第84話ストーカーホイホイ

2月合同練習2回目。


事件の犯人も見つからないままだったので中止になるかと思ったが予定通り2月末に行われる事になった。


音楽ホールへ向かうバスの中。


不自然になら無いか少し皆、不安がある様だ。




「はい!では予定通り本日は作戦通りに決行します!」


王子が徐ろに発言した。


カインと会長が考案した『ストーカーホイホイ作戦』


「犯人はルナリーの歌声が聞きたい筈です。休憩中にルナリーは独唱しましょう。歌声に寄ってくる男、眺めている男を全てチェックします。」


私はGホイホイのエサの如く歌声で真犯人を誘き出すといった作戦だ。皆はバレない様に辺りを組まなくチェックすると言う。


上手く行くか不明だがやって見る事になった。






音楽ホールに到着し練習室にへ入った。


やはり前回より楽団員の覇気は無さそうで口数も少な目。


「本日も宜しく御願いします。」


王子が代表して挨拶し私達も宜しく御願いしますと一礼する。




「アリア学院の皆様にもジミーの葬儀に参列して頂きありがとうございました。」


スミスさんが頭を下げて来た。私達も改めて頭を下げる。


「大変申し訳ないのですが追悼を込めてレクイエムを公演会のラストに演奏する事にしました。良かったら歌って頂きたい。」




私達は悩む事も無く了承した。




一体どれくらい練習したのかと言うくらいオケが上手くなっていた。ダメ出しは専ら私達が中心で申し訳無い限りだった。


しかし、前回に比べると私達も成長が見え午前中の練習は割とスムーズに終了。午後はレクイエムをやるそうだ。




調度良いので『ストーカーホイホイ』はレクイエムを歌おう。


皆、お昼ご飯を急いで食べスタンバイ。




ロビーの離れた位置にキャサリンと王子とエミリア。


2階席に上がった吹き抜けから1階ロビーを監視するルイスとジョージとクライス。


楽屋からロビーへ抜ける通り道のベンチにカインと生徒会長が座った。




私は客席への扉前付近、調度ロビーと楽屋入口の中間辺りで1人楽譜を広げる。


勿論、有名な曲だし初見でも無いのでソコソコは歌える筈だ。




ソプラノのソロが少しあるのでそこから歌ってみる。


楽屋まで声が聞こえると良いのだが。




静まったロビーに声が響き渡る。




丁寧に優しくそして激しく。




偶然か聞きに来たのか不明だが客席の扉が開きスミスさんが現れた。


スミスさんは少し聞いていたが頭をすっと下げて楽屋へ向かわれた。




楽屋からリサさんとレオナルドさんのホルンコンビがやって来た。この2人は笑顔で此方の歌を聞いている。




歌も中盤くらいの頃にブルーさん、マリーさん、アーリーさんの木管楽器3人が聞きに来た。この3人も笑顔で聞き入っている。




終盤にはあと3人程知らない人物が来て聞いていった。


歌い終わって、拍手と共に一礼する。


「お恥ずかしい歌声をお聞かせしました。」


実際、上出来な歌声では無かったし。人前で披露するのはちょっと照れた。


「上手いわねぇ」


リサさんとマリーさんがニッコリと微笑まれている。




ブルーさんもレオナルドさんも女性同伴であったが来たなあ。


この前の視線と言いやはりこの2人が怪しいのか?


または指揮者スミスさん。でも途中で楽屋行ったし。




皆に囲まれて少し会話をしたが何とも怪しくは無い。


キャサリンがロビーから此方にやって来た。


「お疲れ様。どう?ソロ歌えそう?」


しらっと寄ってきて私の隣に来て楽団員に頭を下げる。


「うーん?まだ全然、声出てないね。練習しなくちゃ。」


私はキャサリンにそう言った。


「じゃあっちで一緒にやりましょ。」


キャサリンは笑顔で私の手を引く。


「では、また午後の練習で!」


笑顔で楽団員に頭を下げてロビーに向かった。






「大丈夫だった?」


「OKよ。上手く歌えてたし。誤魔化せてる筈。」


キャサリンと小声で会話しながら後ろは振り返らない。




あの独特の視線は感じる事が出来なかった。


王子とエミリアが座っている所まで行き後ろを振り返る。皆、楽屋に戻った様だ。


2階観察組と楽屋口観察組もロビーに向かって歩いて来ていた。




「報告会開始します。」


王子が仕切ってくれる。




「ロビーにはルナリーの元に集まった人達以外は見当たりませんでした。」




「2階同じく。視線具合を見るとレオナルドさんが怪しいかも。」


とクライスが言った。




「楽屋口はねー。」


生徒会長が少し悩むように話だした。


「ルナリーの前から立ち去ったんだけどスミスさん。僕らの隣に座って歌を聞いて楽譜に書き込みしてたんだよね。」


「ずっと、隣で聞いてましたね。」


生徒会長とカインは顔を見合わせて頷き合う。


「純粋に歌を聞いてるだけだとは思うけど。後はレオナルドさんとリサさんは直ぐ一緒に出てきたなあ。聞きに行こうって感じだったけど。」




「アレックスさん所はアレックスさんが先に楽屋を出た。その後でマリーさんとアーリーさんが追ってきた感じ。」




それを聞いてエミリアが辛そうな顔をしていた。




「まだ名前を紹介されてない3人の男性は第2ヴァイオリン室から揃って出てきました。」


生徒会長とカインはそう報告した。




「私は葬儀中の顔色でコンマスのベンジャミンさんも疑ってたんだが。来なかったっすね。」


あの時の冷静な顔付きのメンバー。スミスさん、レオナルドさん、アレックスさん。来たな。




「気を取り直して午後練も頑張りましょう!まだ解りません!皆で探しますよ!」


王子はエミリアを励まし、私達も気合いを入れた。

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