第3話 ビューティーファイブ出動

 ここは宇宙ステーション大鳳。

 位置は月の外側、ラグランジュポイントにある。月と一緒に地球を公転している関係上、ここから地球を望むことはできない。


 その大鳳にあるカフェで二人の少女がくつろいでいた。

 テーブルの上には空になったグラスが2つ。その中にはストローと細長いスプーンが寂しげに並んでいた。


 窓から見える月を眺めながら、一人の少女が呟く。


「リーダー早く復帰してくれないかなー」

「無理だろ。今は産休取ってるけど育休も取るって話だ」

「寂しいよね」

「寂しいっていうよりは暇だろ。何で四人じゃ出動させてくれないんだ?」

「そうだよね。四人でも問題なく任務こなせると思うんだけどな」

 

 そこへ颯爽と登場したのはビューティーファイブ副隊長の相生あいおい香織かおりだった。


 中肉中背の見事なプロポーション。

 青いミニスカートから覗くスラリとした長い脚は、女性からも羨望の的であろう。


黒田くろだ星子せいこ綾川あやかわ知子ともこ。緊急事態発生だ。招集がかかっている。ブリーフィングルームへ集合しろ」

「了解」

「やったー。出動だぁー」


 落ち着いて返事をする知子だが、星子の方は両手を上げてはしゃいでいた。飛び跳ねるたびにその豊かな胸が揺れる。


「浮かれるな黒子くろこ。今度の行先は遠いぞ」

「何処なの」

「カロンだ」

「カロンって何? マカロンの仲間かな。美味しい?」

「はあ」


 とぼけている黒子に香織はため息をつく。

 黒子は常にこの調子なのだ。いわゆる天然であり、故意にふざけているわけではない事は香織も承知している。


「馬鹿だな黒子。冥王星の衛星じゃないか」


 突っ込みを入れたのは知子だった。

 天然の黒子に突っ込むのが彼女の大事な役目になっている。長身でやや筋肉質だが胸元は寂しい。黒子とは対照的な体形をしている。


「そうだっけ。じゃあ遠いんだね」

「平均約40au(天文単位)だ。馬鹿みたいに遠い」

「うひゃあ~。凄いんだね。docomoならいくつになるのかな?」

「無駄口を叩くな。急げ」

「はーい!」


 3人は速足で通路を移動していく。


 ブリーフィングルームにはレスキュー部隊総司の三谷朱人みたにあけひとが腕を組みしかめっ面をして立ちすくんでいた。もう一人のメンバー有原ありはら羽里はりは既に席についていた。そして、メンバーではない男性が一人席についていた。


「揃ったな。さっそく出動してもらう。行先は冥王星の衛星カロンだ。そこに設置されている有人観測所で事故が発生した。要救助者は二名。冥王星基地から救助船は出発しているが、到着までは約8時間かかる見込みだ。観測所に残された酸素は4時間分しかない。ビューティーファイブ出動。光速を越え彼らを救うのだ!」

 

 虚空を指さしそちらを見つめる三谷司令だったが、香織は額に手を当てて俯いた。冥王星はそっちじゃないと言いたげな表情だった。


「指令、私たちは四人ですが出動させてもらえるのでしょうか?」


 メガネをかけている羽里が挙手をして質問する。

 三谷は腰に腕を当てにやりと笑った。


「そこにいる田中たなか義一郎ぎいちろう飛行士が新しい隊長だ。彼に従え」


 4人の少女が一斉に義一郎を見つめる。


「田中義一郎です。保安課で艇長をしておりました。これからよろしくお願いします」


 恥ずかしそうに頬を赤らめた義一郎が一礼した。


「この方は私とリーダーの先輩だ。見た目はともかく中身は優秀だから安心しろ」


 香織が捕捉する。


「見た目はそんなに悪くないというか、結構イケメンさんだと思います」

「どうして男性なんですか?」


 黒子と知子が相次いで発言した。

 香織がそれに答える。


「この度の人事は能力主義で決定した。見た目と性別は考慮していない」

「なるほど。機構の宣伝よりも実務を優先するという話なのですね」


 右手でメガネをつまみながら羽里が発言する。


「そういう事だ。君たちの活躍に期待する。スーパーコメットの発進準備は終了しているぞ」


「了解!」


 三谷総司令の言葉にその場にいた全員が敬礼した。そして、壁に仕込まれた筒型のカプセルへと入る。5つのカプセルは特殊な力場で高速移動し、スーパーコメットのブリッジへと乗員を運ぶのだ。


 地球で唯一光速を超える能力があるスーパーコメット号。五人の勇者は今、困難な救助作戦へと向かうのであった。

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