一日目 その2 チェックイン

 車からスーツケースを取り出した私は、近くに止まっていた送迎バスに乗り込んだ。

 バスの前にあやしいげなおじさんが、ふらふらとしていたが気にせず椅子に着席し、出発を待った。

 私のほか、乗客は2人くらいだったが、そのあとも、ぽつぽつと客は増える。

 

 -まだ7時過ぎだというのに結構乗り込みますね。


 客が15人くらいになったところで、あやしげなおじさんがバスに乗り込んできた。客席をしばらく見つめた後、運転席に座り、バスの扉が閉まる。

 バスは駐車場内を進み、入り口付近で大きなサーフボードを持ったレンタカーを利用していたとみられるおじさんを乗せ、駐車場を出た。


 「国際線をご利用の方はお知らせください。」


 と、アナウンスが流れ、道を曲がり、国際線ターミナルと思しき場所に立ち寄るが、乗降者なしで、再出発し、道をくねくね、国内線ターミナルへ向かう。


 -それにしても新千歳空港って来るたびに道が複雑になってる気がします。

  このままではいずれ運転手さんも近寄れない迷宮になるかもしれません。

 

 「国内線、金日空、AIR道、桃アビエーション、アイスエア、ご利用の方は、お知らせください。」


 と、アナウンスが流れたので『とまります』のボタンを押した。

 

 バスから降り、スーツケースを引きずりながらそそくさと、新千歳空港ターミナルビルに入ると、2階へのエスカレータに乗った。ポシェットから搭乗案内を印刷したプリントを取り出し、さっそく搭乗手続きに向かう。

 一時期はターミナルビルに感動もしたが、毎年旅行をしているとそこらへんは慣れてくる。

 手続機の後ろに並んでいると、優し気なお姉さんが


「AIR道をご利用の方でしょうか?」


 と、声をかけてきた。


 「はい。」


 と、返事をすると、


 「ではこちらにお越しください。」


 と、客が一人もいないカウンターに案内をしてくれた。優しいお姉さんがいてひそかにうれしい。

 

 「どの便にご登場されますか。」


 と、訊ねられ、


 -あれ、どの便だっけ、あ‼プリントプリント(あたふた)


 「AIR道118便、9時ちょうど発、神戸行です。」


 と、返事をすると、


 「確認番号をお教えください。」


 と、きかれたので、プリントを見ながら


 「ええと、851-〇〇〇-〇〇〇です。」


 と、戸惑いながら返事をした。


 -あゞ、そういえばカウンターで搭乗手続きしたの初めてでした。緊張するなあ。


 「席の希望はございますか。」


 「どのような席が空いてますか。」


 「中央付近ですと、窓側1席と中側が・・・」


 -なぬ?窓側が空いているですと?いつも窓側って先に予約が入ってて座れないんだよね。しかも、窓側に座る人ってすぐに日よけを閉じて寝てる人が多いんだよね!何のために窓側に座ったのやら。これはシメシメ。


 「窓側の席開いているんですか。」


 「はい。開いております。」


 -ラッキー♥


 「では窓側でお願いします。」


 「搭乗券はこちらになります。荷物のお預けはあちらの金日空のカウンターをご利用ください。ありがとうございました。」


 「ありがとうございました。」

 

 こうして、トラブルなく華麗にチェックインが終わり、隣の金日空の手荷物預入ブースにつくと、以前に来た時よりやけに短くなった列に並ぶ。そして、列がどんどん進んでいく。


 -あれ、なんでこんなに進むのがはやいのかな?


 列に並んで3分くらいで列の先頭になり、係りのお兄さんに


 「あちらへどうぞ。」


 と勧められるままに移動した。

 するとそこには、カプセル状の近未来的なデザインをしたものが口を開けていた。


 -ここにスーツケースを乗せるのかな。


 と、スーツケースを置いてみると、右の液晶画面に


『お手持ちの2次元バーコードを機械右上部にかざします。』

 

 と、表示された。


 -ええと。バーコード?え、なに?あ!搭乗券についてるこのバーコードの事かな。


 かざしてみると、


『出力される手荷物タグを手荷物にお付けください。』


 と、表示され、手荷物タグが出てきた。

 スーツケースにタグをつけ、再びカプセルに入れると自動的に口が閉まった。


 -はて、これで本当に目的地まで持って行ってくれるのでしょうか。


 出力された手荷物引換証を受け取り、半信半疑で出口に向かうのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る