第144話会食と城下町散策

ドアがノックされた。


『失礼します。』


夏目さんだ!その後ろから総理大臣の伊藤博文さんが入って来られた。伊藤博文さんは30代くらいだろうか。まだ若い。




私達は全員立ち上がりお辞儀した。


『初めまして。ボードウェン国より参りました。ボードウェン・ジェファーソンです。宜しく御願いします。』




『ようこそお越しくださいました。総理大臣の伊藤博文です。夏目が申してました。プラゲ語が本当にお上手ですね。』


伊藤さんは笑顔で一礼されて席に座られた。




やはり武家言葉よりこちらの標準語が話しやすい。


『飛行船の通行手形は出たんですか?』


夏目さんが光国さんに聞くと


『勿論。最初は迷われていたが推して書かせたわ。』


と笑っていた。強引に進めてくれた様だ。


『大丈夫だったんですか?』


心配そうに王子が質問すると笑って先程、すっかり主らの事を気に入ってくれた様だと言ってくれた。




『食事の用意をしておりますが如何ですか?』


伊藤さんの申し出にそう言えばお昼ご飯の時間だ!と思い出した。緊張ですっかり忘れていた。


言われて急にお腹が空く。


『ありがとうございます。宜しいのですか?』


『勿論ですよ。』




少し待つとレストランの店員の様な格好の方々が料理を運んできた。


『鰻の蒲焼と言うプラゲ国では夏に滋養強壮で食べられるのですが。お口に合うと良いのですが。』


夏目さんが料理の説明をされる。




うな重だ!うな重だー!


顔を見上げるとルイスの両親が満面の笑みを見せており、大司教さんもルイスもキャサリンも会長まで顔が緩んでいた。




スプーンとフォーク、ナイフまで用意されていた。


しかし、箸で食う!流石に大司教さんとルイスの両親はフォークで食べ始めたが。


「いつの間に練習したの?」


「んー。箸作った後でー。」


と私達は誤魔化しながら鰻を堪能する。




『箸を使われるんですね?』


伊藤さんと正岡さんが私達に少し驚いていたら夏目さんがボードウェン国で箸を出されたんですよ!本当に心遣いが素晴らしくてと褒め始めたので何となく此方も誤魔化せた。




鰻。天然物だ!ふっくらとしてタレが美味い!




『美味しいです!』


『このソースが絡んでいて米と合いますね!』


皆、気に入ってくれた様で良かった。


珍しそうに口にしてうんうん。美味しいと頷いている。




お吸い物とかお久しぶりです。幸せ。




プラゲ国の1食目に鰻とは贅沢だ。




昼食を堪能した後、少し談笑。


プラネットでの通訳は夏目さんと光国さんが付いてくれるそうだ。何とも有難い。


『本当にご馳走様でした。色々とお気遣いありがとう御座います!』


私達は全員でお辞儀をして総理官邸を後にする。


『今後もボードウェン国と国交を築けると良いですね。』


最後に伊藤さんが微笑まれた。


『宜しく御願いします。』


王子が再び頭を下げると嬉しそうだった。




『主ら行こうか!城下町!』


光国さんが張り切っている。


『楽しみです!』


皆、目がキラキラしている。リアル時代劇!私もとても楽しみだ。


バスで城下町の入口まで送って貰った。


「わー!本当に異国に来たって感じ!」


「着物ってやっぱり素敵ね。」


皆、テンションが上がっている。




『さあ、ボードウェン殿!両替商を探そうか!?』


夏目さんがちょっと意地悪そうに微笑んだ。


『両替商!そうだ。探さないと!』


夏目さんに漢字を習った皆が必死で暖簾の文字や看板の文字を見ている。




私やルイスも一緒にぐるっと辺りを見回す。


見当たらないなあ。


「少し歩きながら探そうか。」


そう言いながら見て回る。すれ違う町人や武士達は異人さんだと言う目でやはり見ている。


でも、交易がある為か怖がられてる感じは無い。


ふと気がついた事がある。




『徳川さん。武士の髪型ってその光国殿みたいに皆、何故ここ剃ってないんですか?』


剃る髷の形何て言ったっけ?忘れた。


城下町の武士の大半、町人は殆ど髷だけど剃ってない。ポニーテールな人も多い。


『さかやきか?』


『そうです!そうです!』


時代劇では皆そのイメージ。


『城へ入れる武士、すなわち侍は剃る。後は武士でも外交に携わる仕事に付く者もいるからのお。』


なるほど。さかやきがある人が偉い武士だと判断基準になるなあ。




『ありましたよ!両替商!』


王子がテンション高く叫ぶ。


おお!両替商あった!


中へは光国さんと夏目さんが先に入られた。


続いて私達もゾロゾロと入る。


店主は沢山の外国人に少し驚いていた。




『両替を御願いします。』


私達がプラゲ語で話し出すと店主は笑顔で


『どうぞ此方へ!』


と案内してくれた。パルドデアドルを円へ両替っと。


助かるよなあ。この時代に両替があるとは。


皆、結構持って来てるのね。


流石、お金持ち達。


「ルナリーの分はルイス出してやってね。エミリア、足りない時は遠慮しないで。出すから。」


会長が私達に優しく笑いかける。


「こう言う旅は楽しまなきゃね。」


クライスもカインもジョージも出すよと言ってくれている。皆、優しい。




両替を済ませ改めて城下町探索!




『私ら刀見に行くよ。』


ローズさんが耳元で小声で言われた。


『了解っす!行ってらっしゃい!』


グレンさんとローズさんは2人仲良く散策。


両替商前で後程待ち合わせ。




「あら?2人で大丈夫?」


「うん。デートだって。」


仲良しですねえ。と皆、心配はしていだが大人だし大丈夫だろうと納得してくれ私達は夏目さん光国さんと見て回る。


茶店に呉服屋、飯屋、宿屋が多いなあ。


反物は少し欲しいかも。




「見て!ルナリー!エミリア!」


「わあ!可愛い!」


「これ?髪止め?」


露天に可愛い簪が沢山!


買おうか!


「プレゼントしますよ。」


王子とルイスとカインが笑顔で背後から覗き込む。


「いーの?」


「ありがとうございます!」


「ジェファーソン。ありがと。」


皆、それぞれこれ?あれ?似合うかな?と選び買って貰った。


綺麗なトンボ玉の簪。後で髪を纏めて付けて見なきゃ。




その後は扇子を買ったり茶店に入ってみたり。


すっかり夕方になってしまった。

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