一日目 その3 出航準備

 -そういえば、腕時計がない。今の時刻は?


 と、愛用のスマートフォンdomocoのAQUASを取り出して画面を開くと、7時50分と表示していた。まだ時間があるので、腕時計を探しに新千歳空港をさまようことにした。


 -あれ?店が開いてない。4階から探してみよう

 

 -映画館もう開いてる。あれ、ここのアニメンバー閉店したの?残念。


 -3階は飲食店街みたい。ここにはなさそう。


 -しろくまがコラコーラを持ってる。かわいい!!


 ビルをさまよい歩き、2階に戻ると、8時に開いたと思しき雑貨屋に腕時計が売っていた。値札を見ると、高くもなく、そこそこいい感じのデザインの時計が並んでいる。

 

 -旅だから薄くて軽い時計がいいな。でもどれも同じだね。まぁいいか。


 「三千円になります。」


 「はい、腕時計を忘れてきちゃって、探しましたよ。あって本当によかった。」


 「結構いらっしゃるんですよそういうお客さん。こちら1年間の保証書となります。」


 やっとお手頃価格で、長針が緑、短針が赤色で、茶色の皮という、そこそこお気に入りのデザインの腕時計を手に入れた私は、出発口に向かうのであった。


 出発口の短い列に並び、そこで背負っていたリュックサックを下ろし、腕につけたばかりの腕時計を外し、ポシェットなどの見回り品をトレイにのせ、ゲートを通る。


 -ここで「ビー」ってなったら面白いのになぁ。ドキドキ。


 特に問題なく通過した。

 携帯電話や充電器は機内持ち込み、ハサミや自撮り棒などはスーツケースにと細かく決まっているのだが、事前にチェックしていたのだった。


 時計を腕につけ見たところ、時刻は8時20分だった。リュックサックを背負い、ポシェットをかけ、さて待合室へ。


 -あ、雷印パーラーがある。


 「牛乳アイス(三百円)1つください!!」

 

 -やはり新千歳空港では雷印の牛乳アイスを食べなければね。旅の楽しみは食べ歩きなのです。

 

 夏の甲子園が放送されているモニターの下の席で、牛乳アイスを食べ終わると。


 「本日は、北海道の翼、AIR道をご利用いただきましてありがとうございます。ただいまより、機内への搭乗のご案内を開始いたします。」


 と、スピーカーからアナウンスが流れてきた。


 -よし!とうとう私の旅は始まる。今年はどういう旅になるのかな。


 台風10号から変わった温帯低気圧はすぐそばにあるはずだが、天気は曇り、晴れ間も見える。飛行機は無事飛ぶらしい。

 そして、アイスの紙を捨てつつ、搭乗口へと軽い足取りで向かったのだった。

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