第112話そーなんです!

山小屋は比較的綺麗で使われた痕跡もあった。


茸採りの業者が利用してるのかもな。




「寒いね。。」


うん。服が濡れてるからな。


「まあ、待ちなよ、暖炉あるし。」




薪もあるし。新聞もあるし。マッチもあった。


「ラッキー!至れり尽くせり!」


勿論、現世では暖炉なんて自分で火をつけたことは無いけど前世ではバーベキューとかキャンプファイヤーとか経験あるので全然困らない。


「会長、凄いねー!」


クライスが嬉しそうなので張り切ってしまう。


良しよし!火がついたぞ!




「ほら、こっち来て!服乾かそう!」


脱いだが早いよな。と服を脱ぐとクライスも脱ぎ出した。




ごっ!ご馳走様です!!




椅子が4脚あったので暖炉の前に持ってきて服を干す。




「ほら、座って!足痛めたんだろ!」


上半身裸のクライスを椅子に座らせる。




「暖炉暖かいなあ。ありがとう会長!」


「気にするなよ。雨雲に気づかなかった。ごめん。」


こういう所は自分がしっかりしておかないといけない所だった。




「足見せて。」


やはり捻挫か。


うーん。どうしようかな。重ねてある薪の中から足首の添え木になりそうな木を探す。


「何してるの?」


「んー?添え木探してるんだよ。あった。これで良いか。」


リュックからタオルを取り出して包帯変わりに巻いて縛る。




「凄い!会長って何でも出来るんだね!!」


「いや。それほどでも。。」


照れるじゃないか!




「雨止まないね。どうしようか。」


クライスがしょんぼりしている。


暖炉の火を見つめながら、、、何か?これってさあ?と思い出して来た。




イベントだー!!!!




一瞬叫びそうになって口を抑える。クライスはどうしたの?と言う顔で見つめるので笑って誤魔化した。




『クライスと茸採りデート。山で遭難!そーなんです!』




親父ギャグじゃないよ。そう言うイベントなんだよ。


あの茸ゲットのシーンはデジャブじゃなーい!見たんだよー!




あれ?茸採りってルナリーと行くんじゃないの?何で僕なんだ?




もしかしたら違うかもしれない。このまま雨が夜まで止まないなら確実にイベントと思おう。




「昼ご飯でも食べようか?お弁当持ってきただろ?」


「うん。そうしようか!」




「家族に行先は言ってきた?」


クライスが帰宅しないとなると大騒ぎになりそうだ。


「うーん。誕生日プレゼント何かバレちゃうから警護人の1人にだけこっそりと。。後はルイスだけー。」




「僕も登山とは言ってきてない。」




騒ぎにならないと良いな。そっちが心配だ。


上手くルイスに連絡が行くと良いんだけど。後は警護人頼みか。




夕方になると益々、雨足は強まり雷も鳴っている。


参ったねー。


取り敢えず乾いた服を着る。


「会長と一緒に来て良かったー!」


クライスが笑顔でポカポカに乾いた服に袖を通してそう言った。




ずっきゅーん。神様。。僕をBLの道に進ませる気ですか?


落ち着け!ケビン!!




イベントでは1晩過ごす事になった2人はラブモード一気にアップ!攻略成功!ってなるかーい!!


「会長どうしたの?」


「いや、家族がこのまま帰らないと心配するから焦っている!」


と誤魔化した。


そうだよね。もう濡れて帰った方が良いのかなあ。不安そうなクライス。


ゲームなら泊まるんだろけれど現実を考えたら財閥御曹司が行方不明って洒落にならないよね。


帰るか?歩いて後1時間くらいかな。




雨が少し小降りになって来た。


あれ?声が聞こえる。




「おーーい!会長!クライスー!」


「いるかー?会長ー?」


この声!!




「クライス!迎えが来たよ!」


僕は急いで山小屋の扉を開けた。


「おーい!こっちだ!」


山小屋に向かって叫んでいたルイスとルナリーに呼び掛ける。


助かったー!心底そう思った。




「良かった!雨降り出したから心配して電話したらまだ帰宅してないって言うからさあ!」


ルイスとルナリーの後ろにはクライスの所の警護人も来ていた。


暖炉の火の煙が煙突から出ていて此処の場所が解ったらしい。




「ごめん。僕が捻挫しちゃって。」


クライスは2人と警護人に謝っていた。


気にするなってー!良かったとルナリーは笑っている。


2人からレインコートを受け取り着込む。




クライスは警護人に背負われた。


「ごめんね。本当にごめん。」


「いえいえ。無事で何よりですクライス様。」


話をしていた警護人なんだろう。ほっとした顔をしている。




「本当に助かったよ。」


色んな意味で。


「遭難しそうな山じゃ無くて良かったよなあ。」


「これくらいならなあ。」


ルイスとルナリーはヒョイヒョイと山道を降りて行く。運動神経良いなあ。


ルナリーならクライスを担いで山を降りそうだなと思った。




「で?プラナタリング茸採れたのか?」


「うん!」


クライスが背負われた状態で笑顔で答える。




「すげー!高級食材!」




「あっ。助けてくれたお礼に1本ずつあげるよ!」


そう言うとよっしゃーと叫んでいた。


「どうやって食うんだ?うちには料理人居ないぞ。」


ルナリーはルイスの家で食べようかなあと言っていた。




少し暗くなってきた19時頃に無事に下山出来た。




捻挫は心配されたが特に咎められる事も無かった。1晩帰らなかったら絶対、捜索願いとか出てただろう。怖い怖い。




「会長!今日は本当にありがとう!」


「ルイスとルナリーもありがとう!」


満面の笑みを浮かべるクライスにまた明日と別れを告げる。


行って良かった。




ルイスとルナリーに改めてお礼を言って帰路に着いた。






しかし、これも課金アプリのイベントだったのかなー?


1晩過ごしてたらどうなってたんだろう。


いやいやいやいや。




クライスの1番好感度高いのって今、僕だったりして。


あははは。まさかね。

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