第80話2月合同練習②


午後からの練習はカインソロ後から。


クライスのソロはカイン程は長くない。先ずは楽団員達がスミスさんの納得の行くまでやり直しを繰り返していた。


ほんの少しの違いなのだが良くなってきている。交響曲などは指揮者で変わる。同じ楽団員でも違ってくるから不思議だ。




「次、テノールソロ」


クライスが呼ばれ歌が始まった。


「もっと壮大に!歓喜の歌なんですよ」


注意を受けながらクライスの声の伸びが良くなっていく。練習を聞いているだけでも凄く勉強になる。自分のコンクールにも活かせそうだ。


クライスのソロパートがOKが出た所で30分休憩となった。




「疲れた。」


こんなに扱かれたのは初めてだと言うクライス。攻略対象者達は割と努力せずとも上手い。


私も今までの文化祭、ミサや今度のコンクールとかでなければ授業だけなら特別な努力は要らなかったかもしれない。




楽団員には楽屋があるが私達には無いので休憩は必然的にロビーかそのまま練習室でとなる。




ロビーに向かう所で背後から声をかけられた。


「楽屋においで。珈琲か紅茶を入れるよ」


男性奏者の人はニッコリと微笑んだ。


「良いんですか?」


疲れ顔のクライスが嬉しそうに食いつく。


男性奏者は頷き楽屋へ案内された。




楽屋は楽器ごとに分かれて居た。人数の多いヴァイオリンは第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンと分けられている様だ。


彼が案内してくれた所は金管楽器の楽屋であった。


部屋には5人の男性奏者と1人の女性奏者が居た。連れて来てくれた方を含めて7人の金管楽器奏者達。


「連れてきたよ。」


彼は中のメンバーに微笑んだ。


「お疲れ様。疲れたでしょ?」


見覚えのある顔だと思ったらこの前の演奏会で声をかけてきた女性だった。


私達はお邪魔しますと頭を下げて入室する。


この前女性と一緒に居た男性奏者も居た。だいたい皆、楽器毎に行動しているんだな。お昼に話し掛けて来た仲良し8人は木管楽器グループなんだろう。


女性奏者の名前はリサさんと言ってホルン奏者であった。


美味しい紅茶を入れてくれてホッと一息つく。




「美味しいですねえ」


ジョージが幸せそうに紅茶を飲む。


「ありがとうございます。」


王子もお礼を述べて紅茶を嗜んで居た。




ルイスと私の言葉使い難あり猫被り組は今回は極力話をしない事になったので逆に助かっている。ルイスとベタベタする事もなく私達は奏者達とも関わらないで無口キャラを通せる。




人間観察中。


この前会った男性もホルン奏者のレオナルドさん、トランペットのダニエルさん、リックさん、クラリネットのジミーさん、バズさん、チューバのアレンさん。


名前が覚えられない。楽団員多すぎる。


まだ60~70人も居る。




もう俺、犯人です。って出て来てくれたら楽なのに。




あの視線の主。には見えねーなあ。皆、爽やかだし。


喉も潤った所で練習再開の時間となり練習室に戻る。




「先程の続きから」


私達もスタンバイしているが楽団の練習の方がなかなかOKが出ない。結局ほとんど歌わずに17時となった。




「ジェファーソン様、お時間大丈夫ですか?」


スミスさんが王子を見た。まだやる気か。


王子は少しならと言うと1回だけ通して今日の練習は終了という事になった。




今日の練習で前半の演奏は確かに良くなっていた。カインとクライスも上手くなっている。釣られて歌いやすい。


朝よりも良く声も出た。




「お疲れ様。次は10日後ですね」




「お疲れ様でした。ありがとうございました。」


楽団員、私達共々スミスさんに一礼し本日は解散。






音楽ホールを出る時にねっとりした視線を感じた。


私は直ぐに後ろを振り返る。


私に釣られてエミリアとキャサリンも振り返った。




居たのは金管楽器奏者達と木管楽器奏者の皆さんで笑顔で手を振ってくれていた。


「またねー!」


リサさん、マリーさん、アーリーさんが笑顔でそう言っていた。




エミリアが嬉しそうに手を振りお辞儀をした。


私とキャサリンも笑顔で頭を下げる。




おいおい!この中に居るのか?


視線は確かにこの前と同じ気持ち悪さだった。


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