第2話 ソフトクリーム

「お客さんたち、美味しいソフトクリームを作らんかな」


 牧場の片隅にある工場脇の売店で、店番をしていたかわいらしいおばあさんが太一たち御一行に話しかけた。搾りたての牛乳で作るできたての美味しいソフトクリーム。甘い誘惑にあおいやアイリスの触手が動かないはずはない。


「うん。楽しそうね!」

「アイリスタンのお乳。他人のものとは思えないもの!」


 イケイケアゲアゲの太一たち御一行におばあさんが差し出したのは、ボールみたいな不思議な器具だった。


「1・材料をここに入れて蓋をする」

「うんうん!」

「2・氷と塩をここに入れて蓋をする」

「わくわく!」

「3・約20分間キャッチボールをする」

「え⁉︎ キャッチボール……。」


 そのとき、2組目と3組目のお客さんが牧場にやってきた。


「あれ? 光龍大社のみんなじゃないか」

「げげーっ! たかたんだぁー!」

「なんだなんだ。みんな揃って!」

「ひぃ、卑裏悪の一般人もいる!」

「おやおや、みんな知り合いなのかい?」


 笑顔を見せるおばあさんに全力で首を横に降るあおいたち。だが、聞く耳を持たないというか、老眼で視力の衰えたおばさんには全く通じていない。


「じゃあ、景気良くドッジボール大会といこうじゃないか!」


 ソフトクリーム作りは、おばあさんの機転で、いつの間にかドッジボール大会になろうとしていた。


「ちょっと待ってください。闘う理由なんてないんですから」

「そうですよ。俺たちは乗馬を楽しみに来ただけなんだから!」


 闘いを好まない太一がすかさず反論。たかたんたちも目的外のため、乗り気でなかった。馬には乗る気ではあったが。


「俺たちだって、スッポン釣りを楽しんだ帰りに過ぎな……。」


 スッポン釣り。天然のスッポンが生息するこの地域で夏に楽しむことができるレアなレジャーの1つだ。卑裏悪の一般人はさり気なく興味を引こうと発言したのだが、おばあさんはもちろん、太一やたかたんたちの耳にも届いていなかった。それでもおばあさんは、たかたんたちを煽った。


「アイリスタンの搾りたて生乳製ソフトクリームは、そこの男が独占ってことじゃな」

「アイリスタンって……。」

「生乳って……。」


 たかたんも卑裏悪の一般人も誤解していた。アイリスタンのことを、アイリスだと思っているのだ。金髪ロングストレート爆乳娘のアイリス。その生乳と聞いては、黙っていられなかった。


「太一くん、全く隅に置けないね!」

「こうなったら、ドッジボールで勝負だ!」

「の、望むところだ!」


 太一は、みんなが誤解しているのが分かっていたが、面白がって勝負を受けることにした。こうして、正式にドッジボール大会が幕を開けた。

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