第27話草食系×草食系、草食系×肉食系(鈍感)

王子に祝いの歌を。ザワザワとそんな空気になっていく会場。


参ったな。呼ぶんじゃなかったあの令嬢達。止めようか、絶対皆困っている筈だ。


そう思った時だった。ルナリーか会場の中央へ出て来た。




大丈夫だろうか。曲も迷っているようだし。僕の大事な友達に恥をかかせようとする令嬢や大人達。怒鳴ってやりたい。でも、王子と言う立場はこんな時キツい。




「作詞、フラーム様。作曲、マッケンジー様とウェールズ、、」


突然ルナリーが言い出した。


作詞?!キャサリンが??


作曲?ルイスにルナリー?編曲まで?


オリジナルソング。凄くびっくりした。




「ワンツースリーフォー!」




手拍子と足踏みが会場に響く


ルナリーの高らかな美しい声を皮切りに皆がどんどんハモって行く。


美しいけど楽しい楽しいバースデーソング。


振り付けまで。いつの間に?!




そしてもう一曲。友情を歌った曲だった。


キャサリンが主旋律を歌う。優しくて大人っぽくて。


皆のハモりが更に声を引き立たせてくれている。




うん。ずっと皆と友達で居たいよ。年を取っても友達で居て欲しい。


曲が終わって拍手も忘れて皆に駆け寄る自分が居た。


大事な友達。誕生日プレゼントをありがとう。


皆を抱き締めて回る。そしてキャサリン。


皆にしたよりもぎゅっと抱き締める。


「ありがとう。僕の為に。」


耳元で囁くと顔を赤らめていた。この反応は少し進展したのかな?と不純な事を考えながらパーティは終了した。




最高に幸せな誕生日だった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




誕生日ソングの計画を立てる。ワクワク。ジェファーソン様、喜んでくれるかしら?


ルナリーの言う通り、誕生日ソングってクラシックで?沢山、曲を知らないからだけかも知れないけれどこれと言うのが思いつかない。そして思い切って前世の曲を翻訳して見た。


メロディーに会うように少し歌詞を変えてっと。


私が歌って聞かせると皆、凄く良い!!と賛成してくれて本当に嬉しい。編曲、ハモり直ぐ行動に移せるハイスペックな友達達。凄い。もう出来てしまった。


改めてプロだと思う。




本番は会場で披露する事になってしまったけれど上手く歌えた!


王子が泣いて喜んでくれて本当に心から嬉しい。


皆が助けてくれたからだ。


王子にぎゅっと抱き締められて耳元で囁かれてもうもうもう!顔から火が出そうだ。


幸せ過ぎる。


ジェファーソン様、お誕生日おめでとう。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「ルイス!約束だろ!?」


私はパーティが終わって車で家まで送って貰った時に言った。




「あ!そうだった!」


「1発殴らせてくれるんだよな?!」




ルイスは今日は色々有りすぎて忘れているようだった。




正直、言いたい事がいっぱいある。挨拶三昧も疲れたし何よりも腐れ社長令嬢にムカついたし。そいつのお陰で歌の披露も会場で行う事になったし。ムカつく事がいっぱいあったのだが王子とキャサリンの笑顔で多少チャラにはなった。




否、何かそんなんじゃねー。少しずつ何か思い出せそうで思い出せなくて。イライラを我慢する度に少しずつモヤモヤが。。




ルイスをまじまじと見る。


この顔見ても思い出せる訳ではないんだが。




「どうした?殴らないのか?」


ルイスがそう言った。


「何か思い出せそうなんだよ!ちょっと黙ってろ!」


モヤモヤする。イライラする。






脳裏に私を護る様に立ちはだかる男




「狂犬ちゃん。。。」


カーキ色の親衛隊の特攻服の男が脳裏をよぎる


名前が出てこないけど呼んでたアダ名だ。




ルイスは目を大きく見開いた。


「やっぱそうだ狂犬ちゃん!」


私を抗争中にずっと護ってくれた夜叉親衛隊の狂犬ってアダ名の喧嘩の強い男だ。




私はルイスに抱き着く。まだ思い出したのはアダ名くらいだけど。


今日のイライラと触れ合ったドキドキが抗争中の気持ちと似ていたんだろうか。


本当に狂犬ちゃんには世話になりっぱなしだった記憶がある。




「狂犬。。そうだ夜叉親衛隊狂犬の、、、」


ルイスは言葉に詰まる。


「ごめん。私もまだアダ名しか思い出せない」


「俺も自分のアダ名ってのは解った。でも嬉しいぜ」




うん。きっと前世では護ってもらったり援護したりと良い相棒関係だったんだろう!!




スッキリしたあー!




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




ルナリーを送った帰り道の車の中で思い出す。


「狂犬ちゃん」


そう呼ばれてドキリとした。


鼓動が速くなった。




「やっぱり狂犬ちゃんだ」


抱きつかれて更にドキドキが止まらねえ。




アダ名だってのは解る。夜叉親衛隊狂犬の、、、。そこからまだ解らない。


喧嘩が強くて他の暴走族との抗争が激化した時に紅夜叉の特攻隊長が闇討ちされまくっていたので護衛に付けと言われた。




アダ名の通り仲間内からも1目置かれてたし紅夜叉の奴らも俺の事は怖がっていた。


でも、コイツだけは俺を「狂犬ちゃん」と呼んで懐いた。




そうだー。そこからずっとコイツに惚れ込んで惚れ込んで。


そしてもう一つ大事な事を思い出した。


そのまま告白もしてねえ。付き合っても居なかった。




ショック。。。


俺、今世は本当、頑張ろ。。

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