第98話閑話 ジェファーソン×キャサリン


警護人を付けたくなかったのかジェファーソン様は城へ行こう!と言い出した。


王子って大変なんだなあと思う。我が家も送迎はあるがそこまで煩くない。




ジェファーソン様の車に乗り込み城へ向かう。


婚約前は良く行っていたなあ。


小学生になり中学生になり段々とジェファーソン様との仲がギクシャクして来てからすっかり遠のいていた。




身分で選ばれた名ばかりの婚約者。そう言われるのが悔しくて沢山の敵を排除して来た。


ゲームの時は本当に邪魔な嫌な奴だったキャサリン。本気でジェファーソン様が好きだったんだと本人になって解った。




「どうしたの?キャサリン?」


「あっ。子供の頃を思い出してました。」


城門を潜り城は目の前。




「クライスとルイスとキャサリンは城へ良く遊びに来てくれてたもんね。」


車を降りジェファーソンが手を差し伸べる。私は手を取り車を降り本当に良く遊びましたねー。と懐かしんだ。




多分、婚約者にする為に親は必死だったのだと思う。何かにつけて城へ私を連れて行っていた。




使用人やメイド達が微笑んで頭を下げて来る。


私も笑顔で軽く会釈をする。




客間に通されるかと思っていたのに何とジェファーソン様の部屋に案内された。




初めて入る!!!婚約する前も婚約後も1度も通された事がない!




客間、パーティルーム、ダイニングルーム、ピアノや大きなソファが置かれた王族専用リビングルームまでは通された事がある。




ジェファーソン様のお部屋。




「素敵なお部屋ですね!」




ピアノ、大きなベッド、勉強用の机、ソファと洒落たテーブル。


本棚にはびっしりと楽譜集があった。




「何かまじまじと見られると恥ずかしいなあ。」


ジェファーソン様はソファに座ってと促した。いけない、部屋ガン見してたわ。




ふわりと座り心地の良いソファだ。


「お腹空いたよね?軽食で大丈夫?」


私は笑顔で頷いた。


もう何でも嬉しいです。ジェファーソン様のお部屋だあ。うっとりしてしまう。




使用人がサンドイッチとサラダと紅茶を運んで来た。私はありがとうと告げる。




「美味しいです。」


野菜が新鮮でパリっとしている。


ジェファーソン様も一緒に食べながら笑顔で学校の話や今度の教会でのデビューの話をした。




「僕も何か新しい曲考えてみようかなあ。キャサリンみたいに発想が新しくないんだよね。」


私の曲は前世の人の歌ですとは言えない。




「ジェファーソン様はピアノも歌も出来て素晴らしいと思いますよ。」


本当に私には無い才能だ。




「ねぇ。キャサリン!1つ良いかな?」


ジェファーソン様が真剣な顔で私を見詰める。


「はい。」


何だろう。見詰められると今でも照れる。




「2人っきりの時はジェファーソンって呼んで欲しい。本当は何時でも呼んで欲しいんだけど。。」


名前の呼び捨て?!


てっ、照れる!!ジェファーソン様も視線を逸らし少し顔を赤らめながらのお願いだった。


子供の頃から徹底的に躾られて来たので今、思うと幼少期からの付き合いで様を付けて呼んでいるのは私くらいだった。




「ジェファーソン、、。」


小声で呼んでみるとジェファーソン様の顔が満面の笑みになった。


「キャサリン!」


目の前に座っていたジェファーソン様が隣に座って来て距離感にドキドキしてしまう。




「もう1回!」


顔を近づけてリクエストしてくる。


「ジェファーソン。」




そう言うとそっと頬に触れありがとうと言ってチュっとキスをされた。




ファーストキス。。




それは余りにも突然で、優しくて柔らかくて。心の全てが幸せで満たされた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る