても聞く気は無いようだな。』


光国さんは大きく頷いた。




「ルイスとルナリーにルイスの御両親まで?」


王子も諦めた様な溜息。


「大丈夫だと思うけど気をつけてね。」


キャサリンも呆れている。




『ボードウェン殿。そなたも苦労しておるのか?』


吉宗殿は私達を見て言った。


『そうですね。暴走するんですよ。でも、強いので大丈夫ですよ。』


と言うと高笑いされた。光国と同じ様な奴が他国におったかと。


『しかし本当に大丈夫かのお?光国、責任もって護れよ!』


吉宗殿が釘を刺されたが光国さんは大丈夫じゃ!と自信満々。




呉服屋さんの娘さんの誘拐時間を考えるとそろそろだ。


『行くか!!』


意気揚々と申され私達は立ち上がった。


『類は友を呼ぶじゃな。』


吉宗殿が目を閉じてまた溜息をつかれた。光国さん今まで相当色々とやらかしてきたんだろうなあ。


『では!行ってまいります!』


私達は吉宗殿に頭を下げ光国さんと城を出た。




犯人見つかると良いなあ。

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