ぱかたび =2019年夏 しまなみ海道、愛媛、高知編=
あるぱか
一日目 その1 出発
2019年8月17日土曜日、朝4時30分 私は目覚まし時計と携帯ゲーム機ヴィー太のアラームの音に起こされた。
-そう、私は早起きなのです。
と言いたいところだが、日常の私は早起きではない。平日に起きるのは、決まって7時40分。それから身支度をして、8時30分前に家を出て職場に向かう。ましてや土日になると、起きる時間は9時や10時、正午近くになることもある。毎日が変わり映えのない生活。灰色がかった世界の中に私はいる。
アラームに起こされた私は、ちょっとだけ、ぼけぇっとした後、昨夜まとめたスーツケースにいそいそと携帯電話の充電器などを詰め込む。
-そう、私はこれから旅に出るのだ。
私は北海道のとある海辺の町に住んでいる。人は少なくなり、高齢者の割合が4割になるような過疎というか、へき地になりつつ町である。そんな町に住んでいる私の数少ない趣味の一つが一人旅である。
さっそく、スニーカーを履き、スーツケースを車に乗せ、そっとエンジンをかける。
「とうとう、今年もこの日がきたんだ。無事に出発できそう。よかった。」
そう心の中で思いながら、午前5時ちょっと前に、アクセルを踏んだ。
天気は晴れ、気温は22℃。普通に暖かい。
普段のこの時期の北海道の気候は、昼間は暖かいが朝晩は10℃台になり、秋の気配を感じるもので、二日前まではそうのような気象であったが、今日は少し違う。実は、台風10号が近づいているからだ。今は新千歳空港付近に停滞しているはずの台風が運んできてくれた暖気のおかげで暖かい。
当然、台風の接近は旅立つ前から気がついていた。5日前から高知沖をのろのろと北上する台風の予報円とにらめっこをしていたのだ。
その大型の台風10号は、15日愛媛県に上陸、中国地方を通過し、16日には日本海に出ると加速し北海道に接近していた。
-飛行機が欠航になったらどうしよう。前日深夜に予約し直したほうがいいのかな。
とパソコンで検索しながら悩んでるうちに、前日深夜の便の予約がどんどん埋まっていく。時はお盆の帰省客が本州への家路につく日と重なっているため、競争相手は多いのであった。
-どうしよう。北海道さえ出られれば、台風一過で晴れているはずなのに。
そんな心の悩みも。
『新千歳空港の雨のピークは16日夕方~明け方まで、風も同様。台風は17日には温帯低気圧に変わり北海道上空に停滞するが、風雨ともに弱い。』
という予報になったことにより、覚悟が決まった。
16日まで仕事の私が16日午前に出発できるわけもなく、深夜に振り替えるにして風雨がピークになってる時刻にわざわざ出発するのもあり得ないわけで、結局、あらかじめ予約していた(台風が最接近中だが風雨がやむ予報の)翌日朝の便で出発しようと決めたのだ。
そうはいっても不安がないわけではない。過去の旅行では、大雨で空港までの道が川の氾濫のため、通行止めになったりしたこともあったからだ。ただそんな年でも100キロメートルほど遠回りをするルートで、峠を2つほど超えたが、無事空港にたどり着き旅行ができたので、今年もきっと何とかなるものだと思えたのだ。私は旅によって、旅についてだけは強くなっているのかもしれない。
そう思いにふけながら空港まではあまり近くはない田舎道を進む。北海道のへき地にもコンビニは進出していて、この時刻でも開店している。
―便利になったものです。立ち寄らないのですけどね。
腕時計を忘れてきたことはさておいて、雨の状態はというと、遠くの空が晴れていて、風も弱く実に出発日和といえる天気になっていた。川の水も増水はしているものの、数年前のように氾濫はしておらず安心した。
空港近くの損が少ないコンビニに寄り、(腕時計を探したが無く、)鶏の絵が描かれてる紙の容器に入ったチキンのから揚げを買い、ぱくぱくと食べた後、いつも利用している新千歳空港長時間駐車場に入る。
「5番にお進みください。」
と、受付で駐車券を渡された私は、車を5番の位置に進めた。駐車場の中の道は少々わかりにくいが、もう慣れたもので大体の位置はわかっているのだ。ただし、駐車しようとバックしたときに、見えにくい位置に駐車していた車に初めて気がつき、慌ててブレーキを踏んだのは秘密です。
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