第142話プラゲ城


空港内には総理管轄であろうスーツの男性5名、将軍管轄の武士5名と護衛が両管轄合わせて10人と言う20名のお迎えが来ていた。


夏目さんも徳川さんも居ない。ちょっと緊張する。




王子が緊張しながらもプラゲ語で


『本日は御出迎えありがとうございます。ボードウェン国より参りました。ボードウェン・ジェファーソンと申します。』


と頭を下げた。


少し沈黙が流れた後にスーツの男性が1歩前へ出た。


『ようこそお越しくださいました。夏目より伺っております。私は正岡常規と申します。』


代表で挨拶をされた男性は夏目さんと同じくらいの年齢の男性だった。


その後、武士が1歩前に出た。


『お初にお目にかかる。拙者、大岡忠相と申す。徳川殿の使者として仕り候。』


深々と頭を下げられた。


これは!!?大岡越前!!年は30代くらいだろう。




私達も揃って深々と頭を下げた。




『どうぞ此方へ。』


正岡さんの案内の元、彼等の後を着いて歩く。


空港内は明治時代風の建物でお洒落だった。




案内役の方々が無言なので私達も中々話が出来ずに居た。


歓迎されているのかいないのか。




空港の外に出る。


郊外なのだろうとは思っていたが。


時代劇の街道って感じ。テレビで見た世界の様だった。




そんな時代劇の風景に似つかわしくないバスが2台停まっていた。


あれに乗るんだろうなあ。


『今からプラゲ城へ向かいますので。』


正岡さんがバスへどうぞと乗るように促した。




『御案内ありがとうございます。』


『ありがとうございます。失礼します!』


と皆で頭を下げながら乗り込むと




『なんと言うか他の異人とは違うのお。』


『手を握ったり抱きついたりもして来ぬな。』


と武士達の間でコソコソと話しているのが聞こえた。


やっぱり警戒されてたのかなと思いながら座席の後方に皆で座った。


会長がそっと耳元で


「正岡子規と大岡越前だね!」


正岡さんはあの正岡子規か!なるほど。大岡越前は解ったけど。


「凄い顔ぶれだなあ。」


と言いながら大岡さんと正岡さんた数名も乗り込んで来たので静かに座って待った。


残りの方々はもう一台のバスに乗り込まれた。




『では、参ろう。』


大岡さんがそう言うとバスが発車した。




街道を進むと街が見えてきた。


城下町!!もっと明治時代っぽいかと思っていたが江戸感が強い。


『凄い!』


思わず声が出る。


『わー!綺麗!』


皆、外を興味深げに眺める。そのまんま時代劇!!


町の中は様々な店が並び活気に溢れ着物を着た町人や武士が沢山歩いている。


流石にバスは城下町には入らず車用の迂回路の様な道が城まで続いていた。




川沿いの柳の木何か見ると日本って感じがする。


少し走ると城の石垣が見えて来た。


江戸城では無くプラゲ城なんだよなあ。




石垣をグルっと回ると城門が見えお堀に架けられた橋を渡る。


平屋や二階建ての瓦屋根の城内の建物。広い庭。


『城の形も違いますね。』


『美しいですねえ。』


本丸だろう。バスの窓に張り付いて大きな城を見上げる。




『皆様、此方がプラゲ城でございます。到着致しました。』


バスが停り正岡さんが立ち上がる。


私達は座ったままペコりと頭を下げた。




先にプラゲ国の皆さんが降りられ荷物を持った私設兵と使用人そして私達が降りた。


皆、初めて見る城を見上げて感動している。


『素敵!』


『カッコいいですね。』


そう言った感想を述べる私達に大岡さんは微笑まれた。


『さあ、此方へ。』


武士達が城内へ着いてくる様に申された。正岡さん以外のスーツの人達は来られない様だ。




緊張する。城は初めてだし。


『あの。履物は何処で脱ぎますか?』


ふと疑問に思ったので尋ねて見た。


日本家屋では脱ぐのが当たり前だが城ではどうなんだ?


すると武士の方が驚いた様な嬉しそうな顔で


『もう少し中へ入られた所で御願い申し上げます。』


と言われた。




「皆、もう少ししたら靴は脱いでねー。」


とボードウェン語で伝える。あー。そうだ正座と土下座も教えておくの忘れてた。


「プラゲ国では靴は脱ぐんでしたね。」


王子はそう言えば辞書に書いてありましたね忘れてましたよと言った。私、その項目読んでないや。危ない危ない。




日本家屋の木の香り。


あー。良いなあ。この感じ。


靴を脱ぎ下足番の方に渡して城内へ上がった。




長い廊下。障子に煌びやかな絵の襖。




『此方で御座います。』


一際装飾の美しい松の絵の襖。謁見の間だろうと思ったが更に長い畳張りの廊下が続く。




そして、その奥に更に煌びやかな襖。小姓風の武士が襖を開けてくれた。


中は期待通りに一面の畳。それは綺麗で井草の良い香りがしてゴロ寝したい!!


そう言う衝動に駆られたくなる。




更に中は襖で仕切られていて閉まっていた。この奥か。良く時代劇で見る将軍が座っている上座が有るのだろう。




『どうぞ此方へ。』


座る様に促される。




「皆さん正式に将軍様が合図されるまで顔を上げてはいけません。」


大司教さんが話を始めてくれた。


「こうやって手を付いて顔を伏せて待ちます。」


土下座を教えてくれた。


「了解です。」


皆、頷いた。




少しすると徳川光国さんがやって来た。


『良くぞ参られた!ボードウェン国の諸君!』


『徳川殿!!』


見慣れた顔に皆の顔も綻ぶ。




『大岡、ご苦労であった。』


光国さんが大岡さんに声をかけてると大岡さんは頭を下げていた。外交の仕事に回されたと言っていたけど、光国さんの方がやはり偉い様だ。




『上様のおなーりー!』


廊下の方から大きな声が聞こえた。


いよいよか。


大岡さんも光国さんも伏せられたので私達も平に伏せる。


隣の襖の奥で音がした。吉宗殿。暴れん坊将軍と対面だ!


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