第83話後悔と決意と皆の優しさ
胸糞悪い。この国で葬儀に参列するのは初めてだった。教会の牧師さんが行うんだな。
参列者の人数はそれはそれは多く大半が楽団員だったが社交界からも多数見えている様だった。
刺殺事件なので警察の姿もチラホラ見えた。殺していないが少し緊張した。御遺体を確認したら鼻をケガしていた。流石にスネは確認していない。
その後、皆で挨拶をして回りながら私は楽団員達の顔を確認した。
全員参加しているかどうかは不明なのだがケガをしている人物は居なかった。
十中八九、私へ抱きついて来た人物はジミーさんだと思う。身長、体格も記憶と一致した。
あの時私が捕まえていればジミーさんは死なずに済んだのに。
後悔が頭を過ぎる。
泣き続けるジミーさんの両親や楽団員達。
やはり誰も巻き込んではいけない。自分の手で犯人を探さなきゃ。
「御愁傷様です。」
私達も楽団員達にかける言葉が見つからず皆、殆ど無言で参列した。
楽団員達が抱き合って泣いたり落ち込んでいる中。
ブルーさん、スミスさん、レオナルドさん、ベンジャミンさんの4人の顔は冷静で冷たい印象を受けた。
淡々とオンモードで話す時の会長の様な雰囲気だ。
私達はジミーさんを見送って教会を後にした。
「こんな事件が起こるとは思いませんでしたね。」
帰り道、王子がポツリと言った。
「犯人、早く見つかると良いですね。」
ジョージも呟く様に言った。私達は無言で頷いた。
これはゲームでは無い。ゲームオーバーでは無い。
犯人を見付けるまでまだ続く戦いだ。
視線の主はジミーさんだったんだろうか?
それとも真犯人なのだろうか?
私達は殆ど会話もなく歩きそのまま学校へ着いた。
練習する気分にはなれないのだがレッスンルームが唯一の落ち着ける場所となっていた。
本音で語り合える場所。
「ルナリー、話すよ。」
突然、会長が口を開いた。
「は?!何を?ダメだろ!」
私が1人で犯人探しをすると決めた所で何を言い出すんだ。
私は会長に詰め寄った。
「ゲームとか前世とか言わないから安心しろ」
会長は耳元でそっと呟いた。
「ルナリーに変な輩が付き纏っているんだ。」
会長は口にした。クソ!話だしやがった。私は不満を隠せない。
ルナリーの家に差出人不明の手紙が入っていた事。
楽団の定期公演のチケットが後日また差出人不明で投函されていた事。
ジミーさんに痴漢行為をされ、それを撃退。
その後にジミーさんの刺殺事件が起きた事。
前世やゲームの話は抜きにして生徒会長は簡潔に話してくれた。
「手紙の主はジミーさんだと思っていたのだがどうやら真犯人は別にいる様だ。ここまでが現状解っている事。」
「定期公演のチケットの事から真犯人も楽団員だと思われる。寄って楽団との練習中は男性はルナリーとの接触は極力避ける事。」
王子、カイン、クライス、ジョージは静かに頷いた。ルイスは不満そうにOKと指で合図した。
「ルナリー、内緒にしときたかったんだろうけど。ごめんね。皆を守る為の僕なりに出した判断なんだよ。」
会長は私に頭を下げた。会長も皆を守りたいんだな。私は頷いた。これでうちの男性達と練習中に会話せずに居られるし。
「バカ!!何で早く言ってくれなかったのよ!友達でしょ!」
キャサリンが涙目で怒ってきた。
「ごっごめん。そんな怒る事ないじゃん。」
「死んだらどうするのよ!!本当にバカ!」
「本当ですよ!ちゃんと知らないふりの演技くらい出来ます!そんな1人で怖い目に会って!ルナリーのバカ!」
エミリアにも怒られた。
「犯人がブルーさんの可能性もゼロじゃないんだぜ?」
私はキツいとは思ったがエミリアに告げた。エミリアの目が曇る。
「大丈夫です!何があっても!!」
エミリアはキッと睨んでそう言った。強くなったな。私は優しくエミリアの頭を撫でる。
「すまんな。キツイ事言って。大丈夫だと信じよう。」
キャサリンもエミリアの頭を撫でる。大丈夫だよね。3人で見つめ合って頷いた。
「姐さん、ジミーさんの痴漢行為どうやって撃退したの?」
カインが聞いてきたので説明してやった。
ワーオーと言う反応で
「じゃ帰宅はこれ迄通り1人で行けそうですね。流石、姐さん。」
「会長、僕の頭脳も使って下さいね!犯人探しますよ!」
カインはニヤリと笑った。
「勿論!僕も考えますよ。皆も演技出来ますよね?次の練習中は勝負です!」
王子も闘志を燃やした目をしている。
「無茶だけは止めてくれよ。」
心配だけど。私は皆の言葉が嬉しくて微笑んだ。
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