第3話 救助成功?

 カロン観測所の中ではナイフを持った春彦と明継が対峙している。

 春彦は明継にナイフを向け、明継は後退りしながらかぶりを振っていた。


「おい、春彦止めろ」

「助かる為にはこの方法しかない」

「馬鹿な事を言うな。そのナイフを寄こせ」


 必死に説得している明継だが、春彦は応じる気配がない。


「俺はな。美沙希さんに憧れていたんだよ。今でもそうだ。お前から奪い取りたい」

「春彦……」

「俺は彼女に憧れていた。しかし、手の届かない高嶺の花だったんだ。いろんな女と付き合ったさ。だけどな、俺の心は満たされなかった。美沙希さんに憧れる気持ちを打ち消すことはできなかったんだ」


 春彦は明継に向けたナイフを自分の首に当てた。


「止めろ春彦。お前死ぬ気なのか」

「ああそうだ。お前の為じゃない。美沙希さんの為なんだ。お前が死ぬと美沙希さんが悲しむだろ。それに、彼女の子供もな。生まれたときに父親がいないなんて、そんな不幸な目には合わせたくない」

「春彦」

「明継」

「お前って奴は……」


 その時オープンにしてあった無線機が反応した。


『聞こえるか。カロン観測所聞こえるか。応答しろ。こちらレスキューチーム、ビューティーファイブだ。繰り返す。カロン観測所、応答しろ。こちらビューティーファイブだ』


 春彦と明継は顔を見合わせる。活動を休止しているはずのビューティーファイブが活動再開しているじゃないか。そして自分たちの為に此処まで来てくれたのだ。


 春彦はナイフを床に捨てた。そして明継と強く抱き合い、喜びをかみしめていた。


『こちらカロン観測所。観測員の夕凪です。ビューティーファイブの救助に感謝します』

『こちらビューティーファイブ副長の相生だ。無事なんだな』

『はい。無事です。私、夕凪と正宗の二名は健在です」

『良かった。直ぐに着陸する。宇宙服の用意はあるか? 自力で外へ出られるか?』

『宇宙服はありますが動力が停止しています。その際ロックパスワードを紛失しました。現状、エアロックの解放は困難です』

『破壊するが構わないか』

『構いません。お願いします』

『了解した。それではエアロックを破壊して中へ入る。10分待て。その間に宇宙服を着用しろ』

『わかりました。ありがとうございます』


 笑顔で手を取り合う春彦と明継だった。彼らは急いで宇宙服を着用し待機した。

 観測所の外側にある着陸スペースに小型の宇宙艇が着陸する。スーパーコメットに合体している救助艇アースドラゴンである。

 アースドラゴンのハッチが開き、三名の隊員が飛び降りた。ブルーの宇宙服を着た香織とライムグリーンの宇宙服を着た知子、そしてオレンジ色の宇宙服を着たアンドロイドのララだった。ララは真空状態でも活動できるが、救助活動の際には専用の宇宙服を着用している。それは、温度や気圧の変化により筐体きょうたいや電子頭脳が破損しないためである。


 ララがレーザー剣を使用して観測所の扉を切断する。エアロック構造になっている為、内側の扉も切断した。その瞬間、観測所内の空気が一気に外部へと流出する。


 空気は瞬間的に固体へと変化しキラキラと輝く結晶となって付近を漂う。


 香織と知子が内部に入り、春彦と明継の安全を確認する。


「有難うございます。相生副隊長」

「間に合ってよかったな。さあ帰ろう」

「はい」


 夕凪と正宗は涙を流しているようだ。宇宙服なのでその涙を拭うことができないでいる。


 香織と知子と共に観測所の外へ出ようとする春彦と明継だが、エアロックではララがレーザ剣を抜いたまま立ち尽くしている。


「ララ。どうしたの? 剣を収めて」

殲滅せんめつダ。皆殺シニシテヤル」


 静止しようとした知子に斬りかかるララ。知子は間一髪それをかわした。


「まさか、ウィルスに汚染されたのか?」

「この観測所も?」

 

 予測もしなかったアンドロイドの電脳汚染。

 ララが扉の前で立ち尽くしている為、救助艇のアースドラゴンへは戻れなくなった。


 宇宙服の活動限界は30分ほどである。

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