第111話イベントですか?

私がルイスの家でお義母さんから借りるドレスを選んでいる頃。




クライスと会長は登山をしていたらしい。






「ごめんね。会長、付き合って貰って。」


「いや、気にしなくて良いよ。結構きついもんだなあ。」




父と母の結婚記念日に何を贈ろうか悩んだクライスは『ブラナタ山』に自生する高級食材のキノコを採りに行きたい!と思ったそうで僕を誘って来た。


両親の好物らしいが市場に出回らない。松茸、ポルチーニ、黒トリュフ?現世ではそんな扱いかなあ。それ以上かな。金持ちでも滅多にお目にかかれない代物であるには違いない。




「お金で買えるものって基本的に何でも自分達で買っちゃうから毎年、苦労してるんだよね。」




「うちの両親もそうかな。プレゼント選びって困るよね。」


所詮そのお金もお小遣いだし。手作りが出来る程器用でもない。




キノコか考えたなあ。プラナタリング茸は僕も1度、超高級レストランで食べた以来だ。余分に見つけたら僕も持って帰って料理して貰おう。




「しかし、何で僕を誘ったの?」


嬉しいけどね。


「1番体力ありそうなルイスを誘ったら今日はルナリーが家にドレス選びに来るとかで。今度の誕生日パーティーで着るドレスをルイスのお母様に借りるんだってー。」


へー。2人、進展してるじゃないか。良かった良かった。


僕次点なのね。




「ごめんね。次に体力ありそうなのって会長かなーって!」


クライスに笑顔で微笑まれると次点でもOKと思えた。




「確かにそうだね。ジョージは絶対、登山とか無理そうだし。カインは速攻で断りそう。」


ジェファーソンは警護人付いてくるだろうから更に問題外だ。


クライスはうんうんと頷いていた。




登山なんてこの世界では初めてだ。前世では遠足とかで登ったけど。登山趣味の人とか聞いた事無いし。文化の違いだなあ。




プラナタ山は700メートルちょっとの山で登山初心者の僕らにはきつい。富士山とかに比べたら全然低いけど。




「明日、筋肉痛なってそう。」


クライスが既に息が荒い。




「休憩しようか。」


座るのに調度良い岩があったので腰掛ける様に誘った。


水筒の水が美味い。


「あー!生き返るー!」


水を飲み笑顔になったクライス、可愛いなあ。




「後どのくらいかなあ?」


調べて来ましたよ。坊ちゃんは無計画なんだからー。


「1時間くらいだね。」


山頂までは行かないで済みそうで途中にプラナタリング茸が自生する木が生えている場所がある。と図鑑に載っていた。


木も茸の形状も調べて来たぞ!!




「結構遠いねー。1時間か。」


「登山なんてそんなもんですよ。まだ収穫に来る業者が居るから道は開けてる方だし。迷わないだけましですよ。」




後はちゃんと生えてるか?!だよね!


あると良いなあ。




頑張ろうとクライスを励ましながら登山。


途中で山の湧き水があったので飲んだり水筒に補充したり。初めて飲んだ湧き水にクライスは冷たくて美味しいって感動していた。


何か登山デートの様だ。




きついけどこのくらいで高級食材が手に入るとはねー。やっぱ変な世界観だ。本来なら普通に庶民が取り放題で登山しまくるよ。




「クライス、もう少しじゃないかな。頑張ろう。」


時間的にもそろそろな筈。


5月の登山は少し汗ばむ程度で結構良いなあ。木々の新緑も良いし。




「会長、疲れて来たー!」


クライスが手を出すので引っ張ってやる。


くそー!可愛いー!!




「あっ!プラナタの木だよ!クライス!」


図鑑で見たから間違いない。この根元に生えてる筈だ。




「会長!ありがとうー!この木かあ。探すぞー!」


急に元気になったクライスと木の根元を探して回る。




「なかなか見つからないもんだな。ん?」


これかな?その時クライスも


「会長!!見てあったよー!」




満面の笑みで茸を片手に微笑むクライス。可愛い!ってあれデジャブか?何か見た事ある気がする。




「あっ。僕も見つけたよー!」


プラナタリング茸ゲット!




その後も探すとあるある!合計6本も採れた。日本円だと50~60万円くらいになるかなと下世話な事を考えてしまう。




「もう、無いかなあ。」


「これだけ採れたら充分だよ。」


そうこう言ってるうちに、、、


ポツン、、


「雨だ!」




山は天候が変わりやすいって言うからね。


困ったな。止むかな。


咄嗟に木の下に避難したけど。




「どうする?会長?」


「下山するか?待つか?悩む所だよね。」




空を見上げると黒雲。こりゃ止みそうにないぞ。茸採りに目がくらんで全然、天候気にして無かった。




ドーン!!!




遠くに落雷が落ちた。


クライスは耳を塞いでいる。雷苦手なんだな。




「木の下は危ないから行こうか?」


雷が落ちたら死ぬし。。




空はゴロゴロ言っていてまた雷落ちそうだ。




あー。傘持ってくれば良かった。


「大丈夫?クライス?」


「ごめんね。会長、付き合わせちゃってこんな目に、、」


謝るクライスに何言ってるんだよと笑いかける。




わー!!!




急に大声を上げるクライス。振り返ると


「会長ごめん。滑った。。」


しかも足を挫いている様だ。




雨、足を挫いたクライス。さて、どうしよう。


おんぶ?




「ほら、肩貸すよ!」


流石におんぶする体力はない!




「ごめんー!」


さっきから謝ってばかりのクライスを励ましながら下山していると左手下方に山小屋を発見した。




「来る時は気づかなかった。死角だったのかな。」


まだ昼過ぎだし雨宿りした方が良いなあ。




「クライス、休もうか。」


そう言うとクライスは笑顔で頷いた。足も手当しないとな。




僕らは山小屋に避難した。

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