第31話強者共が夢の跡


「文化祭コンクール午後の部を開演致します」


ホール内に司会者のアナウンスが響く。


エントリー①の出場は5組で私達は奇跡のラスト。ガードナーと仲間達は3番手だ。


「僕達、疲労してますけど案外良い勝負かもしれませんよ。ガードナー家の令嬢のメンタル折ってますから」


カインがふふふっと笑った。


「そーなんですよ!カイン様、令嬢を追い詰めて最後は泣かせてましたよ!」


エミリアが熱く語る。




「あれ、本来のカインよ。ドSなの」


キャサリンが耳打ちしてくる。


「じゃ今、ドSでドMなのか?!」


うんうんうん。と激しく首を縦に振る。そうか、変な性癖産ませて申し訳なかったなあ。




2組は控え室で聴く事になる。残りはステージ横で。


始まった。


3年生。個性の強いグループか。


「混声3部のアレンジだね。」


「上手いけどぶつかるね声」


独唱なら皆プロ並みなんだろうけど。




次は2年生。1組だけか。ガードナー家に潰されたのかなと思う。


「あー。このヴァイオリンはダメ」


ルイスが出だしでダメ出しをする。


「緊張してますね声も」


曲も終盤


「行こうガードナー達のを聞きに!」


ステージ横へ移動する。




ガードナー達の曲は宗教曲。上手い!メンタル削られてもこの纏まり。ガードナー、あんた上手いよ。何でわざわざこんな嫌がらせしたんだ。伸びがあり、声量もある良い声だ。嫌がらせしなくても勝てただろ?




次の3年はジョージの言う通り男性が弱かった。悪くは無い。そして私達の出番が回って来る。




「一人一人の声や音を聞いて。皆で1つになろう」


私達は笑顔で舞台に上がる。約3ヶ月の付き合いか。


あっ。これが終わったら解散するんだ。


少し切なくなる。それは皆一緒。


見つめ合い。合図を送る。




エミリアのフルートが美しく響く。


そしてジョージのチェロが荘厳さを高める。


ルイスのヴァイオリン上手いなあ。




さあ、私達も。


高らかに歌い上げろ!!




カインとキャサリンがしっかり支えてくれる。


私とクライスが高音をしっかりと出す。


時折見つめ合い。笑顔で。




ステージ上で私達は1つになった。




演奏が終わる。会場から拍手が沸き起こる。


気持ち良い。


礼をしてステージを下りる。




「あー!解散したくねー!」


私は思いのまま叫ぶ


「あはは姐さん!僕も!」


「姐さんー!僕もでーす!」


「こんな楽しいメンバーで集まらないの勿体ないですよ」


「そりゃそーだー」


それぞれに笑顔で。




「また何か目標見つけてやりましょ」


キャサリン良い事言うなあ!




控え室の前を通り観客席へ向かう。コンテストの結果発表があるからだ。




王子、キャサリン、私、ルイスと前列に座り後ろの席に残り4人が座った。


「行けたかな?」


「3位は絶対行けたと思う」


キャサリンとボソボソと話す。私も3位は固いと思う。




「最後にエントリー①部門の発表です。呼ばれたグループの代表は前へ」




「いよいよー!」


ドキドキしながら。祈る。


「第3位 3年、、」


外した。次、、。


「第2位 3年、、、」


えっ。ガードナー達が呼ばれてない。嘘。




「第1位 3年ガードナー、、」


歓声と拍手が起きる。入らなかっかった。3位にも。


「尚、今回は同率1位が御座います。第1位 ボードウェン、、」


私達は顔を見合わせる。


ん?1位?


「あれ?同点なんだ」


「まさかの同点」




「代表者はステージへ」




「ほら王子!!」


私達は王子を送り出す。何か意図的に同点にされた気もするけどなあ。


表彰を受ける王子をめっちゃ拍手した。


「つまんねー。俺、勝ったと思ったけど」


「だーねー。くそ!ちょっとムカつく」


ルイスと顔を見合わせる。


「まっしゃーねーな?」


「だーなあ」


ルイスがまだ縄の後が残る手首を優しく撫でるのがくすぐったい。心配してるんだろうけど。




放課後。レッスンルームで打ち上げ。


「お疲れ様でした!」


「1位おめでとうー!」


ジュースで乾杯!




その時レッスンルームのドアがノックされた。


「ガードナーです。」


私達はドアの方を一斉に見る。


「入っていいよ!」


私はドアに向かって叫ぶ。




ガードナーは頭を下げて来た。


「ルナリーさん本当に申し訳御座いませんでした。」


皆、無言で彼女を睨んでいる。


やれやれ。


「私だけじゃねーぞ。皆に謝れよ!捜す方も大変だったんだ」


ガードナーは再び頭を下げる。


「皆様にも本当に御迷惑をお掛けしました。申し訳御座いません。」




「お前さあ?前から聞きたかったんだけど何でそんなビビってたの?」


「正々堂々勝負するって言葉知ってる?」




「私達のグループは1年生の時からずっと組んでて」


ガードナーが俯いて話しだす。


「やっとここ迄来たの。1年の時は入賞ならず、2年生で3位。今回ようやく優勝が見えた時だった。」


「貴女達の練習を聴いてしまったのよ!!まだ結成1ヶ月足らずの貴女達の。。。」


俯いているガードナーの声に涙が混じっている。


「悔しかった。負けるかもと思った。3年間の私達と互角だと思ったわ。」


「ずるいわよ貴女達の才能」




うーん。主人公と攻略対象者と悪役令嬢の集まりだもんなあ。そこの所は責められても仕方ない気がする。




「嫉妬したんだなあ?」


「はい。。。」




「だからって、脅しや暴力や監禁はやっちゃならねぇ。そこは解るよな?」


「はい。。。」


本来なら此奴を殴る所なんだけど。




「警護人連れて来い。私がやられたのはソイツにだ」


ガードナーは泣き顔を上げる。


「解りました」


頭を下げレッスンルームを出ていく。




「良かったの?姐さん。訴えようよ」


カインはどうしても犯罪者にしたい様だ。




ルイスの顔を見ると相当キレている。狂犬だな。




ガードナーが警護人を連れてきた。私の腹に一撃入れたヤツ!!


こいつだ!こいつ!


「ルイス、私だけじゃ効かねーだろうから手伝え」


ルイスはニヤっと笑った。




「おい!ガードナー!この警護人好きにして良いよな?」


「はっはい!」




そこからは私がされたように鳩尾に一撃。倒れなかったのでルイスも一撃。


抵抗もしてきたが2人がかりでストレスを解消するようにボコボコにした。


「スッキリしたー!」


「俺もー!」


私達はハイタッチ!




「今度やったら次はこれお前にやるから」


倒れている警護人を指差してガードナーを見る。


ガードナーは青ざめて震えていた。


まあ、ちょっと甘いけど。お仕置き終了。


ガードナーは泣きながら警護人を連れて、申し訳御座いませんでしたとまた謝りながら出ていった。




その後は打ち上げを再開した。


なんだかんだでこの暴行現場を見て笑い合える皆も凄いな。


笑いが込み上げる。


「ルナリーどうしたの?」


「いやー?怖くないのかなって?私とルイスが」




「あー。もうね。ジョージの事件の時から慣れたわ」


「そうですね。姐さんも兄貴も強い」


「たまらなかったです。目の前で見れて僕も。幸せ」


カインもクライスもうっとりとしている。




やっぱ解散は勿体ねーな。また来年の文化祭コンクールもこのメンバーで。そう言いながら。


今後もずっと集まろうと決めた。




王子は明日の文化祭を一緒に回ろうとキャサリンを誘っていた。


キャサリンは顔を赤らめている。




そして、私もルイスに誘われて回る事になった。


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