第143話吉宗殿

前世は母子家庭でじいちゃん、ばあちゃんに育てられた様なものだったので時代劇は多分フルコンプしている。


反抗期でやんちゃになっても見ていたくらいだ。


もうここ迄来たら遠山の金さんも居て欲しい。




襖がすっと開いた音がした。


『遠い所を良く参られた。』


吉宗殿の声が聞こえる。声は若そう。




『面を上げい!』




その声と共に顔を上げる。皆、此方の様子をチラチラ伺っていた。私、ルイス、キャサリン、会長に大司教さん、ルイスの両親は合図されると直ぐ顔を上げて居た。


やはりそうなるよね。




徳川吉宗殿の背後の壁には大きな葵のご紋があり、高そうな太刀と脇差か?刀は詳しく無いのだが飾られてあった。




将軍の着物は豪華で美しい装飾だ。年は若い。少し年下くらいかな。




『初めまして。ボードウェン国より参りましたボードウェン・ジェファーソンと申します。本日は、、、お時間を作って頂きありがとうございます。』


少し何と言うか迷ったのか王子が挨拶をした。


正直、将軍への敬語は私でも難しいと思うし。




『余は将軍、徳川吉宗じゃ。いや早、光国に聞いてはおったがそのプラゲ語。よう話せておる。』


「英語でも話せるがプラゲ語で良いか?」


突然、吉宗殿が英語で話されちょっとびっくりした。凄い、話せるんだ!


どうしよう?!と王子が助けを求める様に振り返った。




『恐れながら申し上げます。私はボードウェン国で神事を賜っております。アーゼス・ジョシュアと申します。我々もプラゲ語を学んで参りましたが上様に失礼に当たる言葉使いになる恐れもあります。それでも宜しいでしょうか?』


大司教さんがフォローしてくれた。




吉宗殿は更に関心した様な顔で


『良い、良い。気にするで無い。無礼講じゃ。』


と微笑まれた。優しい笑顔は松〇健さんぽい。


「ジェファーソン様。プラゲ語で大丈夫です。間違っても許して頂けると言われてますよ。」


大司教さんが王子にそう言うとありがとうございますと王子は笑顔になった。




『吉宗殿、先刻話しておった飛行船の通行手形は出せるかのお?』


光国さんは吉宗殿に割とラフに話し掛けている感じがした。


『大阪と琉球であったな。』


吉宗殿は懐から和紙の書状を出した。


光国さんに渡すと光国さんが王子の元に持ってきた。


『これを空港で見せれば良い。』


書状を開いて見せてくれたが達筆過ぎて読めない。




『何と書いてあるのでしょうか?』


王子が正直に言うと笑いながら確かに難しいなと言いながら説明してくれた。


飛行場へ飛行船を停めておける。燃料の補給が出来る。観光が出来る。自由に買い物が出来る等。旅先で困らない様に書いて下さったそうだ。




『とても有難いです。ありがとうございます!』


王子が改まって平に伏した。




『光国。本当にパルドデア人とは違うのお。』


『儂もボードウェン国での持て成しに感動した。この者達の国は素晴らしいぞ。』


パルドデアってそんなに酷いのだろうか?


ボードウェンが日本人的思考に近いんだよね。




『暫くプラネットに滞在されるのであろう?』


吉宗殿は滞在中は城へ泊まる様に言って下さった。凄い!城へお泊まり!!


『ありがとうございます。2日程滞在予定です。』


王子が言うと笑顔で城下町等も見て来ると良いと申された。




『申し訳ございませんがボードウェン殿。これから総理にもお目通り御願いします。』


正岡さんに言われて夏目さんの事を忘れていた事を思い出した。城で舞い上がっていたよ。




『夕刻には戻られよ。』


と吉宗殿に言われ今度は総理大臣の元へ向かう事になった。




吉宗殿が立ち上がり謁見終了の後。


全員、足が痺れて暫く立ち上がれなかった。久々の感覚だ。


侍の皆様には笑われたが


『よう耐えた!ボードウェン国の皆は素晴らしいな!』


『何より態度が良い。』


と褒められた。




総理の元には光国さんも着いて来てくれるそうだ。


やはり知っている人が居ると安心する。


侍の皆様は城に残られ今度はスーツの皆様とバスに乗り込む。




来た道を途中まで戻りそこから別方向へ。


また街道をバスは進む。


5分程で今度は少し近代的な街並みが見えて来た。そして総理官邸と言われる建物前にバスは停まった。


「パルドデア風ですね。」


「確かにモデルにしたのかな?」


王子とクライスが話している。


鹿鳴館!そうだ。こんな感じだろう。




『さあ、降りるぞ。この建物は珍しく無いであろう?』


光国さんが微笑みながらバスを降りるように促した。


見慣れた感じの洋風の佇まい。


建物内の内装は和洋折衷と言った感じかな。


パルドデア大使館に似ている。




「ここは靴で良い見たいね。」


「うん。そーみたいだな。」


キャサリンの緊張していた顔が少し綻んだ様に見えた。


城って緊張するよね。私はワクワクしてたけど。




『此方の部屋でお待ち下さい。』


正岡さんに案内された部屋はボードウェンでも良くある様な客間だった。


そこに高そうなテーブルクロスが掛けられたテーブルと装飾がされた椅子があった。


「椅子だー。良かった。」


ジョージの本音がポロリと漏れる。




席には私達と光国さんと正岡さんが座り、他のスーツの方が総理大臣を呼びに行った様だ。


伊藤博文さんか。夏目さんと言いお札の人ばかりだな。

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