第61話飛行船の中で


朝、お世話になった南ピアーナ共和国の王族の皆様や教会の司祭様にお礼を述べた。大学コーラス部の部長さんも見送りに来てくれた。本当に申し訳なかったと私達に謝罪をしてくれた。




また来たい。そう思う。別れを告げ飛行船に乗り込む。


明日にはボードウェン国だなあ。




「姐さん!ルイス!何があっても僕は2人の間に座ります!」


カインが真剣に訴えてくる。


「勿論、睨むぞ!」


「たっぷり苛めてやろう」


カインは嬉しそうに笑った。行きよりも元気そうだ。それでも出発時には叫んでいたので落ち着くように頑張った。


「あー。落ち着いたー。流石、姐さんとルイス。」


「だいぶ慣れたんじゃないか?来た時より落ち着きが早かったぞ。」


私もそう思う。




「突然すみません!」


王子が立ち上がった。


「どした?」




「もし、良かったら何ですが!クリスマスミサに生徒会長にも出て欲しいんです!」




「いいんじゃないか?」


ルイスが第一声を上げる。なあ?と私も見る。


「私もあの歌には生徒会長の高音が欲しい!」


一緒に練習して思っていた。




「待って下さい!僕が?」


生徒会長は慌てていた。サイボーグ珍しく動揺している。




「はい!もう生徒会長が居たらもっと完成度が上がると言うのを痛感しました」


王子は是非と言う顔をしている。




「僕は賛成!正直最初は遠征に同行も反対だったんだけど。会長は素直に上手いと思ったし。何より一緒の部屋で楽しかったです。凄く良い人って解りました!」


クライスがニッコリと笑う。


「僕も!沢山勉強になったし!会長良い人です!」


ジョージもクライスに賛同する。同部屋で仲良くなったんだなあ。


「私も賛成ですよ。助けて頂きありがとうございました」


エミリアが会長にぺこりとお辞儀をする。


「反対理由は無いです。学ぶ事が多くて嬉しいぐらいですよ」


とカイン。




「気持ちはジェファーソン様と一緒です」


キャサリンが最後に笑顔で答えた。




生徒会長の眉間に皺が寄っている。


「この遠征に参加した時に嫌な予感だけはしてましたよ」


そう言って溜息を付く。


「はあー!1回だけですよ!クリスマスミサだけ!」


会長がそう言った瞬間、拍手が起きた。


「ありがとうございます!楽しくなってきましたねー」


王子が何より嬉しそうだ。




「1つ条件良いですか?」


生徒会長が私達を見る。


「条件?ですか」


王子は頷く。




「名前の呼び捨てまたは名前の様付けで呼びます。正直、面倒くさかったんですよね。気を付けてはいましたが。」


と意外な言葉が来た。




「えっ?そんな事?」


もっと難題かと思っていたのに拍子抜けした王子は思わず言葉を漏らした。




「そんな事じゃないですよ。これでも気を使っていたんです。立場上って物がありますから。」




「じゃあ!私もタメ口でいいですか?会長!」


私が手を上げる。


「俺もー!」


ルイスも手を上げる。




「どうぞ。僕自身、割と適当なんですよ。生徒会長やってる時意外は」


そう言って笑った。


「生徒会長が笑ったわ!!」


キャサリンが目を丸くしている。


いや、皆驚いている。


「オンとオフの使い分けです。僕も笑いますよ」


とニヤっと微笑んだ。




サイボーグのあだ名を撤回せねばな!うん!


そう思った。




生徒会長がクリスマスミサコンサートメンバーに加わった。


後は!ミサを成功させるだけだ!


上流階級の前での披露。皆の家族も来るのかな。


来るのか?!ルイスの両親も!




「ねえ。クリスマスミサに皆の両親来るの?」


そう言うと。皆、忘れていたのか?あっと言う顔をした。




「来ますわね。披露するんだ。親に。。」


キャサリンがボソッと呟いた。


「来ますよ。両親。。」


クライスも忘れていた様で何とも言えない顔をしている。




他の皆の家族も来る様で少々恥ずかしさと成功させないと親にも恥をかかせるというプレッシャーがのしかかった。来ないのはうちとエミリアの家族だけか。


「ルナリー」


ルイスが此方を見つめる。


「親に紹介するから」


うっ。。私までプレッシャーが!


「いやいや、親に紹介とかまだ早いだろ!」


猫を被るだけじゃ済まねえ。猫の着ぐるみを着るレベルだ。


「俺も高校入学してから殆ど喋ってないからなあ。あんまし言いたかねーんだけど」


ルイスも記憶が戻ってから家で良い子で居るのが辛いそうだ。


「お前も大変なんだよなあ。無理はするなよ」


反対されるだろうから。


「心配するな。何とかするさ」


ルイスは優しく微笑んだ。

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