第81話遭遇

水曜日は楽団休みだったなあ。




変な手紙来てるかもな。


放課後の練習後、日課のランニングで帰宅する。




街灯は国道しかなく私の住む町は無い。時代的にも無いんだろけど。暗いよなあ。そう思いながら走る。


80年代の眠らない街、東京に居た私的には夜は暗いし何にも娯楽が無い国だと思う。


もっとディスコとかゲームセンターとかで遊びたい。




あー!今日も良く走った。家が見え息を整えながら歩き出す。




暗闇の中、ふっと気配を感じた。殺気が無く気が付くのが遅れた。しまった!!殺られる!?




そう思った瞬間背後から。




抱きつかれた。げっ!そっちかよ。




顔は見えない。まあまあ力も強い。


フーフーと息が荒く気持ち悪い。


「離せ!」


少し揺さぶって見たが離す気配は無い。


無理やり暴れても良いんだけど。


何か気持ち悪いし。




羽交い締めにされてはいるがこう言う時も対象出来るんだよなあ、


思いっ切りスネに踵で蹴りを入れた。


「グッッ!」


犯人の手が緩んだ所でそのまま顔面に思いっ切り裏拳を炸裂させた。


「ぐはっ!」


犯人は顔面を抑えている。


「痛かったか?」


顔が見えねーなあ。


「誰だ?」


ポケットから特殊警棒を取り出す。






「ルナリー?帰ってるの?外が何か騒がしいけどー?」


家の方から母の声が聞こえた。


チッ!舌打ちをして自宅の方を振り返った隙に犯人は蹴られた足を少し引き摺りながらも走って逃げ出した。


追うか?


「ルナリー?」


あーもー!クソ!捕まえ損ねた!


「帰ってるよ!!」


私はイライラしながら叫んだ。




「お帰りなさい!もう何、騒いでたのよ!」


「うるせー!」


そう言って家に入ると、また反抗期が悪化したと母はブツブツ言っていた。




制服を着替えに自室に入る。


明るい所で見ると右手の甲に血が付いていた。鼻血か。


裏拳の時だな。


明日、楽団に行ってみるか。犯人の顔にアザくらい出来てるだろうし。スネ見せて貰っても良いな。青アザ確定!




そうだ!会長に電話しよーっと!


「こんばんは。アリア学院のウェールズと申します。ケビンさんいらっしゃいますか?」


しばらくすると会長が電話に出た。


「もしもし会長?」


「ルナリー?!どうした?何かあった?」


突然の電話に会長は驚いているような声だった。




「さっき家の前でさあ、、」


私は背後から抱きつかれたので最終的に裏拳で鼻血を出すまで追い込んだ事を伝えた。


「わー。痛そう。流石、強いよね」


会長は犯人を同情するかの様な呆れた声になった。




「だから明日、放課後、楽団に犯人探しに行きたいんだ。顔やスネにアザ出来てる筈だから。」


そう言うと賛成してくれた。




「じゃあ、念の為にルイスも連れて行こう!捕まえるんだよね?」


「あー!前世から知りたかった犯人が解る!!」


会長のテンションが上がっている。気持ちは良く解る。




「じゃ!明日、朝から打ち合わせしよう。生徒会室にルイスと来てくれ!」


そう言われて電話を切った。




明日が楽しみだ。不意をついて抱きつかれた事だけは反省。まだまだ瞬発力が足りねぇ。鍛えないとな!

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