第62話ルイスの両親

朝、外を見るとボードウェン国が見えてきていた。


無事帰宅だなあ。


着陸時には叫ぶカインを諌め地上へ降りた。任務完了って感じだ。


「外、寒いわよ!」


キャサリンにそう言われて慌てて上着を羽織る。気分は南国のままだった。


「うおー。確かにさむー!」


もう11月末だもんなあ。ミサまで1ヶ月切ったし。


降りると各家庭の警護人達の迎えと王様と大司教様が居た。


「無事海外遠征を終えました。送り出して頂きありがとうございました。」


王子と生徒会長が代表でお礼を述べている。私達は後方でお辞儀をした。


「今日は帰宅してゆっくり休んで下さい。練習は明日の放課後から頑張りましょう!」


王子がそう言って私達は解散する。


「送るわよ!」


キャサリンがエミリアを誘っている。


「ルナリーはあっちでしょ?」


ルイスの方を指してウインクして来た。はい。そうします。




「乗れ」


ルイスに車のドアを開けて貰う。


マッケンジー家の車に乗るのは久々だ。車は運転手さんが居るから何か話しにくいんだよねー。


「ルイスって兄弟はいるの?」


「あれ?言わなかったか?兄が居るから俺は音楽を自由にやらせて貰ってる」


そかそか。次男ってまだ救いだよなと思う。


「お父さんとお母さんてどんな感じ?」


と聞くとニヤっと笑い


「気になるか?」


とやけに嬉しそうだった。しかし次の瞬間には真顔になり


「クソ真面目」


とボソリと答えた。


まあ予想通りだよね。


「お前のとこは?」


「普通に優しくてまともな両親。最近はもう地を出してるから我が家は居心地良いよ」


と言うと羨ましそうな顔をした。


「でも、反抗期だと思われている」


と言うと爆笑していた。




「送ってくれてありがと」


ルイスは降りてトランクを持ってくれる。


「明日から迎えに来ていいか?」


ちょっと照れながら言うルイスに


「勿論!待ってる!」


と答えた。嬉しい。


「単車は寒いから手袋とかして来いよ」


あー。確かに冬は防寒しないと風が寒いんだよね。


「うん!通学楽しみー!」


そう言うと頭をくしゃっと撫でられる。


「また明日な!」


ルイスを見送った。明日から本気で練習しないとな。


皆の御両親、特にルイスの御両親の目が1番怖い。最高の出来でミサコンサートを成功させないと。




家に帰ると母は相変わらず何かやらかさなかったか?粗相はしなかったかと心配していた。


「めっちゃ頑張ったぜ!大丈夫だったって!」


「はぁ。本当にその言葉使い。困った娘だわ」


ルナリー反抗期?継続中。。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




自宅に帰る。相変わらずデカい家。


記憶が戻る前は当たり前だと思っていたがルナリーが躊躇するのも解る。


昔、俺には好きな人がいると宣言はしたけれど。庶民がこの家に入るって言うのは説得が必要不可欠だ。


一生猫被らせるってのも可哀想だし俺もこのまま素を出さずに居られるかと言われると息が詰まる。俺も前世は庶民の末端だったしなあ。


「お帰りなさいルイス様」


執事やメイドが迎える。




「旦那様や奥様に海外遠征のお話をされては?」


執事がそう言ってくる。何時もなら黙って自分の部屋に入る所なんだけど。様子を探るかな。


「ただいま」


そう言ってリビングルームに入ると両親揃ってお茶をしていて此方を振り返った。話をするのは本当に久しぶりだ。


「お帰りなさいルイス!」


「海外遠征お疲れ様!勉強になったか?」


両親は悪い人ではない。それは解っている。




「大変、勉強になりましたよ。クリスマスミサコンサート楽しみにして下さい」


当たり障りのない返事をする。


部屋に戻ろうかと思ったが父がお茶を勧めて来るので席につく。




「ジェファーソン様の誕生日パーティーでエスコートした女性とは付き合っているのかね?」


やっぱ伝わっていたか。あれだけ噂流したんだもんな。


自分の中では周りから固めようとした行為だった。




「庶民の方なんですってね?」


母が言う。目が笑ってない。




「ええ、そうですよ。付き合っています」


正確には昨日、両思いだと知りましたが。顔色を変えず冷静に。こういう時の俺は生徒会長と同じだなあと思う。




「評判は良い」


父はそう言った。




沈黙がきつい。評判は。。か。頑張って猫被ってたもんな。


でも庶民。そう言いたいんだろう?


お前の身分がムカつく!そう言ったルナリーの言葉が今更、刺さる。ルナリーは将来を考えてくれてたんだ俺って本当にバカだ。




「反対されても絶対!結婚する!」


俺は言い切った。




「ちょっと待ちなさいルイス。まだお会いしてないのよ」


母が覚めた顔で言う。


「きちんと紹介しなさい。話はそれからだ。」


父も母も意見は同じだ。




「解りました。後日御願いします。それでは。」


俺は立ち上がって一礼する。リビングを出ると溜息が出た。


こりゃ無理だったら駆け落ちでもするかな。

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