ケース2

「お願いします…。捨てないでください…。」

 首輪をつけて、土下座するペット。名前は…なんでしたっけ。いつもラッキーって呼んでるから忘れちゃいましたね。

 もちろん、コレがヒトだって言うのは分かってますよ?さすがにそこまで常識が無いわけじゃないですもの。

 これは、一種の愛のカタチ…のはずです。ラッキーが望んだからこうしてあげてるだけでしたが、いつの間にか壊れちゃいましたね。

 でも、それでもいいと思うのです。ラッキーがこの状態でいることが幸せだと思うなら、それがきっと正しいですから。

「捨てるなんてしませんよ。第一、あなたを棄てたところで誰かが拾ってくれますか?もう少し、その無い頭で考えたらどうでしょう。」

 ラッキーの目が、私を睨んでいます。でも、反抗心も、屈辱も感じない、ただの純粋な怒りのみです。なにが気に食わなかったのかは分かりませんが、とりあえず足で頭でも撫でておけばいいでしょう。



「ねえ、違うんだけど。」

 ごしゅじんが怯えているのがわかる。

 それでも、私は、ごしゅじんを責め続ける。

「私は、ラッキー。人じゃなくて、ペットなの。なんで考えるっていうヒトの行為を強要されるの?訳わかんないんだけど。ねえ、どんな考え方してるの?まだまだ調教がたりない?ヒト扱い以外ならどんな事でもしていいって言ったよね。奴隷のように扱っても、愛玩動物として扱っても、性欲処理のための道具として扱ってもいい。なんで出来ないの?あ、でも足で頭撫でるのはいい。これからもやって。わかった?」

「わかりました、わかりましたから…許してくださいませ…。あなたの言う通りに致しますわ…。」

 分かればいいのだ。こうして、私は不快だったヒトから、ラッキーに戻ってくる。

 ご主人に可愛がられ、虐げられる、ペットに戻ることが出来る…。



 この形が間違っているなんて、誰が決められるでしょうか。

 これは、私たちが見つけた愛。幸せの証明。互いに支配しあい、互いに依存し合う関係。

 だって、こんなにもゾクゾクして、幸福感に全身が溺れていく感覚、味わったことがありませんから。

 これを、おかしいなんて言わせない。

 ああ…わたしは、

 ラッキーは、

「「幸せです、ご主人様。」」

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